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第27話「手探りの街コン」

 真たちは東コンの登録店舗へと向かう。


 男性は時計回りに、女性は反時計回りに店を回り、相手とマッチングするという方式である。


 隣や向かい側にいる席の相手と話し、20分ごとに席替えとなる。1時間が経過すると店自体を出て次の店舗を探す。


「じゃあ僕こっちだから」

「うん、じゃああたしらはあっちの店から回るよ」


 真と奏たちはルートが異なるため一旦お別れとなる。


 真が小さなイタリアンの店に入る。看板には『Trattoria bello』と書かれており、イタリア国旗が外に飾られている。中は小さめのダイニングキッチンのような部屋である。


 部屋の所々にイタリアンではよくある小物が置かれている。


 厨房には本格的なピザ窯があり、何人かは既に調理をしている。真はその姿に圧倒され、店に入ったところで立ち尽くしていた。


「……」

「参加者専用カードがあるって事は参加者の方ですね?」

「あっ、はい」


 バンダナを巻いた感じの良さそうな女性が声をかけてくる。


「こちらの席へどうぞ」

「は、はい」


 真が案内されたテーブル席には既に何人かの男女が集まっていた。彼は恐る恐る席に座ると、そこには個性あふれる男女が迎え入れてくれた。


「あれっ、めっちゃ可愛いじゃん。やばくない?」

「うん、めっちゃやばい」

「えっ! 僕やばいんですかっ!?」

「可愛いって言ってんの。今時男性で君みたいに可愛い子あんまりいないから」

「そ、そうなんですか?」

「そうだね。全然見ない顔だけど、遠いところから来たの?」

「東京です」

「あー、地元かー」


 女性の内の何人かはギャルのような見た目をしており、他はおっとりしたような見た目である。男性は真以外は全員スーツを着ている。


 それでは6時を迎えましたので、今から東コンを始めたいと思いまーす。全員近くにあるグラスを持ってくださーい」


 街コンでは各店舗には司会役の店員がおり、進行の他、時間の経過と共に残り時間を伝えたりする役割である。


「20分が経過しましたら男性の方に席替えのコールをします。1時間が経過しましたら、次のお客様のためにご退場願います。それではスタートです」


 司会のスタートコールと共に店内は騒がしくなり、自己紹介と雑談の嵐になる。


 真たちは自己紹介を済ませると、女性陣が探りを入れるために仕事を聞き出す。


「皆さんって、どんなお仕事してるんですかぁ~?」


 うわぁ、またこの質問かぁ~。これがあるから面倒なんだよな~。


 婚活法って僕との相性最悪かも。


「私は普段は銀行の営業をしております」

「僕は循環器内科をしております」

「循環器内科?」

「心臓とかの検査をする内科です」

「えっ! じゃあ医者なんですかっ!?」

「はい、一応医者です」

「――えっと、自営業でネットビジネスをしております」

「ふーん」


 明らかに反応が違いすぎる。みんな銀行員や医者の方ばっかり見てるし、やっぱり安定した職業の人が人気なのかなー。


 真はそんな事を考えながら誰も話しかけてくれない状況に耐えるしかなかった。


「あの、ネットビジネスって何をやってるんですか?」


 真の隣にいた清楚系の黒髪ロングヘアーの女性が真に話しかける。


 彼女の名前は睦月涼音(むつきすずね)20歳(はたち)。身長149センチ、見た目は女子高生くらいだが、成人したばかりの女子大生である。


 身長も胸も控えめでありよく年下と間違われる。


 彼女以外の女性は全員銀行員と医者に『釘付け』である。


「えっと、記事とか動画とかを投稿して、そこに広告を張りつける事で広告収入を稼ぐという仕事なんですけど、分かります?」

「確か動画投稿をする人で有名な人とかいますよね。HIKARINさんとかオワオワリしゃちょーさんとか」

「はい、そんな感じです。僕はまだまだその人たちよりかはずっと下ですけど、いつかは広告収入だけで暮らしていけるように頑張ってます」

「そうなんですねー。私は今は大学生なんですけど、20歳になった途端に婚活法が施行されて、もうホントについてないなって思ってたところです」

「ですよねー」


 涼音もまた婚活法を嫌っている者の1人だった。


 成人している学生の場合は学業と婚活を両立しなければならず、中にはバイトまで兼ねている猛者もいるためか、学生は婚活法を免除するべきという意見すら出ていた。


 しかし黒杉内閣は医者の診断書がある場合を除き、婚活法の対象者が婚活を休む事は許されないとしている。


「この前彼氏に振られたばっかりなのに、最初の婚活でその元彼と会っちゃったんですよ」

「それ気まずくないですか?」

「気まずいですよー」

「婚活法って何で始まったんでしょうねー」


 真はさり気なく婚活法が始まった理由を聞く。分からないかあるいは既に出た説を出してくる事がほとんどだろうと割り切っていた。


「確か週刊誌だと、税収を増やすためだって書かれてありましたよ」

「税収ですか?」

「はい、婚活法の施行と同時に別の法案もいくつか通ってるんですよ。野党はみんな婚活法に文句を言うのに夢中で、他の法案には気づかなかったみたいですけど」

「!」


 真は意外な説に驚きを隠せなかった。


 他にもいくつか法案が通ってる?


 もしかしたら、その中に婚活法の真実が隠されてるかもしれない。姉さんの言った通り、ちゃんと社会勉強をするべきだ。


「あんまり食べてませんね」

「そうですね。昼食が少し遅かったので」

「もう! 私の方が年下なんですから、タメ口で良いですよ」

「う、うん。じゃあそうさせてもらうね」

「あの、良ければメアド交換しませんか?」

「――うん、喜んで」


 真は涼音とメアドを交換する。食事はカルボナーラを1皿食べた程度だった。席替えと自己紹介からの雑談を繰り返していると1時間が経過し真たちは外へ出る。


 もっと話してみたい相手がいる場合は一緒に行動を共にしても良い。


「おい、ちょっと待て!」

「!」


 店を出たばかりの真に1人の男が話しかけてくる。


 殺気立ったその声に真はビビるしかなかった。

街コン回です。

気に入っていただければブクマや評価をお願いします。

睦月涼音(CV:小倉唯)

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