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第4話「婚活イベントの洗礼」

 真が会場へ戻ると全ての椅子が端っこに移動されている。


 フリータイムは立食パーティというテンプレ形式だからだ。


「――それでは今からフリータイムとします。皆さん、話したい方と自由に会話をしてください。今から30分間です。フリータイムスタートです」

「マコ君、ちょっと良いかな?」


 声をかけてきたのは菫だった。


 しかし――。


「あのっ、長月さん僕と話してもらって良いですか?」

「長月さん俺ともお願いします」

「俺ともお願いします」

「えっ、ちょっ、ちょっと待ってください」

「……」


 フリータイムが始まった瞬間、参加者の男たちが一斉に菫に声をかける。


 真はその場に立ち尽くすしかなかった。


 しかも大して稼いでいるわけでもない自営業である真が誰かに声をかけられるはずもなく――。


「俺と一緒だな」

「そうですね」


 真は樹と共に会場の端っこにある椅子に取り残されたかのように座っている。


「こういうの――自然淘汰って言うんですよね」

「ああ、認めたくねーけどな」

「でも立花さんが恋愛下手なんて意外ですね」

「俺は最初の勢いだけだからな。それに俺、ずっと男子校にいたから女子の扱い方とか全然知らねーんだよな」

「僕はずっと家に引きこもってたので、人の扱い方自体分かりません」

「お前全てにおいて俺を下をいってるよな?」

「社会経験ないんですからそんなもんですよ。でも実際誰も来ないと寂しいものですね。あの、結婚願望とかあるんですか?」

「あるにはある。けどみんなスペックばかり見てくるからな。じゃあ俺、女に声かけてくるわ」

「お気をつけて」


 真はそう言いながら頭を下げる。樹はお前も来ねえのかよと思い呆れながらその場を去る。


 フリータイムの終盤が近づいてくる――。


「マコ君、お待たせ」


 菫が他の参加男性と話を済ませてから真がいる場所まで駆け寄ってくる。さっきまでずっと他の参加者男性に囲まれながら話をしていたのかぐったりしている様子だった。


「スミちゃんずっと囲まれてたね」

「死ぬかと思った……ふぅ」


 菫は一息つきながら真の隣の席に座る。


「マコ君はずっとここに座ってたね」

「だって自分から声をかけて無視されたら落ち込むでしょ?」

「マコ君って本当に昔っから陰キャだね」

「だってしょうがないじゃん。僕も女たちに囲まれたら疲れちゃうかも」

「本当にやる気あるの?」

「……僕は結婚願望ないんだけど」

「多分そう言うところだと思うよ。マコ君はいつもネガティブな事ばっかり言ってるし、それじゃ女も寄ってこないよ。何でいつもそうなの?」

「それは――」


 真が話そうとするとフリータイム終了の笛が鳴る。


「フリータイム終了です。それではあらかじめ配られている『カップリングカード』に気に入った相手の番号を記載してください。最後に『カップリング』の発表をさせていただきます」


 プロフィールカードもカップリングカードもスマホの中に記録されており、婚活アプリを使って相手と情報交換ができる仕組みなのである。


 万が一スマホを忘れた場合は用意された紙に記入する事もできる。


 最後に気に入った相手の番号を送信するとAIによる自動分析ですぐにカップリングが決まる。これはデータとして婚活サイトに記録されるのだ。


 えっと、どうしようかな。


 真は誰に送信して良いのか迷ってしまう。


「誰ともカップリングしたくない場合は該当者なしで送信すれば良いんだよ」

「えっ、そうなの?」

「そんな事も知らないで参加してるなんて、余程婚活に興味ないんだね」

「えへへ」


 真は該当者なしで送信する――。


「お前いつの間にそんな可愛い子捕まえたんだ?」

「あー、彼女は僕の幼馴染なんです」

「なるほどね。長月さんとそういう仲だったのは意外だな」

「――マコ君は立花さんとどういう関係なの?」

「姉の同級生。何度かうちに遊びに来てくれた事もあったから、それで知ってるんだよね」

「あー、じゃあ奏さんとつき合ってるんですね」

「つき合ってるって程じゃねえよ。ただの腐れ縁だ」

「はあ……」


 カップリングの集計が終了すると、司会がカップリングの発表をする。


「それではカップリングを発表します。本日は3組のカップルが誕生いたしました。男性番号13番、女性番号2番の方です。おめでとうございます」


 カップリングが発表される度に司会と参加者全員による拍手が喝采する。


 カップリング自体は何人とでもできるが、もちろんカップリングしていない人と結婚する事もできる。しかし結婚しない限り婚活法から脱出する事はできない。


「それでは本日の恋愛下手限定編はこれにて終了とさせていただきます。お集まりいただいた皆様方、お疲れ様でした。それでは解散とします」


 ――やっと終わったと安堵する真たち。


 会場からはぞろぞろと人が去って行く。真たちもその群衆に続いて会場を後にする。


「マコ君、久しぶりに遊びに行って良いかな?」

「えっ! 僕の家に?」

「うん……駄目かな?」

「別に良いけど、何もないよ」

「良いの。ちょっと休憩していくだけだから」


 真は菫に言われるがまま一緒に帰宅する事を決める。

最初の婚活イベント終了です。

実際のフリータイムでもモテ度に格差があるとこうなるそうです。

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