スイリヤの勘
スイリヤ、本格始動。
ミーケは先ほど撃ち殺した甘栗を廊下に引きずり出す。
その間に生徒たちが帰る準備を始めた。
龍生が神崎に耳打ちする。
「おい、俺の帰る用意しておいてくれ。ちょっと外を見てくる」
「え? ちょっと」
龍生はそのまま先生たちの目を盗んで廊下へと出る。
周囲にはすでに帰る準備を終えて立ち並ぶ生徒たち。
各先生が生徒を数えているところを見ると、決して誰一人学校に残さないつもりらしい。
移動していく生徒たちと誘導する先生に耳を傾ける。
「すみません、理科室に電車の定期券を忘れてきました」
「あちゃ〜、さっさと取りに行ってこい。絶対に寄り道はすんなよ」
「俺もバスケ部の部室に定期券を忘れ物しました」
「俺がついていく、絶対に離れるなよ」
そしてあたりの喧騒の赴く方向を全て確認。そして推測した。
すると、神崎は優秀で他の生徒たちと変わりなく二人分の帰る準備を整えて廊下に飛び出してくる。
「藤代。あんたの荷物なんでこんなに多いの? 詰め込みすぎてプリント折れ曲がってるじゃない。あんたのカバンめちゃくちゃ四角く仕上がっちゃったけど、別にいいわよね?」
「藤代って誰だ?」
「は? 自分でそう名乗ってたでしょ」
「いいや、桃城に名乗ったのは偽名だ。本名は違う、あと龍生と呼べ」
「なによそれ」
ミーケが声をあげて点呼をとる。
「じゃあ、出席番号言ってくから、へんじしいや。1。2。3……」
「じゃあ付いてきてや」点呼に全員が答えると、ミーケが生徒たちの誘導を始める。
高杉が好奇心を持って尋ねる。
「先生、急になんで下校なんですか? 俺野球部あるんすけど」
「それは後で顧問に聞いて、とにかくみんな帰ってもらわなあかんねん。事情は後日説明されるから。おとなしく聞いといてな」
龍生のクラスが玄関までの道のりを順調に進んでいると、龍生が隣の神崎に囁く。
「いいか? 二秒後に右へ逸れろ」
「え? 何?」
「今だ!」
二人は階段の踊り場に出た。
「なにすんのよ!」
「探検だよ」
神崎のクレームをいなして、龍生は階段を降りる。
神崎はミーケの指示に従わないことに少しおびえて、
「待って、どこに行くの? 帰らなくちゃ」
「アホか、このまま帰ったらせっかくの事件がおじゃんやろ」龍生は大阪弁でそういった
「探検って事件を見に行くの? えっ、事件?」
神崎が龍生の事件という言葉に一瞬のときめきを覚える。おびえが一瞬で消えて事件について追求し始める。
「どこかで何かあったの?」
「十中八九な。なんでかわかるか?」
「いいえ、わからないわ」
「スイリヤの勘だ」
二人はそのまま階段を進んだ。




