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第93話「陰謀衝突の始まり」

 3ヵ月後、レジスタンス新聞ではある計画が実行へと移されようとしていた。


 アジトとなっている隠れ家には赤羽をはじめとしたレジスタンス新聞のメンバーたちが集まっており、黒杉財閥への復讐の機会をうかがっていた。


 そこには野党の国会議員たちもおり、そこにいる全員が結託している。


 樹は情報伝達係であり、爆破事件などにはかかわっていないものの、黒杉内閣の治世が終わる事を願っている者たちの1人であった。


「あの爆破でしばらくは事態の収拾に追われているはずだ。いいか、奴らの支持率が下がっている今を狙って一斉に公表するぞ」

「赤羽さん、それは良いんですけど、どうして今まで奴らの弱みを俺たちにも話さずにずっと隠し続けてたんですか?」

「奴らは老人を中心に高い支持率を維持していた。その状態で情報を明かしても擁護する者が後を絶たないだろうし、国民の過半数がフェイクニュースであると信じ込めばそれで終わりだ。そこで奴らの信用が落ちたところで公表する策に打って出ると決めた。その方が奴らを失脚に追い込みやすいからな。確実な証拠も手に入れた。その時間稼ぎのため、新島たちにも協力してもらったわけだ。これで奴らを一網打尽にしてやる」

「公表はいつですか?」

「3日後、金曜日の午後8時だ。この時間帯は多くの労働者が仕事を終えてヘトヘトになっている。つまり判断力が落ちているという事だ。しかも爆破テロが起きてからはずっと厳戒態勢による過剰な監視で国民の多くがストレスに襲われている。この状況であれば、なおさら信じ込みやすくなるというわけだ」

「なるほど、さすがは赤羽さん」

「喜ぶのは黒杉財閥が崩壊してからだ。お前たちは俺が言った通りに事を進めてくれ」


 ――奴らは今頃、俺たちが送り込んだスパイに苦しめられているはずだ。他の誰もが知りもしない上に、あの黒杉政次でさえ疑う事もないスパイにな。


 慎吾はひっそりと笑みを浮かべ、計画を実行しようとするのだった。


 その頃、黒杉家では家族を交えた会議が行われていた。


 政次は黒杉内閣支持率の下降に、政悟は黒杉財閥の株価暴落に怒っており、その様子を政子と京子の2人と家政婦たちが心配していた。


「ひっ!」

「スパイはまだ捕まらないのかっ!?」


 政次がワインの入っていたグラスを投げつけ、報告係を務める家政婦を威嚇するようにしかりつけるが自体は一向に悪化するばかり。彼はそれに今までにないほどの苛立ちを覚えていた。


「親父、少しは落ち着いたらどうだ?」

「これが落ち着いていられるかっ! スパイのせいで俺たちの秘密の証拠までもがレジスタンス新聞に奪われたんだぞっ!」

「あなた、これからどうするの?」

「どうするもこうするも、下手に動けばまた支持率が下がるし、黒杉財閥の株が暴落しているせいで思うように動けない」

「もう行って良いぞ」

「は、はい」


 家政婦たちが一斉に部屋を出ると、黒杉家の4人だけが部屋に残る。


 床にはグラスの破片が散らばっており、そのそばには赤く染まったワインが床に染み込んでいる。このどうしようもない事態が4人に虚無感として表れている。


「それにしても、奴らはなかなか俺たちの弱みを公表しようとしないな」

「いつ公表されてもおかしくないこの状況を長引かせる事で、俺たちを自滅の道へと追いやろうとしている可能性はある。だがそうはいかない。こうなったら最終手段だ。今度の日曜日、レジスタンス新聞の情報は全てフェイクニュースであると国民たちに伝えろ。この報道が効いている内に、レジスタンス新聞の連中を一斉に逮捕するぞ。噂によれば、この陰謀には野党の連中もかかわっているそうだ。恐らくスパイはあの中にいる。最悪見つからなかった場合は野党の連中の1人をスパイとしてでっち上げれば良い。警察庁に警察の総動員を伝える。奴らと決着をつける時だ」

「お父様、レジスタンス新聞の連中を逮捕するには相応の証拠が必要だと思うけど、そこはどうするつもりなの?」

「証拠なんていくらでも作れる。日曜日は戦勝記念日になる」

「――そう」


 その日の夕方、樹は慎吾とカフェで飲んでいた。


 もうすぐ訪れる運命の日を前に緊張が走っている。


「立花、1つ頼みがある」

「頼み?」

「ああ、金曜日の計画の事だが、お前の知り合いの中で最も情報の拡散に長けている者を紹介してほしいんだ」

「と言うと?」

「具体的に言えば、ネット上で影響力を持っている奴だ。そいつに頼んで黒杉財閥の秘密をできるだけ多くの人に拡散させてもらいたいんだ。記事の編集が上手くてできるだけフォロワーの多い人気者が望ましい。頼めるか?」

「それは分かったけどよ。何で自分たちのホームページから公表しないんだ?」

「無論、俺たちのホームページからも公表はするが、内容が内容だ。すぐに凍結される可能性があるから、黒杉財閥の監視が及ばないところから拡散させるべきだ」

「分かったよ。それなら心当たりがある」

「期待してるぞ。失敗は許されないからな」

「心配すんな。必ず説得する」


 樹は真にアポを取って真を呼び出すと、すぐに待ち合わせ場所へと向かう。


 そこは八武崎家の近くにある公園であり、周囲には真と樹以外に誰1人いない。樹がブランコに乗って待っていると、慌てた様子で真が近づいてくる。


 彼は真に済まないと思いつつも、レジスタンス新聞の命運を託す事に決めたのだった。

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