第001日目
異世界に転生することになった主人公の田中裕也。仕事の帰り道に記憶が途切れ知らない場所で目を覚ます。「何か」から異世界への転生について説明を受け、異世界へと転移する。
主人公は今日も石板を手に森を歩きます。
第001日目
ここはどこだ?
主人公:田中裕也は見たことのない風景が広がる場所で目を覚ました。
仕事から自宅へ帰る途中、通り道にあるコンビニに寄って晩御飯の弁当とビールを2缶買ったことは記憶している。コンビニを出て自宅に戻る途中、何かがあって記憶が途切れた。
一体、私に何があったのだろうか?・・・あーでもない、こ~でもないと考えていると、突如目の前に「何か」が現れたことに気付く。そして「何か」は驚いている私に語り掛けてきた。
「田中裕也さん、お目覚めですね。いろいろと混乱されているでしょうから、私から順番に説明させて頂きます。宜しいでしょうか?」
突然「何か」が目の前に現れた私はまだ落ち着きを取り戻せず「はい」と返事することで精一杯だった。
私の返事を聞くと、「何か」は語り始めた。
「田中裕也さん、あなたは地球で交通事故に遭い、その魂がこちらに運ばれてきました。本来は地球上での姿は失われているのですが、姿を失った状態で目を覚ますとパニックになる方が多いので、お話したい場合は地球で使われた姿を流用して形を作っています。」
ああ、よくネットで読む「転生」というやつか。しかし「何か」が淡々と説明していることや、(パニックになる方が多い)という部分が気になり質問をしてみる。
「質問いいでしょうか?」
「はい、どうぞ」
・交通事故に遭って私は死んだのか?交通事故とはどのようなものだったのか?
・死後の世界が存在していたとは思わなかったのだが、これからどうなるのか?
・パニックになる方が多いとのことだが、転生は多いのか?
両親を交通事故で早くに亡くした為か、不思議なことに地球での生活にはあまり未練がなかった。
「では順番にお答えしますね。」
・間違いなく地球で交通事故に遭って亡くなったこと。コンビニを出てすぐの横断歩道を渡っている最中にトラックに跳ねられたこと。トラックも結構な速度が出ていたので即死だったこと。そのトラックが少し特殊で魂がここに運ばれてきたこと。
特殊なトラック??何それ??という顔をしていると、追加で説明をしてくれた。
「田中裕也さんを跳ねたトラックのことを私たちは「転生便」と呼んでいます。異世界への転生を望む声が多い為なのか、理由は定かではないのですが、跳ねられて死ぬと転生しちゃうトラックなので「転生便」と呼んでいます。死亡時に転生の判定となると、交通事故自体が「無かったこと」として地球上では判断されますので、遺体も残りませんしトラック自体にも損傷が残りません。」
・・・クール便とかチルド便とかは聞くけど「転生便」はちょっとドン引きだな。まあでもここであれこれ言っても何かが変わる訳でもないので、納得した旨を伝える。
「では次をご説明しますね。」
・一般的な死後の世界がどうなのかは担当が違うので答えることが出来ないこと。今回は「転生便」でこちらに送られてきたので特別な扱いになること。転生の場合は新たな肉体を用意して別の世界に降り立ってもらうこと。
・・・ここは特に言うこともないので納得した旨を伝える。
「では最後の説明をしますね。」
・転生者はここ数年で増加傾向にあること。一般的な緩やかな増加であればいいのだが、爆発的な増加とも言え、対応に追われていること。転生される方がよく望まれる「チート能力」は転生者の爆発的な増加により枯渇していること。同様に転生先の世界も枯渇気味であること。
・・・ということは、特別な能力も無しに新しい世界で生きていかないといけないのか。会話は恐らく無理だろうし、その世界の教養もない。無論、生活の糧を稼ぐ技能もないので生きてはいけないんじゃないか?と考え込んでいると、
・転生で降り立つ場所は人口のあまり多くない辺境の村から徒歩で1時間程度の場所にすること。その場所は獣やモンスター、犯罪者が侵入することが出来ない「安全地帯」であること。また生きていく上で必要な水やある程度の食料は「安全地帯」内で確保できるということ。
・生活する上で必要な物資を確保する場所として、「祝福の森」なるものを「安全地帯」と隣接する形で用意すること。この森は特殊な森なので、森の中に何かを建てたりすることは出来ないこと。詳しくは見れば分かるので、まずは見てみてほしいこと。
