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第2話「幼馴染との再会」

 真が朝早く『東京』都内の自宅を出発したのには訳がある。


 一言で言えば、『婚活サイト』の登録と予約に出遅れたからである。


 彼は政府指定の婚活サイトに登録するも、その頃には昼以降の婚活イベントに予約が殺到しており、もう朝の分しかなかったのである。


 婚活法の対象者は婚活法施行から1週間以内に政府指定の婚活サイトに登録する事が義務付けられている。


 その婚活サイト名は『マリッジブライド』という。


 略称は『マリブラ』である。


 未婚者たちの間では流行語レベルで用いられている単語となっていた。国内で行われる全ての婚活運営会社及び婚活イベントはこのマリッジブライドの傘下で行われている。


「ちょっと早く来すぎちゃったかなー?」


 黒を基調とした私服姿の真が予定よりも少し早い時間に婚活イベントの会場へと辿り着く――。


 会場とは言っても、ビルの中にある1部屋である。


「――ん? もしかして……マコ君?」


 後ろから1人の女性が真に向けて声をかける。


 彼女は真の『幼馴染』で元同級生でもある長月菫(ながつきすみれ)だった。


 黒髪のゆるふわロングで肩にかかるくらいの長さ、とても25歳とは思えない幼く見える顔と声、モデルのような体形。


 身長は153センチ、おっとりした性格、幼いルックス、張りと艶のある胸が特徴である。


 ――自分の体形に自信があるのか肌は少し露出気味であり、明らかに体形が分かる服を着ている。彼女は顔をニコニコさせながら幼馴染との再会を喜んでいる。


「えっ! もしかしてスミちゃん!?」

「うん……久しぶりだね」

「何年ぶりかな?」

「――中学を卒業して以来だから、10年ぶりかな」

「あれからもう10年経つのかー」

「あっという間だね」


 真と菫は幼稚園から中学までを同じ場所で過ごした仲であり、お互いに『スミちゃん』、『マコ君』と慣れ親しんだ愛称で呼び合っているのだ。


「スミちゃんもマリブラに登録してきたの?」

「うん。法律で義務になってるからね。マコ君も朝から早いね」

「あー、それなんだけど、登録に出遅れてしまってさ、朝の分しか予約が残ってなかったんだよね」

「ふふふっ」


 菫が不意に笑いだす。彼のドジっぷりが彼女の笑いのツボを刺激したのだ。


「まあ……そういう反応になるよね」


 真は苦笑いをしながら恥ずかしそうにする。


「あっ、ごめんね! マコ君が昔から全然変わらないなって思ったから」

「良いんだよ。人から笑われるのは慣れてるから」

「私は朝の方が人が少ないと思って朝に予約したの」

「人が少ないってどういう事?」

「朝の婚活イベントは人が少ないの。『婚活休暇』があるとはいえ、イベントに行くなら大体みんな昼以降に行きたがるから」

「確かにそうだね。午前中は眠いよ。昨日も夜はあんまり寝てないから午前中の婚活イベントはさすがに応えるよ」


 2人はしばらくの間仲良く話す――。


「じゃあマコ君は今までずっと1日中家に引きこもって仕事してたの?」

「うん。だから外に出るのは久しぶりでさー。あははは」

「何だか先が思いやられる」

「スミちゃんは何してるの?」

「個人事業主。自分で作曲して、その曲を音楽サイトに投稿して収益を得てるの」

「スミちゃんも自営業だったんだ。じゃあ歌手とかに歌わせたりとかしてるの?」

「歌は音声合成を使ってるから歌手は要らないよ」

「便利な時代になったんだねー」


 婚活法は不便だけど。真はふとそう思ったが言えなかった。


 ――そこに他の参加者が朝の婚活イベントに続々と現れる。


 菫が予想していた以上の人数だった。真と菫は少し距離を置いた。


「あれっ、お前八武崎だよな?」

「立花さんっ!?」

「久しぶりだな。元気してたか?」

「はい、久しぶりですね」


 突然真に声をかけてきたこの高身長の男性は立花樹(たちばないつき)、大企業に勤める30歳のサラリーマンである。


 身長179センチ、オシャレなスーツ姿にアスリートのように短い茶髪が特徴である。


 奏の元同級生であるためか真とは面識がある。


 彼の特徴を一言で言えば積極性のあるオラオラ系だ。


 運動神経が良く、小中高大でクリーンナップのショートという花形のポジションを守り続け、誰よりも先に大企業から内定をもらった実力者である。


 ルックスは可もなく不可もなくといったところ。


「お前その恰好じゃ女にモテねえぞ」

「そう言われましても、私服で良いと言われたので」

「私服って言われてもスーツを着ていくのが社会人ってもんだぞ」

「社会に出た事ないんで、全然分からないんです」

「――もしかしてニートなのか?」

「一応働いてはいるんですけど、やってる事はほとんどニートに近いです」

「それでよく来れたな」

「来ないと捕まるんで」

「それもそうだな。奏はどうしてるんだ?」

「姉さんならいつも通りです。今日もずっと僕の心配ばかりで」


 樹は奏の事を気にかけていた様子である。


 彼は婚活休暇を使ってここへやってきた。彼自身に結婚願望がある事も手伝ってせっかくの制度だからと利用する気満々なのだ。


 婚活イベントの時間が段々と近づくにつれ人が増えていく――。


 朝は人が少ないという菫の予想は見事に外れる格好となる。

次回から婚活イベント開始です。

更新は不定期とします。

長月菫(CV:水瀬いのり)

立花樹(CV:高橋広樹)

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