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第7話「合流する者たち」

 奏と姫香は真凛の剣幕に押されて黙っている。


 真凛の真剣な表情にはどこか訳がありそうだと2人は予測する。


「私はイケメンで金持ちのスーパースターと結婚して勝ち組になりたいんです! そのために必死に若作りをして、花嫁修業を重ねて、バイトをしながら大学まで卒業したんです! なのにわざわざ三低の男とつき合うなんてありえないですよ! そういうのを妥協って言うんだよ!」


 真凛はいつもより冷たく低い声で奏たちに忠告する。


「「!」」

「私はもう底辺で泥をすするような生き方を強いられるのは御免なんですよ。もういいです。キープ君たちに紹介してもらうんで。それじゃ」


 高さのあるヒールを鳴らしながら闊歩するように真凛が去っていく。


 奏たちはその様子を後ろからドン引きした顔で見守るしかなかった。


「――何だ? ……あいつ」

「真凛はずっと母子家庭で貧しい生活を強いられてたみたいなんです。だから出世意欲が強いんですよ。部長とかにも媚を売ってますからね」

「仕事ができる奴よりも、ああいう奴の方が出世していくんだろうな」

「キープ君たちって言ってましたけど、相当モテるんでしょうねー。あっ!」

「どうした?」

「開発書類の提出今日までだったの忘れてました」

「ったくしょうがねえな。手伝ってやるから今日中に終わらせるぞ」

「はいっ!」


 奏は昼休み後半を返上して仕事の続きをする。


 彼女はパソコンをカチカチ鳴らしながら淡々と作業をこなし開発書類をあっという間に完成させ、自らのアイデアと経過を報告書にまとめていく――。


 午後5時、無事に仕事を終えた奏たちが退社する。


「奏さんのおかげで残業せずに済みました。ありがとうございます」

「良いんだよ。でも自分で仕事できるようにならないと駄目だぞ」

「はい、精進します」

「前にも同じ台詞を聞いた気がするんだが」

「い、以前よりはできるようになりましたので――」

「じゃあ次は自分でやってみな。じゃあな」


 奏は仕事のできない姫香を飼い犬のように手懐けている。奏は姫香にそう言い残すと一足先に部長に挨拶して会社を出る。


 そのまま電車に乗ると立ちながらスマホをいじり始める。


 その途中、動く電車内で見覚えのある顔と目が合う。


「「!」」


 目が合ったのは樹だった。


「もしかして奏か?」

「うん。もしかして樹か?」

「ああ、久しぶりだな」

「あんたも相変わらずみたいだな。恋愛下手限定編に出るって事は、どうせまだ()()()()が見つかってないって事だろ?」

「何でそれを知ってるんだよ? ――まさかっ!?」


 樹が何かを悟りながら冷や汗をかくと、奏がニヤリとしながらスマホのチャット画面を見せる。


「そのまさかだ。真と一緒にいたんだろ?」

「あぁー、あいつかー。口止めしとくべきだった」


 樹は片手で両目を隠しながら上を向いて嘆く。


「そんな事よりさ、せっかくこうして会えたんだからさ、積もる話もあるだろうから久しぶりにうちに寄って話でもするか?」

「俺たちもう良い大人だぞ。男連れ込んで大丈夫なのか?」

「真もいるから大丈夫だ。心配すんな」


 奏と樹はしばらく電車内で話す。電車が目的の駅に着くと、奏たちはそこで降りスローペースで歩き自宅を目指す。


 奏と樹は幼馴染であり、世間で言うところの友達という関係である。


 傍から見れば恋人同士にも見えるが、お互いに下の名前で呼び合うのはどちらにも同じ苗字の兄弟姉妹がいた事から。


「じゃあ今は会社員やってるんだな」

「そうだな。今はあたしが教える側だけどさ、どいつもこいつもみんな従順な人間ばっかで再教育するのが大変だよ。主体性の欠片もない連中ばっかで、あたしがいないと何にもできないんだ。社会に出たら主体性がないと生きていけないってのに」

「それは多分、学校教育で主体性を摘まれてるパターンだな」

「――せめて社会に出る事を想定した教育をしてほしかったな」

「そう言うなよ」


 真と奏の自宅に着く。夕日が2人の顔を照らし奏は鍵を使ってからドアを開ける。


「見た事がない靴があるな――先客がいるみたいだ。まことー、誰かいるのかー?」

「いるよー」


 奏と樹はかけ声で客の有無を確認するとそのまま2階まで上がり真の部屋の前に辿り着く。いつものようにノックもせず慣れた手つきでドアを開ける。


 真の部屋では真がブログを書いている最中であり、菫はオンラインゲームに夢中になっていた。どうやら夢中になって時間を忘れていたらしい。


「誰かお持ち帰りしたのか?」

「! 姉さん! 入る時はノックしてよ……立花さんっ!」

「やれやれ、俺の事を迂闊にばらさないでほしいものだな。おかげで恥をかいた」

「すみません、姉さんに聞かれたもので」

「スミちゃん、久しぶりだね~」

「奏さんも、久しぶりですね。お邪魔してます」

「そうか、ゆっくりしていけよ」


 菫が樹と目が合った。菫は画面を止めるとコントローラーをベッドの上に置く。


「さっきはどうも」

「お、おう」

「知り合い?」

「ああ、朝の婚活パーティで会ったばかりだ。あえなく撃沈したけどな」


 樹が落ち込んだ顔でそう言うと、菫は少し気まずい表情になり奏は何かを悟った顔をしながらその場を収めようと考える。


「ふーん、じゃあ自己紹介はもう済んでるんだ」

「そうですね。改めまして長月菫です。よろしくお願いします」

「立花樹だ。よろしくな」

「せっかくだから全員でメアド交換したらどうだ? 樹はちょっと変なとこあるけどめっちゃ良い奴だ。あたしが保証するよ」

「変って何だよ? 変って?」

「そのまんまの意味だ」

「そう言ってるけど、どうする?」

「私は構いませんよ。情報交換をするくらいなら大丈夫です」


 菫と樹は奏に言われるがままメアドを交換する。


 以降この4人は頻繁にメールで情報交換をするようになるのだが。

主にこの4人をメインキャラとします。

婚活イベントは度々やります。

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