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Golden Detective!


「で、ここに戻ってきたわけだ」


 錐先が狭い部室で龍生と瑛琳を迎えた。

 瑛琳は道中で図書室にこもると、二人から離脱したようだった。


 神崎が尋ねる。

「この部屋って部室なのに誰もいないの?」

「いや、僕がいるじゃないか」

「逆に何でいるの?」

「逆に……だと……」


 龍生が瑛琳から預かったボイスレコーダーを取り出して、

「いいから、これを確認してくれ。部室のパソコンにも保存を頼む」

「あいよ〜」

 錐先がボイスレコーダーをパソコンにつなげる。

 音量を上げて、スピーカーの電源を入れると、音声が流れ始めた。



『5月25日。午後三時。寺井より。

 彼の情報を探ったが、データはすべて消去されており、いさらぎの過去を探る手がかりが完全にない。こんなことはこの仕事をしていて初めてだが、どうやらいさらぎが『記憶』のレベルが4に達していると判明した。それならば、彼の情報をすべ消去したとしても彼の頭の中には入っている。もはや、情報を聞き出すには尋問するほかない。私はこの仕事をおりさしてもらう、尋問などしたくないからな。報酬は指定した口座に振り込んでおくこと。『ピーーーーーーー』』




 神崎は首を振って、

「松崎先生が言った通りなら、学校自体がこの殺人に関与してるはず。今のレコーダーにも何も情報はなかったし……もう、これ以上私たちにできることはないんじゃないかしら……」


 錐先はそれでもパソコンの前で笑って、

「いんやぁ、これは結構重要な情報だと思うけどなぁ」


 龍生も頷く。

「その通りだ。神崎、このレコーダーから読み取れるものがあるはず。何かわかるか?」

「読み取れるって言ったって、『寺井が誰かから依頼を受けていたこと』、『その依頼で探していたデータがいさらぎ先生の頭の中にしか残ってないこと』、『いさらぎ先生の記憶力がすごいこと』くらいじゃないかしら?」

 龍生は区部を二回振って、

「いいや、それ以外にも『寺井は尋問をしたくない』、『寺井は仕事をおりた』、あとは『指定された口座だ』」


 神崎にもそれくらいはわかっていたが、『指定された口座』が分かったという意味だけが理解できなかった。

「ちょっと待ってよ、口座がわかるの?」

「わからなかったか?」

「どこが?」




「これだね」

 と、錐先はパソコンの操作を終えると、ファックスが流れ始めた。

『ピーーーーーーーー』


 ががががががっ、と音がするとファックスから用紙が一枚出てきた。そこには、銀行口座番号と暗証番号が書かれいている。


 神崎は唖然として、

「何で!? どうして口座番号と暗証番号が分かったの!?」



 龍生と錐先は口を揃えて「「いや、わかるだろ」」

「わからないわよ!!」



 龍生が手を顎に当てて説明した。

「ボイスレコーダーに入っていた最後の『ピーーーー」という音はファックスの音だ。あの音を録音してファックスにつなげば、その音とともにファックスから出てきた内容がコピーできてしまう」

 錐先もパソコンの操作をしながら、

「でもなぁ、こんな古典的な方法、ファックスがまだ存在している日本じゃないとできなかったろうね。こんなことより簡単な方法はいくらでもあるのに」



 神崎はそれらを遮るように、

「そんなことより、早くこの口座と番号を警察に届けましょ! これ以上は無理よ!」



 



「それは、つまらない提案ですわね」






 神崎の後ろからえらくおしとやかな声がした。

 花園崎の声だ。

 彼女は部室の入り口で可憐なまま佇んでいる。

 神崎は気配なく現れた彼女に驚くも、つまらない提案という言い方には頭にきた。



「つまらないとか言ってる場合じゃないでしょ! これ以上ただの高校生に何ができるっていうの? 口座番号と暗証番号が分かったところで、私たちには手も足も出せないわよ。警察ならまだしも……それに、学校全体を相手にするつもりなの? あくまでも私たちの通っているこの学校なのよ!? 花園崎さん、あなたなら神崎伝説の恐ろしさも知っているでしょ!?」





「知っていますとも。だから、どうしたというのですか?」




 花園崎のセリフに、神崎は言葉を失った。

「……はぁ? 何でよ? 報復されたらどうするのよ?」

「なら、花園崎家に報復したら、どうなるのか……あなたはわかっていますか?」

 花園伝説。神崎伝説と並ぶ巨大資産伝説。大阪を拠点としたその一族は、確かに報復などしてはならない相手だ。


 でも、リスクがある。それは神崎にもわかる。もし、殴りかかられないからといって殴りかかったら、それこそ喧嘩が始まったしまうだろう。

「正気じゃないわ」

 正直で率直な感想。神崎は彼らを異様に感じていた。




「そんなに恐れる意味がわからないな」


 声に振り返ると龍生の姿。どういう意味だろうか。

「別に報復なんてしてこないさ。そんなことするくらいなら、完全に切り離してなかったことにするはずだ。その方が手っ取り早いからな。報復なんてするのはバカはやってもアホはやらないよ」



 花園崎も続く、

「その通りです。報復などされません。報復をしてしまえばそれはリスクを犯すことになります。すでに犯罪に関わっているとばれているのに、なぜそのようなことをしなければならないのですか? ゆえに、安心ですよ」




 神崎は半分だけ納得した。


 錐先が声を上げる。

「よっし、口座と暗礁番号で銀行をハッキングしたよ。これまでも何度か100万ほどふり込まれているようだね。多分、今回彼に殺人を委託した人物からだと思う」




 龍生が尋ねた。

「誰だ?」



「神崎さん、君はびっくりするかもしれないねぇ……探偵事務所『ゴールデンディテクティブズ』社長、神崎和美。君のおばさんだよ」


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