第002日目
第002日目
翌朝、目が覚めると同時に物凄い喉の渇きを覚えた。こちらの世界に転生して24時間は経過していないのだろうが、そういえば何も口にしていない。まずは水を確保しないと!と慌てて地図を確認するが、歩き回った範囲は広くないので、水源がどこなのかわからない。
水源の確保、食料の確保を今日の課題として行動することにした。行動の前に自身の状態確認を石板で行う。
名前:ユーヤ・タナカ
年齢:18
LV:1
主職業:見習い採取人
特技:初級採取知識、初級採取量増加
装備:-
副職業:-
特技:-
その他:言語の加護 職業選択の加護
初級採取知識:初歩的な採取物に関する知識を得る
初級採取量増加:ごくわずか採取量が増加する
特技部分は光って点滅していたので、指で触ると知識が流れ込んできた。
状態確認も終わり、まずは水を得る為に周囲を探索することとした。
「何か」が言っていた通り、周囲は安全地帯のようで獣の気配は一切ない。
地図の石板を片手に岩の周囲をぐるぐると回りながら確認していく。岩から離れると徐々に背の低い木が増えてくる。木々を掻き分けて進むと一気に視界が広がる。岩は草原の小高い丘の上にあった様で、丘を下った先に小さな泉が確認できた。
泉を発見し、喜びその泉に駆け寄るも、ある致命的な問題に気付くことになった。
「この泉の水はそのまま飲んで問題ないのだろうか?」という疑問である。
泉の水を手に掬い、変な匂いはないか、異物が混入していないか等を確認していると、水に関する情報が頭の中に流れ込んできた。
名前:泉の水(???)
特殊な泉の作用により常時飲用が可能な水。野菜等をこの水で育てると成長促進作用がある。泉より採取して24時間経過するとただの水になる。特殊性能:???
若干不明な点はあるものの、飲用は可能そうなので飲むこととした。十分に水を飲み泉を観察してみると、水中に面白い物を発見した。明るい緑色をした水草に大きなヒョウタンのような実が結構付いている。これはなんだと手に取ってみる。
名前:水ヒョウタンの実(???)
特殊な泉に生息する水ヒョウタンの実。乾燥させると通常のヒョウタンと同様に水筒として使用が可能。特殊性能:???
なるほど、これは水筒として使うことが可能なのか。水筒として何個か欲しいので、2つほど採取をして、泉の傍で乾燥させることとした。
飲み水の確保は出来た。次は食べ物を探そう。周囲を見渡したいので、岩のある丘の上に戻り、周囲を見渡してみる。泉がある場所を更に奥へと進むと大きな岩のような物が見える。泉が正面に見える位置から左手に草原が途切れ大きな湖のようなものが見える。反対に右手を見ると同じく草原が途切れているのだが、その先は草原を更に濃くしたようなものと木々が確認できた。「何か」は物資の確保ができる森があると言ってたので、右手にある木々のほうへ進むこととした。
暫く歩くと、丘の上から見えていた草原の切れ目が確認できる。しかしその切れ目は不自然な程にまっすぐ続いており、明らかに自然なものではない。地図石板で詳しく見てみると、やはり地図上でも色が変化しており、違うことが確認できた。恐る恐る先に進む。草の密度が徐々に上がり、低木が増えてきた。その先には背の高い木がある。背の高い木に何かが実っている。手の届く距離だったので、その実を収穫し、確認してみる。
名前:パンの実
パンの木になる実で主食して多く食べられている。収穫後に十分に乾燥させることで長期保存が可能。
パンが実るパンの木ですか。そのままですね。主食として食べられるということで、食用は可能だろうと判断し食べてみる。味は・・確かにパンのような味がする。中心にやや大きめな実があること以外は「パンらしきもの」と呼べるのではないか。食べることができる小さなヘチマのようなもの。実の大きさとか繊維がどうとかは異世界なので置いておこう。
周囲を更に探索するとまた変わったものを見つけた。
食虫植物のような形の物が木からぶら下がっており、それは袋の形状をしている。大きさは10キロのお米の袋位だろうか。結構な大きさである。触って巻き付かれたりするのも嫌なので、近くにあった枝で突いて問題ないことを確認し、採取してみる。
名前:ウツボブクロの実
