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第11話「動き出す陰謀」

 午後4時、奏は婚活イベントの洗礼が効いたのかずっと落ち込んでいる。


 そのままスクランブル交差点を渡り東京駅から自宅へと戻るところだった。


 夕方を過ぎたあたりに八武崎家へと戻るとすぐに夕食の支度を始める。真は冷蔵庫の中にお茶がないかを確かめるために下へ降りてくるとそこで奏と目が合う。


「あっ、姉さん! おかえり」

「あ、ああ! ただいま」

「顔色悪いけど、何かあったの?」

「いや、何でもないよ」

「姉さん、婚活イベント初めてだもんねー。僕がやり方教えても良いよ」

「……真はそもそも端っこの方で大人しくしてたんじゃなかったのか?」

「うん、だって結婚とかする気ないし」

「――あたしもそうしてりゃ良かった」

「?」


 真はきょとんとしながら冷蔵庫から取り出したお茶飲むと2階の自室へと戻り、彼はそのままブログの記事を書き始める。


 午後6時を過ぎると夕食ができあがり、奏がいつものように真を呼び出し、2人で奏が作った夕食を食べるが奏はどこか浮かない顔だった。


 机の上には米、味噌汁、野菜の漬物、レンコンと人参とこんにゃくを刻んで和えたもの、サバの味噌煮、和風ソースのハンバーグが2食分並んでいる。


 しばらくの沈黙の後で真が重い口を開く。


「姉さん、辛い事があったんなら教えてよ。僕で良かったら聞くから」


 奏はハンバーグを半分食べたところで箸を止める。


 真は奏のメッセージに気づいていた。


 奏は辛い事があると必ず『和風ソースのハンバーグ』を作る癖があるのだ。真はずっと奏の献立を見てきた事でそれを見抜いていた。


 彼女は今日の出来事を話し始める。


「――そんなわけでさ……婚活イベントで気に入った相手には馬鹿にされるし、年下の同僚からは忠告されるし、もう散々だったよ。カップリングする気がないんだったら、最初からその気がない事を伝えてくれたらどれだけ良かったか」

「そりゃみんな強制の婚活イベントでカップリングしようなんて思わないよ。多分初参加の人の多くは結婚する気がない人だと思うよ」

「でも結婚しなかったら50歳を過ぎるまでずっと婚活をさせられるぞ」

「合コンだと思って行けば良いと思うよ。僕は婚活イベントのおかげでスミちゃんと連絡を取るようになったし、また会う事になったんだよね」


 この時彼らは気づかなかった。


 婚活法の本当の理由に。


 数日後、東京某所のオフィスビルにて――。


 午後8時、東京の街はすっかり日も暮れており、イルミネーションのように数多くのライトに照らされながら夜の闇に包まれている。


 その中でも一際高いオフィスビルの最上階では、腕を組み人を見下ろしている金髪でツインドリルの令嬢と、ひたすら土下座をさせられているスーツ姿の男がいた。


 スーツ姿の男は床に四つん這いになっており、体は震え、必死に許しを請うので精一杯な様子である。


「あなた、今度失敗したらクビにするって言いましたよね?」

「もっ! 申し訳ございませんっ! どうかもう一度だけチャンスをっ!」

「駄目! 悪いけどあたし、無能は嫌いなの。連れていきなさい」

「どうかご慈悲をっ! お願いしますっ! お嬢様っ! お嬢様あああああぁぁぁぁぁ!」


 令嬢が冷たい声で男に退場を告げると、無様にも土下座をしていた男が黒服の男に部屋から引きずり出される。部屋に残ったのは令嬢と机に座っている顔立ちが良く、ガタイの良い黒い短髪の御曹司の2人だけである。


「あの男はもう良いのか?」

「うん、全然あたしに相応しくなかった。もうこれで何人目やら」


 令嬢がそう言うと御曹司は席を立ち、どこか悟ったような顔で窓の外を見る。


「今この日本では1000万人を超える独身の若者が婚活をしているが、未だに俺たちに相応しい相手は見つからないままか」

「いつになったら見つかるのやら」


 窓の外から東京の街を見下ろすこの男、黒杉政悟(くろすぎせいご)、33歳。黒杉財閥の御曹司であり、多くの子会社を抱える『株式会社黒杉グループ』の社長である。


 身長180センチ、三高男性の典型ではあるが、性格は至って冷酷であり、女たらしで周囲からは恐れおののかれている。あだ名は『冷酷王子』。


 その後ろで社長室の机に座っているこの女、黒杉京子(くろすぎきょうこ)、27歳。黒杉財閥の令嬢であり、男たらしをしてはごみのように捨て、相手の家族もろとも路頭に迷わせてきた。


 身長157センチ、政悟の妹であり、富裕層以外を見下す癖がある。あだ名は『暴君令嬢』。


「そもそもお父様は何故婚活法を?」

「知らなくて良い。いずれ時が来たら教えてやる」

「――ふーん。まっ、別に良いけど」

「次のお見合い相手はもう決まったのか?」

「うん、今度はちょっと可愛い子。少しは楽しませてくれると良いけど。どうかな。そういえばお兄様はもう次の相手は決まったの?」

「一応決まったが、今度はお持ち帰りすら無理だろうな。親父は俺たちに世継ぎを生ませるだけだと思いきや、もっと壮大な野望を持っているとだけ言っておこう」

「そうもったいぶられると余計に知りたくなるんだけど」

「これを庶民たちが知ったら暴動が起きる。京子はお喋りだからな」


 京子はスマホを取り出すと、婚活アプリにアクセスして次のお見合い相手のプロフィールカードを確認する。


 そこには真の顔写真と特徴が詳細に書かれており、京子は相手を見下すような顔でそれを見ながら不敵な笑みを浮かべるのだった――。


 午後10時、真に1通のメールが来る。


「――あれっ、父さんからメールが来るなんて珍しいな。えっ? お見合い?」


 真は目を疑う文章を目にする。


『今度お見合いをするからそっちへ行くぞ』


 真は驚きを隠せなかった。まさか自分がお見合いに誘われるとは思わなかったからだ。


 真はメールの真意を確かめるべく、父親へメールを返信するのだった。

黒杉財閥の陰謀回です。

あと新キャラです。

黒杉政悟(CV:子安武人)

黒杉京子(CV:竹達彩奈)

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