表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
68/100

第68話「因縁の再会」

 奏と樹は政悟が参加者女性に囲まれながら話す光景を目撃する。


 しかも普段はしないはずの野球を丁寧に教えている。だが奏は彼の正体を知っているためにすぐ演技であると気づく。


「……ん? おやおや、誰かと思いきや奏さんじゃないですか」


 政悟が2人に気づくと彼らに近づき挨拶をしようとする。


 しかし2人とも政悟を警戒していたのか、奏は身構えており、樹は彼女の前に出て奏を守ろうとする。


「おやおや、随分と警戒されているようだ」

「当たり前だろ。悪いが奏に話しかけないでくれるか?」

「それは無理な相談だ。俺は彼女と『カップリング』をしている。分かっているとは思うが、カップリングしている者同士を邪魔した場合は『迷惑防止条例』に反する事を忘れるな」


 けっ! 何がカップリングだよ。勝手に司会を操作しやがって。


 政悟は相手を見下すような眼差しで周囲には聞こえないように話す。


「奏、最終登録するぞ――」

「あ、ああ」


 2人は間合いを保つように政悟から離れて最終登録を済ませる。この野球好き限定編が始まると、奏はすぐに飲み物を買いに行く。


 樹は奏が戻ってくるまでベンチで待つ事となる。


 バッティングセンターでは、既に何人かが金属バットでピッチングマシンから放たれたボールを打つ音が度々鳴り響く。元々野球をやっていた人々がこぞって参加したために順番待ちになっていた。


 ボールを打った先には高いネットがあり、そこにはダーツの的のようなものが設置されている。


「やけに余裕だな」

「――何の用だ?」


 政悟がベンチに座っている樹に話しかける。


 しかし彼はそれを歓迎できない状況である模様。あまり相手にしたくないのか、樹は塩対応を徹底する事を心に決めている。


「随分あの女と仲が良いようだが」

「ただの幼馴染だ。それがどうかしたか?」

「もうあの女には近づかない事だ。彼女とはまだ決着がついてないんでね」

「何でお前にそんな事を言われなきゃいけないんだ?」

「俺がその気になれば、お前の1人や2人くらい簡単にクビにできるんだぞ」

「そんなやり方でしかほしいものを手に入れられないのかよ。男ならそんな小手先の手段に頼らず正面からかかってきたらどうだ?」

「ふっ、庶民のくせに威勢だけは良いようだ。以前俺にボコボコにされたというのにまだ立ち向かってくるんだな」

「ほざきやがれ」


 樹が政悟に対して持っている憤りが段々と増してくる。


 そしてついに痺れを切らした樹は彼にある提案をしようと考えた。


「まあいい、奏さんに近づいたら、その時は君のクビが飛ぶと思え」


 政悟が捨て台詞を吐いてその場から立ち去ろうとする」


「待てよ」


 樹の言葉に反応するように政悟が足を止める。


「何だ?」

「俺と勝負しろ」

「ほう、して、勝負の内容は?」

「そんなの決まってる。ホームランコンテストだ。あの的により多く当てられた方の勝ちだ。勝者は敗者の言う事を聞く。どうだ?」

「ふっ、とんだ茶番だな。断ると言ったら?」

「黒杉清吾さんのホームランを見たい人は手を挙げてくれー」

「「「「「はーい!」」」」」

「なっ、貴様っ!」


 参加女性たちが心をワクワクさせながら一斉に手を挙げる。


「いくらお前でも世間には勝てないって事くらい知ってるんだぜ。これだけ多くの人が見たいって言ってんのに断れんのか?」

「ぐっ……くうぅ……良いだろう。言っておくが、俺は英才教育によってありとあらゆるスポーツを仕込まれている。どの科目だろうと負けた事はない」

「やっと乗ってくれたな」


 庶民がっ、この俺に無謀な勝負を挑むとは愚かなっ!


 必ず後悔させてやる。後で落ち込む姿が目に浮かぶよ。まあせいぜい今のうちにイキっておけば良いさ。勝負が終わった頃にはもう二度とイキれなくなるだろうからな。


 樹と政悟は空いているバッターボックスを確保し、お互いに素振りの練習を始めると、そこに奏が戻ってくる。


「樹、もしかしてバッティングするのか?」

「ああ、ちょっとこいつと勝負する事になったんだよ」

「えっ、まさか黒杉と勝負するのか?」

「ああ、俺が勝ったら奏とのカップリングを解除してもらう。俺が負けたら二度と奏に近づかないって約束でな」

「お前何考えてんだよ。黒杉は子供時代から成績優秀、スポーツ万能、球技の大会で何度も入賞している男なんだぞ」

「えっ?」


 樹が予想外のプロフィールにアホ面になり絶句する。


「まあそういう事だ。そこまで知ってくれていて光栄だよ」


 奏は強制的なカップリングが成立した日に政悟の事を調べていた。彼女は政悟が英才教育によって多才である事を知っていたのだ。


 しかし、もう時すでに遅し。樹はそんな彼に勝負を挑んでしまった。


「そ、そうか。お、おもしれえじゃねえか。やってやるよ」


 緊張がもろに表れてるぞ。ホントに大丈夫かよ。


 ここで両者は奏を交えてルール確認をする。


 ボールの時速は120キロ、投げられた10球のボール打ち、的に当たれば1点、それ以外は0点となるが、見逃しの場合はノーカウントとし、同点になった場合はもう一度やり直しとなる。


 樹が球技から離れてかなりの時間が経つ。しかし政悟の方は実力未知数である。


 お互いにルール確認をするとくじ引きとなり政悟が先攻となる。まずは政悟がバッターボックスの右打席に入ってバットを構える。


 奏を賭けた戦いが、今ここに始まるのであった。

気に入っていただければ、

ブクマや評価をお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