食虫植物の変異種で食虫しなくなった。袋の部分が肥大化し丈夫なことから物を運ぶ際の袋の代用品として使用される。乾燥させることで強度が上がり、しなやかさも増す。
物を集めるにも箱か袋が欲しかったので、これは嬉しい発見だった。その木には5個ほどの実がぶら下がっていたので、あと2個収穫した。最初に収穫した袋の中に折りたたんだ袋を入れ、最初に発見したパンの実を収穫し袋に入れていく。転生してから特に何も口にしていなかったので、パンの実はその場で満足するだけ食べた。森の中を探索し、袋一杯にパンの実を収穫したので、泉に戻ることとした。
泉に戻り、水ヒョウタンの実に泉の水を入れてみる。乾燥させていたこともあり、特に問題はないようだ。水を汲んだヒョウタンを別のウツボブクロに並べて入れて、片手にはパン、片手には水と生きていく上で必要な物を確保できたと満足し、丘の上に戻ることにした。
丘に戻る際に少し離れた場所に変な植物が生えていることに気付き、岩に荷物を置き確認に戻る。その木はまっすぐな木に見えるが、竹のような節が10cm位の間隔で存在している。また太さも指のサイズから腕サイズ位まで多種である。ノコギリや斧といった道具は持ち合わせいないので、木を切ることができない。細い木なら折れるかも、と試しに折ってみると簡単に折れた。
名前:節の木
自生している状態では節の部分から容易に折れる。折れた後は徐々に硬化し強度が増すと共に節が消えていく。
節から簡単に折れてしまう木。道具を持っていない現状で入手可能な木材と言えばこれになるんだろうか。昨日はそのまま岩の上で寝たが、流石に雨を考えると野ざらしは辛いものがある。良い物も見つけたので、小屋を作ることにしよう。
目に入る中で太い木を両手で持ち、根本を蹴ってみると簡単に折れた。ゆっくりと倒し、枝が伸びている部分を丁寧に折り、適当な長さで再度折る。丸太状態で10本程作っていく。一番太いサイズでも両手で簡単に持ち上がる程に何故か軽い。
採取した太い節の木を岩まで運び、柱を建てる為の穴を掘る。スコップはないので、見つけた適当な細長い石を使い、どうにか2か所穴を掘る。
次に木を組む上で紐が必要になるので、節の木周辺を再度探索し、蔦のようなものを集める。
掘った穴に柱にする木を2本刺し、周りをしっかりと固めていく。硬化が進んでいるようで、節もうっすらと見える程度になってきた。2本の柱の固定が終わると、2本の柱を繋ぐように1本の木を渡す。節の木はそこまで重くないので蔦で固定するのも苦労しなかった。
本当は四角の小屋が希望なのだが、道具もないので柱にそれぞれ木を斜めに掛け、三角形ではあるが天井のある場所を確保することとした。屋根材に使える細い~中サイズの節の木を採取し、適度な長さに折り分けていく。ある程度まとまったとこで岩のところへ運び、それぞれ屋根に固定していく。ここまでは順調だったのだが、ここで1つの問題が発生する。
屋根材がない
大きな木の葉でも良い、なにか水を通さなく加工が容易なものが欲しい。
これまで見つけた中で屋根に使えそうな物はウツボブクロくらいだろうか。
水を通すのかどうかわからないので、余っているウツボブクロを手に泉へと向かう。
泉の傍にウツボブクロを置き、水を掛けてみる。水が浸透している感じはしないので、恐らく大丈夫だろう。周囲を見渡してみるも、大きな葉は見当たらないので、ウツボブクロを集めることにしよう。
泉で十分に水を飲み、追加で何個か水ヒョウタンを収穫し、乾燥させておく。
しばらく歩き、ウツボブクロを探し、見つかる限り採集していく。最初に見つけた場所からどんどんと奥に向かい、袋の中に折りたたんだ袋を入れ進んでいく。そろそろ戻らないと荷物が限界だなと思った頃、木からぶら下がるキュウリのような物を見つけた。
名前:接着の実
果汁に強い接着効果があり、生産素材として幅広く使われる。
試しに落ちていた木の葉に接着の実をゴシゴシと擦り付け、他の木の葉を重ねてみると、確かに糊のような感じで接着されていることが分かる。耐水性が分からないが、使えるものは使おうということで、見当たる範囲を収穫しておく。良い物が手に入ったので急いで岩に戻ることにした。
岩に戻るとだいぶ日が傾いている。急がないと日が暮れてしまうと、収穫したウツボブクロを接着の実で屋根に貼り付けていく。どうにか屋根も貼り終えて、パンの実を十分に食べて寝ることにした。
++++++