カメラから窺うは殺人現場。
みなみなさまさま!
日曜日、楽しみましたか? 社畜の方は体壊さないように共に頑張りましょう。人を愛する気持ちを忘れてはいけませんよ。
詳しく描写するとこうだ。
資料が丁寧に収納された棚が右の壁3分の2ほどを埋めている。残りは隣の部屋に続いて、鍵がかかっているようだ。
ドアの左隣下に小さな通気口がある。
手前の壁には左から4分の1ほど内開きの茶色いドアが右に向かって開くように備え付けられていた。残りの4分の3はクリーム色の壁だが、その前にホワイトボードが置かれている。
左と前の壁には抹茶の色をした壁紙が貼られており、とこかちぐはぐだ。
中央には対面したソファーと机。
会議に使うにはそぐわない部屋は、普段から生徒から先生が相談を受けるときに使用していた。
いさらぎ先生は何かからドアのに足を向けて、仰向けに倒れている。胸には赤い出血だ。
その周囲にたくさんの警官が鑑識を行っていた。
皆、制服の上からビニールの半透明な服や帽子、靴下をまとって、事件現場の維持に努めている。
その会議室の前を映す監視カメラに一人の女性教師が映る。
龍生と神崎は目を見張ると、
「まさかまたか?」
「どういう意味?」
すると龍生がマイクのスイッチを入れた。
『しまったぁ、龍生と神崎が見つからんかった。あいつらどこいったんや?』
玲瓏な声はミーケ。
彼女は下校の瞬間に全校生徒を確認。その時、龍生と神崎の存在がないと気づいたのだ。
すると。警官がミーケに声をかけた。
『こちらです。詳しくお聞かせください』
『はいよ〜』
ミーケがビニールの装備を整え、会議室に招かれてくる。
『板垣警部補。第一発見者です』
『ああ、またミーケくんかい? 君すごいねぇ』
『いや、ほんとなんで私なんですか……』
報告を受けたにこやかな警部補は笑ったままミーケをねぎらう。
一方ミーケはうんざりしていた。
神崎が隣の龍生に尋ねる。
「どうなっているの?」
「ああ、ミーケ先生は事件の第一発見者35回の記録を持つ『歩く死亡フラグ』だ」
「そんな馬鹿な」
「これが本当だからすごい」
事件現場ではミーケによる検証が行われていた。
警部補が指でおでこを掻きながら、
『ミーケくん。君がいさらぎ先生を発見したのは1時45分。間違いないね?』
『はい、チョークを補充しようとしてたらこの部屋に変えがあるって聞いて、閉まっていて鍵がなかったので警備の方にマスターキーを持ってきてもらって開けたんです』
ミーケから流暢な大阪弁が消えている。そこから緊張が伺えた。
そこにもう一人の女性教師がやってくる。
『警部補、目撃者です』
『松崎です』
警官に連れられてメガネをかけて凛としている女性がこちらもまたビニールの装備を整え、会議室に入ってきた。
警部補が今度は指で頬を掻きながら、
『あなたは1時15分にいさらぎ先生を目撃していますね?』
『はい、その時女子生徒を指導していたみたいだったので、よく覚えています』
神崎が龍生に囁く、
「桃城さんのことかしら?」
「おそらくな」
「私たちがいさらぎ先生を見たのは松崎さんの前よね」
警部補は呟いた。
『では、死亡推定時刻はその間だと想定できますね。しかし、扉は全て閉まっています。マスターキーは事務室。そして鍵はここにありました。密室ですね』
続いて、推測を始めた。
『まず、いさらぎ先生は拳銃で銃撃を受ける。そこで肺を貫き呼吸困難、大動脈を損傷、動けずに出血多量で死んだ。扉は鍵がかかっており、その鍵はこの室内にあった。隣の部屋へも逃げられない。その時、通気口から逃げ出すことを思いつく。……と、そんなところか。松崎さん、見た女子生徒の顔はわかりますか?』
『はい』
『なるほど、ではその女子生徒をお呼びください。重要参考人です』
その時、ミーケが叫んだ。
『まさかうちの生徒が犯人とでも言うんですか!』
警部補は頷いて、
『通気口は小さい。子供なら抜けられるし、この密室を作り出せる』
松崎がそれを止めるように、
『ですが、30分に部屋を覗いた時にはいませんしたよ? 隣の用具室から覗いたんです。それに、その時確認しましたが、会議室のドアは閉まっていましたよ?』
その言葉を聞き警部補は悩み始めた。
『どういうことですか? 部屋にいた二人がいなくなり、すでに鍵がかかっていた? またしても難事件か。探偵事務所に頼む羽目になりかねないぞ』
その時『探偵事務所』によっぽど恐ろしいイメージをしたのか警部補が身震いをした。
神崎がそれを見て龍生に尋ねる。
「あんたどう思う? わかった?」
「しらねぇよ。まだそこまでじゃない」
すると警部補は落ち着きを取り戻して、
『とりあえず、その女子生徒を事情聴取しましょう。取り急ぎ連絡を取ってください』
警部補の言葉に龍生はうなだれて、
「アホか、それは違うだろ。桃城は今大変なのにそんな迷惑かけるんじゃねぇ」
