推理は監視カメラの奥で。
なんか映像で思い浮かべると、テレビの副音声みたいな今回です。
「それより見てくれ。これが鍵のある壁を映したカメラだ。過去の映像を振り返るとわかるが、鍵を取り出したのはいさらぎ先生だ。その前に鍵を取り出した映像はない」
そう言って龍生がモニターを指差した。
神崎は首を傾げて龍生に、
「それはそうでしょう。もっと別の方法があったんだと思うわ」
「どうして?」
「普通はそうでしょ?」
「推理小説の読みすぎじゃないか?」
その時、チャイムの音が鳴った。
「マスターキーを映したカメラからだ。1時28分に鳴っている? そうか、そういうことか」
神崎が会議室の映像を指差して、
「昼休みの時間、会議室は監視カメラに映っていたのよね? 犯人とか映ってないかしら?」
「それもそうだな。確認しよう」
龍生は言葉の次に映像をクリック。
そこには昼休みの会議室の映像だ。いさらぎ先生と桃城が映っている。
『では、桃城くん。最近の状況はどうだい?』
いさらぎ先生がそんなたわいもない会話で始めた面談は、龍生の言う冤罪ビジネスにまったく触れないまま、近況の報告が続いた。
一時の映像から、2分、3分、5分、10分と進む。そして15分が経つ。
その時、会議室の映像に、隣の部屋の窓から松崎が姿を見せた瞬間。途切れた。
映像が砂嵐の状態になり、音声しか聞こえてこない。
『じゃあ、これからのプランについて話そうか。今朝みたいな失敗はないように努めないとね』
その言葉を聞いて、神崎が驚いて口に手を当てた。
しかし、それと同時に音声も途切れる。
そこには砂嵐の映像だけが残った。
「あなたの推理はすごいわね。正直、ここまでとは思ってなかったわ」
神崎がふと落ち着いてそう言うと、
「でも、私だって負けてないわ。今日で推理のやり方を掴んだから、もう大丈夫。あなたには負けない」
龍生は自分の唇をいじりながら、
「おい、今はその話じゃないだろ? いさらぎ先生は今この瞬間にも桃城といさらぎ先生は面談している。さらに、俺の予想ではこの瞬間に殺人が起こっている」
神崎は改めて映像を見た。
「なるほどね、見事に証拠を隠滅しているわけよね。だったら、もうこれ以上見ても仕方ないんじゃ——」
パァアン!
思わず神崎は瞬きをした。龍生はビクッとして椅子から少しだけ飛び上がる。
「思いっきり聞こえてるじゃない」
「そのようだ」
神崎の言葉に龍生は自然と頷いてそう返した。
龍生の目つきが変わる。
「1時28分」
神崎が慌てて「そんな、30分には誰もいなかったんでしょ? 2分じゃ遺体の片付けなんてできない!」
龍生がパソコンの乗った机を軽く叩いて神崎に尋ねる。
「これから何がわかる!」
「何って、人が撃たれた事よ!」
「違う! 複数犯だということだ! 銃を打った人間と、マイクの電源を入れた人物がいる! かなり周到な殺人だぞ」
それから45分まで、音声は聞こえない。30分に鳴るはずの中途半端なチャイムも聞こえなかった。
すると、ミーケが扉を開けていさらぎ先生の遺体を見つけている姿をカメラが映し出し始める。
二人はこう推測した。
おそらく、発砲音は犯人グループのミス。状況を把握しようとした仲間が遠隔操作でマイクの電源を入れた時、たまたま殺人の瞬間であったのだと。
「どうやら会議室前の廊下の映像も細工されていたようだ。1時15分から45分の映像が砂嵐になっている。音声もない。これではここを通った人間がどの部屋に入ったかがわからないな。でも、発砲音がした時間の前後で会議室の前を通った三人の重要参考人を見つけた」
龍生がそう言ってパソコンを指差して、
「まずはこの人。スーツ姿の太った男。こんな人間は見たことがないし、通り抜けるまで10分かかっている」
だが神崎は気がついた。
「でもその人、15分から25分の間に廊下を通り過ぎてるじゃない。どうして容疑者なの?」
龍生は頭を掻いて、
「着太りしているからだ」
神崎は「はぁ?」と疑問符を浮かべた。
龍生は続けて、
「次はこの教師、みたところ英語の先生らしいが新任だな。細身の体に英語のテキストを抱えている。この人は会議室の前を通ったがどの部屋に入ったかわらかないが7分かかっている」
そして最後は、
「そして、三人目が松崎先生だ。これはさっきの証言通りだな。スーツ姿はさっきと同じ、15分に通りかかって35分に会議室の前を抜けた。英語教師と松崎先生は発砲音を聞いているかもしれないな」
神崎は龍生に意見をぶつける。
「待って、この状況じゃどうやっても桃城さんが容疑者から外れないわ。やっぱり、何か関わっているとしか……」
龍生が面倒くさそうに、
「さっきも言ったが、桃城が疑われるようにタンスを移動させているのが犯人だ。おそらく、その犯人は冤罪ビジネスについても知っていて、いさらぎ先生と桃城が二人で落ち合うことも知っていたんだろう」
彼は続けた。
「それに、桃城は1時35分には細工をされていない監視カメラに映っている。目の前で犯行があったならもっと息を切らしていてもおかしくない」
すると神崎派困った顔をして、次の瞬間に妙案が浮かんだ。
「スーツの男と英語教師の詳細をデータベースで検索できないかしら? 桃城さんの時は使ったわよね?」
龍生は首を振って、
「いいや、大人のデータベースはないんだ。この学校の上層部についての情報がやけにブロックされていてな。いわゆる、神崎伝説の防衛網だ」
神崎は『神崎伝説』が気に食わないようで、ムッとすると黙り込んだ。




