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『ヌヘコボッテ!』『鬼の軍曹』『唐突の強制下校』

 全然全世界僕は、君を探し始めたよぉ。

 五時間目、世界史。



「授業を始めます。皆さん、今日はちょっと振り返ってアウストラロピテクスあたりからやっていきましょうねぇ。世界史の係り、杉浦と蓮能寺、用意はできましたか?」

 世界史の先生が教卓に立ち、廊下でスタンバッている二人を確認。



 神崎が龍生に尋ねる。

「名前は?」

「甘栗先生」



 甘栗は刈り上げ、ダンディーなひげでグレーのパジャマみたいなスーツがやけに木製の校舎に馴染んでいる。

 そのまま教室を一瞥し、廊下の二人を招き入れた。


「入れ」


 杉浦と蓮能寺が教室に入ってくると、その姿はいわゆる原始時代についての偏見的な姿だ。

 花園崎が「蓮能寺さんかわいぃ〜」と囁くものだから、蓮能寺は少し顔が赤い。



 甘栗がみんなに、

「今から原始時代の戦闘を見てもらう。杉浦には石斧、蓮能寺には石槍を持って戦ってもらうぞ。まずは互いに攻撃」


 杉浦が石斧を空振り。

 蓮能寺も石槍を空振りした。

 甘栗が続ける。

「それを何度か続けた後に、武器が壊れます。石器時代の武器は壊れやすいのです。そこで互いに取っ組み合い」


 二人は軽く組み合う。

 甘栗が続けて、

「すると杉浦くんまさかの転倒。つられて蓮能寺さんも転倒します。その時、互いに頭をぶつけた! 二人は気絶してしまいます」


 二人は言われたまま気絶の振り。そして目覚めると、

「僕たち」

「私たち」

「「ヌヘコボッテル?」」

 龍生が冷静に「いや、ヌヘコボッテはない」

 神崎は首を振って「いや、ヌヘコボッテルって何?」


 高杉が滝松に尋ねる。

「奈良県ではヌヘコボッテルってどんないみや?」

「そんな言葉はない。言うならばシカイッパイイルだ」

 山田が怒って「それ悪口やないか!」

 悪口ではなかろう。


 甘栗が冷静に、

「入れ替わった二人はそのまま彗星がどうのこうので付き合うことになる。それが石器時代だ」

 そんなわけなかろう。


 さすがに突っ込んでしまったがそれは置いておいて、河合が甘栗に尋ねる。

「ミーケ先生とは最近どうなんですか?」

「な、今は授業中だぞ」

「付き合って二ヶ月なんですよね。進展はあったんですか?」


 すると甘栗はしぶしぶ、

「仕方ないな、とは言ってもミーケは俺の家にきてもソファーで寝てるし、あいつの家に言ってもソファーで寝てるし、映画行っても余裕で寝てる。だからデートの時、俺が晩御飯を作ってやってだな……」