・生活する上での技能を強化するという意味で2つの職業を同時に使用可能にすること。本来であれば職業は1つしか選択することは出来ない。それを2つ選択可能にすること。ただし職業を2つ使えるとは言っても性能が2倍になる訳ではなく、2つ目の職業は「副職業」という扱いとなり、副職業ごとに設定された「特技」が利用可能になること。
・職業は最初から副職業が選択可能ではなく、成長と共に選択が可能になること。職業の変更は村や町にある教会でお祈りをして職業を変更したいことを念じれば変更が可能。教会が近いにない場合は自作の簡易な教会「祈り台」でも可。職業変更の反映はお祈りの翌朝に反映されるので、その場で変更は不可能であること。職業に関する不明な点はお祈りで不明点を捧げると、その日の夢で回答をすること。
ここまで回答を貰い、それならばまぁなんとか生きていけるかな・・と考えていると
「それでは他の質問が無ければ転生させて頂きます。生活の上で必須になるもので「言語の加護」、職業に関する部分は特殊なので「職業選択の加護」という形でお渡しします。またご自身の状態や詳細を確認する道具、地図機能を有する道具をお渡しします。用意は宜しいでしょうか?」
「何か」の問いに「はい」と答えると・・・
大きな岩らしきものの上で目が覚めた。何時間この格好でここに居たのであろうか。動こうとすると全身が非常に痛い。ゆっくりゆっくりと体を動かしていき、なんとか普通に動くことができるようになった。
「何か」と会話した内容は明確に覚えている。会話の最後に出てきた道具はどこだ?とキョロキョロと周囲を見ると、寝ていた場所のすぐ隣に石板のようなものが2つ置かれていた。
そのうち1枚を手に取ってみる。石板の中央に赤い点が表示され、点のすぐ上に小さな矢印が確認できた。恐らくこれが地図なんろうと、石板を持ったまま大きな岩の上から降り、周囲を歩いてみる。そうすると矢印がいろんな方向にくるくると回るので、自分の向きを示しているのだろうと納得する。しばらく岩の周囲を歩いてみるも、地図に特に変化はない。どの向きになってかだけ分かっても仕方なく、「詳しく見たい」と考えていると、地図が変化し赤い点の周囲の色が変わっていることに気付く。赤い点から少し離れた場所に楕円形のものが確認できる。試しに岩のほうに近づいてみると、石板に表示される赤い点も楕円形に近づいていく。なるほど、なんとかMAPみたいなもんなんだなと納得する。
岩の上に戻り、もう1枚の石板を手に取る。確か自分の状態が分かる道具だと言っていたので、自分の状態が見たいと念じてみる。すると石板に文字が表示される。文字はアルファベットに近いような気もするが、見たことのない文字だ。しかし何故か読める。
名前:ユーヤ・タナカ
年齢:18
LV:-
主職業:無職
特技:-
装備:-
副職業:-
特技:-
その他:言語の加護 職業選択の加護
おう、職業が無職になっている。その影響なのかLVの表記もされていない。これは自宅の警備を長年続けても特に技能は身につかないという地球の文化をそのまま受けついでいるのだろうか。中には特技を持った警備員も居るのだろうが、こちらでは特技は表記なしか。そんなことを考えているとやや日が傾いていることに気が付く。明日も無職のまま過ごす訳にはいかないので、最優先課題として「祈り台」の製作を行うことにした。
岩から降りて周囲を見回し、拳くらいの大きさの石を幾つか集め、平な石や板が見当たらなかったので、地図の石板を代わりに並べた石の上に置く。自分でも「これは台と呼べるのであろうか?」と疑問に感じつつ、早速手を合わせ職業を変更したいと念じる。ただどんな職業があるのか把握出来ていないので、「選ばせて欲しい」と念じる。
祈りを終え、日暮れも近いのでどうするか思案している時、横に置いていた石板の一部が光り点滅していることに気がついた。それは職業の主職業の部分であった。点滅部分を指で触ると、頭の中に情報が流れ込んできた。
戦闘職:見習い戦士、見習い狩人、見習い魔法使い、見習い神官、-
生産職:見習い採取人、見習い薬師、見習い鍛冶師、見習い技師、-
その他:見習い指揮官、無職、-
その他に何故か存在している「無職」の存在に困惑しつつ、まずは食べ物を集めないと死んでしまうので「見習い採取人」を選択することにした。祈り台で「見習い採取人になりたい」と念じると、石板の点滅は消えていた。
その日は特にすることもなく、光源もないのでそのまま寝ることにした。
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