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第28話「婚活法を探る者」

 真が後ろを振り返ると、そこには怪しい男が立っていた。


 彼は黒いカジュアルな服装にサングラスをかけ、肩に届かないくらいの黒い短髪をなびかせながら真を睨みつけている。彼は靴をツカツカと鳴らしながら真に近づく。


「お前、何人かの相手に婚活法が始まった理由を聞いていたな?」

「!」


 怪しい男がぶっきらぼうに真に話しかける。


 もっ、もしかして黒杉内閣の関係者かな?


 だとしたら、僕、逮捕されちゃうのかな?


 でも日本は一応『言論の自由』が保障されてるし、そう簡単に逮捕とかできないと思うけど、やっぱりこういう事はしない方が良いのかな?


「あのっ、他に話題がなくて、それで仕方なく婚活法という誰でも知っている共通の話題にしていたんですけど、何か問題ありましたか?」


 真が恐る恐る言葉を選んで話す。


「いや、話題にするくらいなら問題ない。ちょっとこっちに来い」

「えっ、ええっ!?」


 真は怪しい男に路地裏まで手を引っ張られる。


 どっ、どうしよう。殺されちゃう! 助けてっ! 姉さんっ!


「よし、ここなら大丈夫だな」

「えっ!」


 この謎に包まれた怪しい男、赤羽慎吾(あかばねしんご)、34歳。身長172センチ、東京都内の新聞社に勤める『ジャーナリスト』である。


「お前は確か八武崎真だったな。俺は赤羽慎吾。ジャーナリストだ」

「ジャーナリスト?」

「ああ、俺は今、黒杉内閣の陰謀を暴くために婚活をするふりをしながら婚活法が始まった理由を探している者だ。あの悪党共をいつまでものさばらせておくわけにはいかんからな」

「あなたもですかっ!? あっ!」

「そう聞くって事は、お前もだな?」

「は、はい」

「何故理由を聞きまわっていたか事情を聞かせてくれ」


 この慎吾という男、何やら真と目的が同じようである。


 首からは参加者専用カードと共にカメラをさげており、胸のあたりにある内ポケットの中にはボイスレコーダーまで忍ばせている。


 どこか怪しいと思いつつも、他に頼れる人がいないため、真は確認を取ってから慎吾に事情を話す事を決める。


「誰にも言わないと約束していただけますか?」

「ああ、約束する」

「――実は僕、黒杉財閥の関係者から脅されていて、婚活法が始まった理由を明らかにしないと、家族全員が無職になってしまうんです。そうなったら僕の稼ぎだけでは到底食べていけないでしょうから、それでずっと困ってるんです」

「それはもしや、黒杉京子ではないか?」

「!」


 真は一発で当てられた事に度肝を抜いている。


「分かりやすい性格だな」

「そこはほっといてください。でも何で分かるんです?」

「黒杉財閥は常に悪い噂が絶えないからな。多数派である中年以上の人を贔屓にした法律を作る事で高い支持率を保ってはいるが、若者からは相変らず不評を買っている。詳しい話を聞こうか」


 真は全ての事情を吐き出すように慎吾に話す。


 今の真にとって、もはや頼れるのは彼しかいなかった。


 彼は菫が株式会社マリッジワールド社長のドラ息子と結婚させられる事も話す。


「――なるほど、それはかなり深刻だな。お見合いから結婚までの間隔が短いという事は相当焦っているという事だ」

「焦っている」

「ああ、マリッジワールドは婚活法が始まって以来急速に成長を続けている。そんな中、社長のドラ息子とやらが結婚していないというのはかなりのプレッシャーだろう。彼の名前は八王子和成だ。マリッジワールドは八王子グループの者が運営している会社だ。恐らく八王子は父親から早く結婚するように急かされているんだろう」

「じゃあ、僕の幼馴染は彼のメンツを保つために結婚させられそうになっているって事ですか?」

「その可能性は高い。しかも奴らは手段を選ばないから、何らかの手を使ってその幼馴染を脅し、結婚しようと企んでいるんだろう。下種の考えそうな事だ」


 真は絶句した。無理もない。ドラ息子のくだらないプライドのために1人の女性が犠牲になろうとしているのだから。


 そんなくだらない理由で……スミちゃんの人生を何だと思ってるんだっ!?


 真はその憤りを隠せず握りこぶしになる。


「その幼馴染の結婚式はいつなんだ?」

「3日後です」

「まだ婚姻届けを出してないなら、その結婚式を中止にしてやれば良い」

「ええっ!? そっ、そんな事したら」

「奴らに狙われるのは間違いないだろうな」

「そんな……」


 真は落ち込むしかなかった。あまりにも無力な自分に強い憤りを感じる。


「そうだ、俺とメアド交換をしてくれ。何かあったら必ず俺に一報をくれ。最悪黒杉京子を黙らせるくらいはできる」

「本当ですかっ!?」

「ああ、あの女に脅され、口止めをされている人が何人かいてな。そいつらがこっそり俺に教えてくれたんだ。あの女の弱みを掴めば家族の保証くらいはできる」

「分かりました。そういう事なら」


 真は慎吾とメアド交換をする。


 思わぬ助っ人の出現に安堵し、集めた情報を提供する事を約束した上で慎吾は路地裏から去っていく。真も彼に続いて路地裏を出る。


 とりあえず家族の安全は確保できた。


 しかしそれは確実な保証ではない。


 だが真は彼を信じる事にした。真は次の店舗へと向かう。東京の街には参加者専用カードを首からさげている人で溢れ返っていた。


 真はスマホで登録店舗を確認しながら歩き、1軒のカフェを見つけて木造の扉に手をかける。


 真が入った店舗は『丸井珈琲』というカフェだった。そこにも参加者たちが既に集まっている。


 真は店員に案内されると、そこで思わぬ再会を果たすのだった。

街コン回です。

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赤羽慎吾(CV:津田健次郎)

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