第006日目
第006日目
目を覚まし、ここ数日の日課にもなった石板の確認と食べ飽きた朝食を済ませる。
名前:ユーヤ・タナカ
年齢:18
LV:10
主職業:見習い採取人
特技:初級採取知識、初級採取量増加
装備:節の木の棒、採集用鎌(初級)
副職業:-
特技:-
その他:言語の加護 職業選択の加護
見習い採取人がLV10となり採取人へと進化しました
採取人へと進化したことにより、副職業が解放されました
石板を確認するとそこには進化の文字と副職業の文字があった。
石板の職業部分を指で触ると、見習い採取人の下に採取人が確認できた。
これはお祈りが必要なのかな?変更出来るのかな?等と考え石板を触っていると、いつの間にか主職業が採取人へと変更されていた。
副職業部分を指で触ると、以前確認した見習いの職業がずらずらと並んでいる。自己防衛の部分もあるので、ここは経験のある見習い戦士を選ぶこととする。
名前:ユーヤ・タナカ
年齢:18
LV:1
主職業:採取人
特技:中級採取知識、中級採取量増加
装備:節の木の棒、採集用鎌(初級)
副職業:見習い戦士LV2
特技:初級戦闘知識、初級攻撃力増加
その他:言語の加護 職業選択の加護
職業を変更したことでLVは1に戻ったが、副職業に見習い戦士を選択することが出来た。節の木の棒を手に持ち、素振りをしてみる。感覚としてはゴブリンを倒した時と同じ様だ。
これで採取に没頭して、振り返るとそこにはモンスター!というお約束の展開でも少しは安心出来るのだろう。
二度と抜くことが出来ないフラグをしっかりと建てた後、背負い籠に必要な物資を整理して出発の準備を行う。南にある節の木の群生地付近から何やらガサガサと物音が聞こえる。
フラグの効果はここまで有効なのかと感心しつつ、節の木の棒を手に持ち、物音がする場所へゆっくりと近づいていく。そこに一体何がいるのかと慎重に近づいていくと……
全身が泥汚れで真っ黒な人が2人、その2人に支えられるように歩く汚れの少ない人が1人。合計で3人の人間らしき存在が確認できた。ただ、支えられている1人は足取りがフラフラで1人では満足には歩けない様子であった。助けが必要だとは感じるものの、声を掛けたゴブリンが襲い掛かってきたことが頭をよぎり一応声を掛けることとした。
「そこでなにをしている!!」
突然の問いかけに驚いたのか、真っ黒な2人はキョロキョロと辺りを見回している。
こちらに気付いた真っ黒な2人は声を揃えてこちらの問いかけに応える。
「水……水を頂けないでしょうか……」
「水……水を頂けないでしょうか……」
「分かった、水が欲しいんだな。少し分ける分はあるので、その場で少し待ってくれ。」
そう答えて小屋へと走って戻る。袋の中に水ヒョウタンを詰めれるだけ詰め、3人の元へと走り戻る。右手には節の木の棒をしっかりと握ったまま、警戒しつつ3人の元に近づく。
水が貰えると聞いて安心したのであろうか。1人をしっかりと支えつつも座り込んでいる3人の姿がそこにはあった。3人に水ヒョウタンを袋から取り出し渡すと、水ヒョウタンに若干戸惑いつつもガブガブと水を飲んでいく。全ての水ヒョウタンが空となり、まだ必要かと問いかけると3人ともに無言で頷く。
その場から動かないようにと再度念押しし、袋を手に泉へと走る。3人が満足するまでに泉へと2往復したところで、真っ黒な人の1人がゆっくりと話をはじめた。
「水を頂き助かりました。私はゲッダと申します。……」
ゲッダの話をまとめると、
真っ黒な人のもう1人の名前がラーゲ。汚れの少ないフラフラな人がジーウ。ジーウは女性らしい。3人の身分は奴隷。馬車に乗せられ移動の途中に盗賊に襲われたとのこと。
襲撃の際に馬車の側面が破損し、なんとか3人はその隙間から抜け出ることが出来た。護衛の兵士や御者が盗賊と戦っている隙になんとかその場を離れ、走り続けた。
どちらの方向に行けば何があるのか分からず3日間ひたすら歩き続けた時、丘のようなものや山?壁?のようなものが目に入り、力を振り絞って歩き続けた。女性のジーウは馬車に乗っている時から衰弱していた様で、丘のようなものを見つけてからは2人が支えてなんとか歩き辿り着いたとのこと。
「3人ともに奴隷なのですね。私は奴隷について詳しくはないのです。」
奴隷、馬車が盗賊に襲われる、馬車から何故か逃走出来たというお約束だなと感じながら、そこはやはり 細かいことは言わない約束となっている。だなと話を進める。
もう1人の男ラーゲが奴隷について私が知っていることですが、と前置きした上で説明をしてくれた。
その場で延々説明させるのもどうかと思い、小屋の近くへと案内しクッションらしきものを急いで作成、パンの実と干し肉といった手持ちの食料と一緒に提供した。衰弱しているジーウを座らせたままはどうかと考え、小屋へと案内し敷布団もどきに横になる様にと促す。
ラーゲの説明を話をまとめると、
奴隷には借金奴隷、戦争奴隷、犯罪奴隷の3種類がある。
