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第5話「引きこもりの過去」

 朝の婚活イベントが終了すると昼を迎える。


 真は菫と共に真の自宅へ行こうとする。


「あのさ、奏によろしく伝えておいてくれないか?」


 樹が真を呼び止め2人共後ろを向く。


「はい――分かりました。じゃあ僕らはこれで」

「おう、じゃあな」


 真たちは樹と別れ東京都内にある真の自宅を目指す。


 東京駅から電車に乗りしばらくすると人が減っていく。


 都心から少し離れた所まで辿り着くと一軒家ばかりが立ち並ぶ住宅街になる。車やバイクなどが度々通り過ぎる中、コンクリートや電柱に囲まれながらトボトボ歩く――。


「奏さんはどうしてるの?」

「姉さんは会社員やってるよ」

「今も家族で住んでるの?」

「うん、姉さんと2人暮らしだよ。姉さんが独立して今の家に引っ越す時に僕も姉さんと一緒に実家を出たからね。お父さんもお母さんも今は実家暮らしだけど、そんなに仲は良くないみたい」

「今のご時世だと、独身への風当たりが強いから別れられないもんねー。あっ、ごめん」

「良いんだよ、そんなに気を遣わなくても。実際、婚活法のおかげでずっと夫婦を継続してるようなもんだし」

「マコ君が奏さんと一緒に家を出たのは何でなの?」

「一言で言えば、実家が嫌だったからかな。うちの親は僕に就職しろしろうるさいからね」


 真は菫の質問を受けながら当時の事を思い出す。


 7年前――。


 まだ真が奏と両親と実家で4人暮らしをしている時だった。


「真、あんたもう『高校卒業』なんだよ! 大学へ行かないなら就職しなさいっ!」

「そうだぞ。お前この先どうするつもりなんだ?」

「もう何社も受けたけど、全然内定貰えないんだよね。えへへ」

「えへへじゃないでしょ!」

「まあまあ、抑えて。お父さんもお母さんも、真の事はあたしに任せて」

「……分かった。全く、こんな風に育てた覚えはないぞ」


 ――真の両親が彼を奏に任せて去って行く。両親共どこか真や奏に似ているところがあり、真の将来を心配している様子。


 真は高校卒業間近だったが『就職先』が決まらず両親は焦りを隠せなかった。


「真、良かったら一緒に引っ越す?」

「えっ? 姉さんと一緒に?」

「うん。ここにいたらずっと就職しろって言われるよ」

「……良いけど、僕家事できないし、居候になっちゃうよ」

「何年真の面倒見てきたと思ってんの? 4人分の食事と洗濯が2人分に減るんだから、むしろ楽になると思ってるよ。あたしやっと申請が下りて『引っ越し』できるようになったからさ、ようやく親から独立できると思うと嬉しくってさ。真もここから離れたいでしょ?」

「――分かった。じゃあ僕も稼ぐよ」

「就職もできないのにどうやって稼ぐの?」

「なっ、何とかするよ」


 真はずっと姉である奏の世話になりっぱなしである事にどこか後ろめたい気持ちを持ち続けているが、その一方でこんな平和な日常が続く事も願っている。


 真と奏が住む家に着く。


 真が玄関の鍵を開けて扉を開けて入る。それに続いて菫も家に入る。


 菫は初めて訪れるこの家を見渡しながら驚く。リビングはフローリングであり、所々に生活感が漂っている。


「どうしたの?」

「――ふーん、マコ君の家に遊びに行った事は何度かあるけど、ここは初めてだから」

「そういえばそうだね」

「マコ君の部屋はどこなの?」

「2階だけど、散らかってるよ」

「見たい!」

「しょうがないなー」


 真はしぶしぶ菫を自分の部屋へと案内する。階段を上がり扉の前へ辿り着く。


 彼は見られて困るようなものは一切置いていない事を確信していた。


 真の部屋は見事に清掃が行き届いており、本棚にあるマンガはきっちりと収納されている。机に置いてあるのはパソコンとゲーム機のみである。


 そのそばにあるベッドにはスマホの充電器が置かれている。


「なーんだ。散らかってないじゃん」

「多分姉さんが掃除してくれたんだよ」

「全部姉任せなところも相変わらずだね。あっ、そうだ。せっかくだからメアド教えてよ」

「ええっ!? ……良いの?」

「うん、真と一緒にいると落ち着くし、情報交換もできるでしょ?」

「分かった。そういう事なら」


 真は菫と『メアド交換』をする。


 真にとって家族以外では初めての異性のメアドだった。


「言っとくけど、あくまで幼馴染としてのよしみだから。勘違いしないでよ」


 菫はジト目で忠告するように告げる。


「分かってるよ。何かに期待した事なんてないからさ」

「何でこうも無気力なんだか」

「えへへ。あっ、そうだ。婚活パーティの内容をブログに書かないと」

「マコ君は確か『アフィリエイト』をやってるんだよね?」

「うん、僕の場合は『記事』と『動画』の『広告収入』で稼いでるんだけど、ネットなら人と顔を合わせなくても良いからずっと続けてこれたんだ。けどまさか婚活を強いられるとは思ってなかったなー」

「でも婚活を始めた事で、良いネタになってるんでしょ?」

「そうなんだよね。結果は散々だったけど、それでもネタにできてしまうのがブログの良いところなんだよね」


 真はブログを始めるとすぐに没頭する。


 菫は真が持っているオンラインゲームをプレイし、コントローラーのボタンをポチポチ押しながら夢中になって遊んでいる。


 それぞれが独立して遊ぶ中、真は奏の事が気にかかっていた。


 姉さんは大丈夫だろうか。


 そんな事を考えながら、真はブログの記事を更新するのだった。

真たちの過去に少し触れています。

仕事の詳細はのちのちという事で。

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