 その時、教室のドアのガラスを突き破って甘栗の左こめかみにチョークが命中。

 そのまま貫通し、気絶してしまった。


 龍生がガラスの向こうを見て、

「まさか、中庭を挟んで向こうの教室からチョーク投げたのか? 狙撃の名手だな」

 皆が騒いでいる中、花園崎が教卓で、

「皆さん、委員長権限で今回は自習ということにします」



 その時、扉がノックされた。

「失礼しま〜す」


 やけに可愛らしい声。

 ドアを開けて現れたのは身長150センチほどの金髪でロングヘアーの可憐な少女。


「遅れてごめんなさぁい。国語の時間で〜す」


 見た目は赤と茶色のチェック柄オーバーオール、同じ柄のベレー帽、カレー色の長袖。

 ファッションセンスはともかく、見た目はかなりかわいい。


 龍生が呆れて、

「みずほ先生。国語は六時間目ですよ」

「あら、龍生くん。先日はどうも、授業のプリントを運んでもらって助かったわ。あんな量一人じゃ持てないもの」

「いえいえ、僕は学生帽を渡しただけで、あなたが自分で運んだんですよ?」



 その意味のわからない会話に気を取られながらも、神崎は教卓にある学生帽を見つける。

「なにあれ?」


 みずほが甘栗に近づくと、

「先生、起きてください」

 しかし起きない。

「困ったわねぇ」

 その時。学生帽に気がついた。

「あら、可愛らしいお帽子」そしてかぶる。


 龍生が呆れて、

「また誰か仕込んでやがったな。面倒臭い」


 神崎が一瞬龍生に振り返った時、教卓から轟音が聞こえた。

 みずほが黒板を殴りつけていたのだ。

 しかし、より強調すべきところはみずほは先程より数倍の体格になっていることだ。


 バキバキな筋肉。ゴリゴリの胸元。縦に傷のついた顔面。何より、見た目は女ではなかった。

「お前たち、今から国語の訓練の時間だ! たった今より、お前らは作者の糸を全力で探し! 理解しなければならない! お前らは兵士! 俺は軍曹! わかったら返事ぃ!」


『はい!』クラス中の男たちが怯えて叫ぶ。

「おんな! 貴様らも返事だ!」

 女性陣は可愛らしさを忘れず返事。


 軍曹は納得して授業を始める。

「今日は古典だ! 貴様らは俺の後に続け! 遅れたものから腕立て100回だ

! ありおりはべりいまそかり!」

 皆がそれに続く『ありおりはべりいまそかり!』


「声が小さぁあい!」


 すると、花園崎が不服そうにそっぽを向いている。

 軍曹が近づいた。

「貴様ぁ、立て。何がつまらなくてそんな顔をするぅ? もっと気合を入れんかぁ!」


 花園崎は立ち上がったが、

「嫌です」

「な、なんだと? この俺のいうことが聞けんというのか?」

 花園崎はゆっくり頷く。


 すると軍曹がけたたましい声を上げる。

「ならば腕立て一千回だ! 貴様の根性叩き直してくれる!」

 クラスの皆は軍曹のいうことに少し引き始めていた。


 花園崎の細身で腕立て一千回は無理だ。

 神崎もどうするのだろうと見ていると、花園崎は呟いた。

「体罰……」



「はぁ? 今なんと?」

 花園崎はにっこり笑うと手拍子でリズムをとりながら、

「体罰、体罰、体罰、体罰、体罰、体罰、体罰、体罰」

「やめんかぁ!」

 軍曹が叫ぶが『体罰コール』がクラスで始まる。

 コールは止まらず、それが10秒ほど続いた時、軍曹が涙ぐんだ。


「よっと」


 その時、軍曹の後ろから蓮能寺がそっと近づき、学生帽を取り上げた。

 軍曹は見事に縮んでみずほ先生に戻っていく。

 そのまま床にへたり込んだ。

「あら……一体何をしていたのかしら……」

 花園崎がにっこり笑って、

「ただの悪ふざけです。安心してください」


 みずほ先生は立ち上がる。

「そう、わかったわ。じゃあ授業を始めましょう」


 何事もなかったように授業が始まろうとしたその時、急に中途半端なチャイムが貼り響いた。


『みなさん、今日の授業はここまでです。至急帰る用意をしてください』


 そして中途半端なチャイムで放送を終えた。

 教室に担任のミーケが入ってくる。

「お前らぁ、今日の授業はここまでや〜。さっさと帰る用意しいや」

 唐突の下校、皆が何かあったと感じた。


 高杉が質問する。

「どうして帰れるんですか?」

「お前らがめんどくさいことせぇへんようにするためや。黙ってかえるようしい」


 するとみずほ先生もミーケの横に立ち、

「では、今日の授業はここまでね。みなさん、また明日」

 最後まで可憐である。


 続く。

次回『スイリヤ、本格始動』

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