言葉の次にはテキストを入力し始めた。
「以下の推理を披露すること、理事長より送信」と言ってエンターを押す。
神崎が首を傾げて、
「一体何したの?」
「見てればわかる」
その時、ミーケの携帯に着信が。
確認すると理事長からメール、棚の後ろを見ろという言葉と龍生が送った推理の内容。
『はぁ?』思わず首を傾げた『なんで私がそんなことを……』
ミーケは一瞬迷ったが仕方なく、
『あの、警部さん。棚の後ろなんかないですか?』
『後ろ?』
『私の予想では棚の後ろがすり減ってあとついてるはずなんです。それは今日の12時までもともと通気口の前にあったから動かしたんやと思うんですけど』
警部補は、はは〜ん、と頷いて納得した。
『なるほど、女子生徒はこの棚を押したと』
『いや、女子生徒一人じゃ押されへんくらいの重さです。だから多分通気口通れる人じゃないと思うんですよ。だから、桃城さんは犯人じゃない』
ミーケの突然の推理に思わず警官たちは息を飲んだ。
自分の言葉に周りが静まり返ったのでつい、
『なんかすんません』
『いやいや、ミーケくん。君が言ったことは正しい。女子生徒は犯人じゃないようだ。とりあえず、明日の放課後にでも事情聴取しよう』
『それと、発砲音を聞いた人はいないんですか? その話は誰もしないですけど』
すると警部補は口を閉じて困った顔に、
『それが誰も聞いたというものがいないんだ。おかしいだろ? 学校は広いからたまたま誰も聞かなかった、ということもあるが。その線は薄いだろう』
ミーケが目を疑問そうに、
『どうしてですか?』
『これはついでだから言っておくが。先日、暴力団が銃を密輸しているのを警察が取り押さえた。しかし、すでに銃は販売されており行方知れず。聞いたことあるか? 『トカレフ』という代物を』
龍生が口に手を当てて頬づえのように体重を乗せていた。
「トカレフ? 貫通に優れていると言われるアレか?」
神崎が首を振って「いいえ、トカレフと呼ばれる銃に特別な貫通性はないわ。あくまで弾の性能よ」
「なぜ詳しい? 東京ではそんなことを教えるのか?」
「小説で読んだわ」
警部補は納得して部屋の観察を進める。
『そのトカレフはともかく、もし音が聞こえていないならば射撃の音を消すサイレンサーを装着していたということになる。しかし、先日の捜査でそんなものは押収されなかった』
そのまま生真面目な標準語で観察を続けた。
『発砲時に発射口のところを何かで覆えば音を小さくすることはできるかもしれないが、部屋に音を消せそうなクッションの類はないし、持って帰ったとしてもそんなものを持っていると監視カメラに映る。
武器を入手できる人間がそんな大きなものを持ち帰るとは思えないし、そもそも何かを覆って発射した威力に見えないんですよね。弾丸は肋骨を貫いて体内に残留したとはいえ、鋭すぎる。
弾丸が体の表面を綺麗に貫いているのはおかしい。さらに、弾道が上からすぎる。胸に対してここまで上から弾が入るものなのか?』
「また桃城に容疑が傾いているな」
困った顔をした龍生の隣で神崎が、
「同じような背の人間が協力してくれれば桃城さんでも棚を押せるんじゃないかしら?」
「いいや、棚の裏に手形がない。二人で押せるほど横が広くないから二人で押せば埃をかぶった裏に手形が残っていてもおかしくないはずだ。それに、あのタンスはかなり重かった記憶がある。二人でも押せないかもしれないぞ」
「肩車で縦に並べばどうかしら?」
「落ち着け! 肩車しても脚力は二倍にならない」
その時、会議室に警官が入ってきて、
『では、ミーケ先生。あなたには第一発見者として事情聴取をお願いします。署までご同行を』
『はい……またですか』
それを聞いた龍生が慌てた。
「しまった、ここで事情聴取してくれないと情報が入らないぞ」
急いでキーボードでテキストを入力。
「理事長より。送信と」
ミーケの携帯が鳴る。
『あっすんません。なになに、その場で事情聴取を受けて仕事に戻れ? なんちゅうメールや、人一人死んでるんやぞ?』
しかし、理事長の権限が思いの外強く、ミーケを身震いさせた。
『あの〜、すんません。警部さん、ここで事情聴取受けるわけにはいきませんか?』
すると警官が飛び跳ねるように、
『何を! 厳正なものですのできちんと署に来ていただかないと!』
『でも仕事がぁ〜』
警部補は呆れたが頷き大阪弁で、
『ええよ、ミーケくんは事情聴取され慣れてるから、ウソつかへんやろうし。特別にここで録ろうか。右隣の教室使ってええから』
『ありがとうございます』
龍生がほっと一息「危なかったな」
神崎は唖然として「そんなのあり?」
しかし、ここは大阪だということを思い出す。
「ごめんなさい、東京じゃありえなくて」
それはご愛嬌。
ショートコントは次回に回すことにします。
次回「さっきから平然と使用している監視カメラだけど、ありえなくね?」