借金奴隷は言葉そのままで借金により奴隷となったもの。相応の金銭を用意出来れば解放される。
戦争奴隷は戦争で捕虜となった兵士や攫われた住人が奴隷となったもの。借金奴隷のように奴隷となった過程がしっかりとしていない為、戦争していない国へと逃れることが出来れば簡単に解放される。
犯罪奴隷は犯罪を犯した者が償いとして奴隷となる為、解放されることはない。
奴隷に共通することとしては、雇用主へ隷属させる為に隷属の首輪と呼ばれる物を装着していること。雇用主や他人(奴隷含む)へ加害行為は隷属の首輪により阻止されるそうだ。
細かいことは言わない約束となっている。 って便利な言葉だよな、と考えていると、ゲッダが私に分かることになりますが、と追加で説明してくれた。
3人ともに戦争奴隷とのことであった。ジーウは置いておいてゲッダとラーゲは元兵士なのか!?と節の木の棒を手に持ちそうになる。棒を手に持つ前にゲッダが奴隷になった経緯を口にする。
「少し長い話になりますが……」
そう前置きすると、ゲッダは奴隷になった経緯をゆっくりと説明してくれた。
地理に関しては石板で確認できる地図しかないので、都度都度質問を挟みゲッダの話を聞いていく。
この地(名称不明)には4つの国が存在した。横に広い形をしていると言われており、西から順にオズボーン獣人国、フォルシエル王国、ベドマン帝国、ビューストレム王国の4つの国が存在した。それぞれの国を隔てるように大きな山脈が存在している。
オズボーン獣人国とフォルシエル王国は友好な関係にあった。獣人国以外の3国はそれぞれ敵対をしていたものの、フォシエル王国と獣人国との友好関係もあり、3国は三つ巴の関係とも言え手出しが出来ない状態が続いていた。国土面積は西から2割、2割、3割、3割程度の大きさと言われている。国土面積=国力といった図式もあり、フォシエル王国は優勢であった。
その関係が崩れたのが5年前。獣人国で獣人独特の感染病が流行。死者は多くなかったものの、兵士を含め多くの国民が病に伏した。この影響は隣国のフォルシエル王国にも及んだ。西側に存在する規模の小さな村等の警護、街道の巡回警護を獣人国からの傭兵に頼っていたのである。
長年攻めあぐねいていたヘドマン帝国は王妃をビューストレム王国へ嫁入りさせ婚姻関係を結ぶ。合わせて向こう5年間は軍事行動は起こさないとの和平を結び、東側からのプレッシャーを解消した。実は、ヘドマン帝国が西へ進軍しよとすれば、ビューストレム王国が西側国境へ兵力を終結し牽制を行っていたのである。
獣人国の感染病、和平によるプレッシャー低減を追い風に、ヘドマン帝国は一気に西へ西へと進軍を開始した。抵抗も空しくフォルシエル王国が滅亡したのが1年ほど前。
滅亡後は国民を奴隷にすべく、各地で「奴隷狩り」が行われたそうだ。戦争難民を追いかけ捕らえ、隷属の首輪により無理矢理に戦争奴隷として売買を行う。
3人は「奴隷狩り」からなんとか逃れ続け、戦争難民の全面的受け入れを表明した獣人国を目指し西を目指した。受け入れ表明を知り気が緩んだのであろう。1カ月程前に滞在していた廃屋が急襲され奴隷となった。
ゲッダとラーゲは畑仕事と狩猟を行う農民で、ジーウは隣村で見習い薬師として生活した様だ。
戦争奴隷ということで少しやっかいではあるが、本人達は被害者なのである。
ゲッダとラーゲには落ち着くまでここに滞在してよいことを伝える。その言葉に2人は地面に頭を擦り付けてお礼を言うが、この場所はたまたま私が先に居ただけなので気にするなと伝える。小屋で休んでいるジーウの面倒を2人に頼み、今後どのようにするかを考えていく。
・人数増加による食料確保の問題
・ジーウが回復するまでに専属で1人傍に置く必要がある
・誰が来るか分からないので護衛も必要
食料の確保は自身で行うこととして、
3人の職業をどうするのか考えないといけない。
石板を持ってあれこれ試してみるも、詳細な情報すら分からない。
これはどうにかせねばと祈り台を設置し、奴隷3人の職業設定方法を教えて欲しいと念じる。
3人の登場からいろいろな話を聞き、随分と時間が経過したようだ。
皆疲れも溜まっているようなので、男3人で早めの夕食とした。ジーウさんは食欲が無いとのことで、泉の水とパンの実を小屋に置いておいた。
小屋で寝ることが出来ないので、初心に戻り岩ベッドで就寝する。ゲッダ、ラーゲの2人は文句も言わずにこの罰ゲームに付き合う様である。
本日の夕食メニュー
・パンの実(文句を言えない)
・干し肉(文句を言えない)
・泉の水(精神的疲労は回復せず)
本日の討伐モンスター等
・なし
その他イベント
・戦争奴隷を3人保護しました
・保護した奴隷の所有権を取得した様です
その日の夢に「何か」は現れ、奴隷の職業に関して説明をしてくれた。
所有権を得た奴隷は翌日から自由に変更できるので、明日の朝に確認すれば良いらしい。
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