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第3話「初めての婚活イベント」

 菫は予想が外れたのか緊張している。


 彼女は人見知りで人混みを良しとしない。


 幼馴染であった真にはそれが手に取るように分かる。ずっと引きこもりであった彼の方がずっと緊張していたのである。


 ――真は初めてであるためスマホの『プロフィールカード』に記載を始める。


 司会の案内で男女合わせて20人程度が揃うと指定席に座らされる。


「――それでは今から、恋愛下手限定編を開始いたします。目の前の方と1分間の会話が終わった後、男性の方は1マス分右に席を移動していただきます」


 真たちが参加した婚活イベントは『恋愛下手限定編』という複合形式ものであり、恋愛が不得手な人だけが集まる形式の婚活パーティである。


『婚活パーティ』には大きく分けて3通りのパターンがある。


『回転寿司形式』は男女が1人ずつ席をずらしながら、1分から5分程度プロフィールカードを交換して会話をする。


 メリットは全員と会話ができる点、受動型の人でも会話がしやすい点であり、デメリットは気になる人と集中的に話しにくい点、全員と話すため誰が誰だか分かりにくくなってしまう点である。


『立食パーティ形式』は立ち歩きしながら自由に好きな相手と好きなだけ話す事ができるが、声をかけてきた相手は基本的に拒否できないのが普通である。


 メリットとデメリットは回転ずしタイプの反対である。


『テンプレ形式』は回転寿司タイプを行い、気になる相手を絞ってから立食パーティタイプを行う形式である。両方のデメリットを打ち消せるが代わりに時間がかかりすぎるのがデメリットである。


「それでは始めてください」


 司会の合図と共に全員が一斉に会話を始める。


 真の相手は見た目29歳の大人びたミディアムヘアーの女性である。


「――八武崎真さんですか」

「はっ、はいっ!」

「自営業と書いてありますが、具体的に何をされてるんですか?」

「えっと、普段はアフィリエイトをやってます」

「よく分からないんですけど、それで稼げるんですか?」

「はい。主に記事や動画を見るためにクリックしていただいた分が広告収入になるんですよ。まあ、僕はあんまり稼げてませんけど」

「あぁ――そうですか」


 冷めた反応が真にもすぐに分かる。


 このやり取りを20回もするのかと思いながら落ち込み気味である。


「航空会社に勤めてるんですねー」

「はい、普段はCAです」

「CA?」

「キャビンアテンダントです」

「あぁー」

「えっ? 知らなかったんですか?」

「……はい。世間知らずなもので」


 笛が鳴ると全員が一斉に会話をやめる。


「それでは男性の方は次の席に移動してください」


 司会の案内で男性たちがそれぞれ席を1マス分移動していき、真は何人かの女と似たようなやり取りを繰り返していく。


「それでは始めてください」


 真の相手は23歳のセミロングヘアーな女性である。


「あの、八武崎さんは月にどれくらい稼がれてます?」

「えっと、自営業なので毎月バラバラですね。記事や動画が好調な時はそれなりに稼げるんですけど、普段はあんまり振るわないんですよね」

「――そうですか。大変ですね」

「接客業をされているんですね」

「はい、普段はメイド喫茶でウェイトレスをやってます」

「メイド喫茶という事は秋葉原ですか?」

「はい、秋葉原です。あそこメイド喫茶多いですからねー」


 多いというよりはイメージでそう思っただけなんだけど。


 真はそう思いながら、相手のプロフィールカードと睨めっこをする。


「休日なしなんですか?」

「はい……疲れた時や体の調子が悪い時は休みますけど、休日は基本的にないですね。毎日の出来事全てが仕事のネタになるので」

「そうなんですねー。という事は稼ぎもバラバラですよね?」

「――はい。全然駄目な時もあるんですよね。」

「えっ!?」


 そんな調子で真は合計20人の女性と1分ずつ話す。


 その途中で菫と対面した時は収穫を聞かれるが、真は全然駄目と答えるしかなかった。


「それではフリータイムまで10分間の休憩とします」


 真がここで一息つく。会場の端っこにある自販機でお茶を買って飲む。


「はぁ~」

「お前どうしたんだよ? ため息なんかついてさ」

「全然うまくいかなかったんです。立花さんはどうだったんですか?」

「俺もさっぱりだ」

「立花さんもですか?」

「ああ、最初は大手だからって理由で気に入られるんだけどよ、年収を答えた瞬間に冷めた反応されるんだよ。大手だからって稼いでるってわけでもないのによ」

「僕は職業のところからやばいですよ」

「そりゃ自営業は余程稼いでいない限り不利だからな」

「自営業って不利なんですか?」

「当たり前だろ! 世の女たちは安定して稼ぐ男を求めてるんだからよ。俺は三高じゃないからこんなもんだ。終わってるよな」


 僕に至っては最初の段階から終わってるんだけどね。やっぱりこんなんじゃ駄目なのかな?


 真はお茶を飲みながらそう思うのだった。


「もう休憩時間終わるぞ」

「あっ、はい。僕もすぐに行きますね」

「おう、じゃあ待ってるぜ」

「はい。カップリングできると良いですね」


 真はフリータイム終了の合図と共に会場へ戻るのだった。

婚活の回転寿司形式です。

実際にやったら相手の顔とか分からなくなりそう。

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