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第6話「商品開発部の女たち」

 真が仕事や遊びに興じている間、奏は午前の仕事を終え昼休みに入る。


 彼女は真が心配になったのか彼にメールを送る。


『まことー、婚活イベントどうだったー?』


 奏からのメールが届く――。


「あっ、姉さんからだ。婚活が無事に終わったか心配みたい」

「――奏さんって普段何してるの?」

「普段は会社員。確か中小企業で働いてるって言ってたよ」

「ふーん、マコ君にはまずできそうにない仕事だね」

「会社って何したら良いか分からないからねー。とりあえずメール返しとこう」


 午後12時頃、奏の会社の商品開発部には温かい日光が入ってきており、多くの開発用の書類がまとめられている。


 奏は他の同僚たちと集まって弁当を食べていた。


『散々だったよ。何人か知り合いもいたからびっくりしたよ』


 真からのメールが届く――。


「あっ、真からだ」

「真さんって確か奏さんの弟でしたっけ?」

「うん、普段は家でアフィリエイトしてるの」

「アフィリエイト?」

「記事とか動画とかの広告収入で稼いでるんだって」

「へー、家で仕事ですかー。結構楽そうですねー」

「いや、あれはあれで大変みたいだぞ」


 奏がまた真とメールをし始める。


 奏は東京都内にいくつかある和食料理店を運営する会社である『和食処フードサービス株式会社』の部署の1つ『商品開発部』に所属する係長である。


 商品開発の腕は確かであり、上司からも信頼を得ている。しかし仕事ができる女の典型であるためか男が寄ってこないのが悩みである。


『どんな知り合い?』

『幼馴染のスミちゃんに姉さんの同級生の立花さん』

『スミちゃんかー。懐かしいなーって樹も来てたのっ!?』

『うん、よろしく伝えといてくれって言われたよ』

『分かった。6時には帰ると思う』

『うん、待ってるね』


 奏はスマホをポケットに戻すと食事を再開し家から持ってきた弁当を食べる。


「真さんってどんな人ですか?」

「一言で言えば無気力かな。魂だけ抜けてったような感じ」

「――そんなんで婚活大丈夫なんですか?」

「散々だったって言ってるし、あたしが予想してた通りだよ」


 黒のボブヘアーの厚化粧に奏とお揃いのグレーを基調とした制服、大きくも小さくもない胸に中肉中背のこの女、大島姫香(おおしまひめか)は奏の後輩の29歳である。


 身長159センチ、社内の情報屋で婚活事情には詳しい方である。


「私も昨日婚活イベントだったんですけど、他の女性参加者が20代前半の人ばかりでイケメンがみんな彼女たちに持っていかれて収穫なしだったんです。もう来年には30歳になるのにぃ~」


 姫香は落ち込み気味の顔で机に顎をつきながらテンションの低い声で嘆く。


「マジか――姫香でそれならあたしはもっと厳しいだろうな」

「奏さんは自立してますもんねー」

「自立してたらまずいのか?」

「一般的にはまずいですね。と言うのも婚活市場において女性は弱い人ほどモテるそうなんです。自立してる女性や年収の高い女性は婚姻率が下がるらしいです」

「嘘だろ?」

「男性たちが言うには、弱い女性だと守ってあげたいってなってアプローチがしやすいみたいなんですけど、強い女性が相手だとこの人は別に守ってあげなくても良いなってなって対象から外れるそうです」

「つまり男は自立して稼いでいる人ほどモテて、女は自立せずに稼いでない方がモテるって事か?」

「そうですね。ただ、男性の給料が下がってきていますから、女性にも働いてほしいと思っている人も増えているそうです」

「じゃあそいつらを狙えば良いって事か」

「奏さんはもう少し女性らしくされた方が良いと思いますよ」


 姫香は奏を遠回しに忠告する。


 奏は男勝りなところがあり言動も男寄りである。しかし当の本人にはその自覚がない。


 奏は両腕を高く伸ばして体をほぐす。


「――その女性らしくってのがよく分からねえんだよ」

「もっとこうおしとやかにと言いますか――あっ、でも奏さんは料理得意ですから、そこで攻めていけば良いんですよ。未だに専業主婦になってほしい人もいますし」

「あたしは今の仕事に誇りを持ってるからさ、どうしても辞められねえんだわ。それに真が生活できなくなるだろうし」

「完全に弟ブロックじゃないですかー」

「えー、なになにー、何の話してるんですかぁー?」


 突然奏たちの後ろからハイテンションな声が響く。


「婚活」

「あぁー、婚活かー」


 黒髪で長めのサイドアップヘアー、巨乳にくびれた腰と張りのある尻、同じくグレーの制服がよく似合うこの女、多摩真凛(たままりん)は新入社員の23歳である。


 身長148センチ、ぶりっ子で砕けた敬語が特徴であり時々タメ口のような口調になる。


「真凛、また口調がため口になってるぞー。あたしらに対しては良いけど、部長や取引先の前では気をつけろよ」

「はーい」


 軽率な言動が目立つ真凛を奏は心配しながら指摘する。


 真凛はそんな奏を煙たく思いつつも、その度にしぶしぶ言動には気をつけている。


「私は婚活パーティまだなんですけどー、どこかお勧めとかないんですかー?」

「じゃあ明日あたしと一緒に同じ婚活パーティへ行くか? あたしが選んだところは人気ないから今も空いてるはずだぞ」

「あっ、じゃあそこにしまーす。一体どんな――」

「三低男性限定編だ」

「――何ですかそれ?」


 真凛が若干引いた表情で疑問を呈する。


「文字通り三低の男が集まるんだよ。女は条件なしだ」

「その三低って何ですか?」

「低身長低学歴低収入って意味だよ。あたしは相手の身長とか学歴とか収入とか気にしないからさ、内面で勝負ができるってわけ。他の人気ある女はまず寄ってこない婚活イベントだから選び放題だぞ」

「馬鹿にしてるんですか!?」

「「!」」


 突然真凛の声が冷たくなる――まるで人が変わったように。


 奏も姫香もこれには驚きを隠せなかった。

奏の職場に触れています。

真の出番は少しの間なしです。

大島姫香(CV:上田麗奈)

多摩真凛(CV:伊瀬茉莉也)

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