第1章 第1話 我が家はあやかし喫茶店
不定期連載です。よろしくお願いします。
いつもの帰り道。
いつもの空の色。
いつもの風の匂い。
そしてーーー
カランカラン。
「ただいま帰りました!店長」
「おかえり。舞」
いつもの我が家。
漂うコーヒーの香り。レトロな室内。カウンターに佇んでいる白髪ロングから耳が生えている1人の男性。不思議なことに一年中すみれ色の浴衣を着ている。店長兼私の婚約者でもある白狐の白がコーヒーカップを拭いていた。
そう、我が家は喫茶店なのである。私が5歳の時に店長が開いたレトロな雰囲気が漂う喫茶店。喫茶店といってもコーヒーだけではなく、ちょっとしたスイーツも提供する現代風に言うといわゆるカフェだ。そこでは店長の白と、アルバイトの私、二ノ宮 舞と、
「おかえりなさい舞ちゃん!学校はどうだった?」
従業員の鈴さんの3人で営業している。
「ただいま帰りました鈴さん!今日は体育で体力テストがあったんですよ。短距離走で自己新記録が出たんです」
「あぁ、舞ちゃんは体育が得意だったわね。それは何より。コーヒー飲んでいく?」
「はい。お願いします」
そう言いながらテキパキ動く姿を見て手馴れてるなぁと改めて感心させられる。鈴さんは開店当時からこの喫茶店で共に働いている従業員さんだ。実を言うと私のお世話係さんでもある。夕焼けに茶髪のポニーテールがよく映える。緑のエプロンも似合っている。こんな雑談をしながらゆっくり過ごすのも早10年。いつも通りの光景になっている。
コーヒーも飲み終わりゆっくり過ごしていると、冷蔵庫を漁っていた白が声をかけた。
「舞。悪いんだが、ひとつお使いを頼まれてくれないか」
「わかりました。で、何を買ってくれば…」
「ちょうど砂糖を切らしてしまってな。あと、牛乳と苺も頼む」
「わかりました。行ってきますね」
私は制服姿でそのままドアに手をかけた。
が、
「…店長。」
私はじーっと白を睨んだ。何故かと言うと、ドアを開けた先はいつもの通学路ではなく商店街の入口だったのだ。
「早く済ませた方がよかろう?」
白は得意げな顔をしているが。
「そういうことで神力を使わないでください!自分で歩けます」
「そうか?早くに済ませた方が得だろうに」
そういって白は渋々いつもの通学路に戻してくれた。
「それでは行ってきます!」
私は笑顔で出かけて行った。
これが私の日常なのである。
まぁ、周りから見れば婚約者とお世話係と許嫁のおかしな日常なのだが。