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絶望を見られても龍生は冷静だ。

龍生の絶望は私の実体験を基にしております。

興味のある人は是非お読みください。

絶望の正体は作品の最後に明かそうと思います。

「桃城さんいる?」


「ちょっと待ってくださいね……すみません、桃城さんは教室にいないみたいですね」


「そう、ありがとう」

 神崎が軽く頭を下げると目の前の女子中学生は会釈をしてその場を去った。


 すると神崎はそのまま考え込んだ。

「おかしいわね、今ならちょうどお昼ご飯のはず。売店もあってそこでご飯を食べているのかもしれないけど、料理の質が高すぎて値段が張る。なら、絶対に家からご飯を持参していると思ったのだけど……」



 桃城は確かにこの教室に入っていったはずだ。教室は間違っていない。

 だが、いないなら他を当たらなければ。



 神崎はすぐさま売店に向かう。

 彼女は学校の地図を全て把握していた為、もしかすると、持参したご飯をそこのフリースペースで食べているかもしれないと思ったからだ。



 廊下を進んで階段を降りる。

 道中、中庭を横切りながら売店までやってきた。

 列ができるその売店をする抜け、フリースペースへ。



 そこは白の丸い机が幾つも点在し、色とりどりの椅子がカラフルで古びた校舎の中にあるものとは思えなかった。

 入り口から生徒たちを一望する。

 だが、やはり桃城は見当たらない。



「いない……」

 神崎は首をかしげた。




 ここに来るまで二分もかからない。それまでの間にすれ違ったことはないだろう。

 ならば別の場所にいるということになる。

 しかし、よくよく考えてみればここはいわゆるマンモス高校。

 生徒の数が尋常ではない。




 しかも、それなりに他クラスとの交流があると考えればわざわざいじめられているクラスにいる必要はないのだ。

 桃城がどこにいるのか、今探すにはあまりにも手間がかかることがなんとなくわかった。

 神崎は中学生の下校時間を見計らって桃城を探すことに決めた。

 


 探偵も楽じゃない。

 そう思ってフリースペースを去ろうと振り返ろうとしたその瞬間、何か違和感のある映像が視界に映り込んだ。




 手をせわしなく動かす男子生徒の姿。

 それは何かをたぐり寄せるような、かき集めるような仕草だ。


 仕草を終えるとその男子生徒はぐったりとして疲れたように大きく息を切らせ、彼の沈んだ瞳は空虚に絶望の壁を見ているようだった。



 その時気がつく。

「龍生……」

 男子生徒が龍生であることに気がついた。


 反対に彼の死んだような目が神崎を捉える時には、再び瞳に生気が戻る。


 みられたなぁ〜これは。


 そう思うと、龍生が少し気まずそうに手元のペンとノートを学ランのポケットにしまいこんだ。

 するとうんざりした顔を一瞬だけ浮かべ、見事にその感情を手放す。



 龍生が神崎に手招きをした。



 神崎が龍生の隣に座ると、

「何してたの? 気持ち悪かったけど?」


「気持ち悪くて悪かったな。きにするな、私用だ私用。さっきまで部活のメンバーと落ち合っていたんだよ」


「でもあなた一人じゃない」


「他は帰ったよ」



 ならなぜあなたも帰らないのか?


 そんな疑問を訊く前に龍生からこんなことを言われた。


「おそらく桃城を探してここまで来たんだろうが、どうやらここにはいないようだな」



 神崎は隣で足を休めながら、

「そうなのよね、私が考えるに彼女は彼女を認めてくれる所にいると思うんだけど、昼休みの間に探し出すのは無理ね」



 龍生がキョトンとして「なんでだ?」



 神崎は慌てて訊き返す。

「はぁ? なんでいつもそう私の思うところを疑問視するわけ?」


「疑問視じゃない。完全に正面からおかしいと言っているんだ」


「余計意味がわからないわよ」



 すると龍生が指を一つ立てて「じゃあ、今から状況を整理しよう」


「まず初めに、今日神崎が出会った三人に、桃城の居場所を知っている人間がいます。さてこのうち誰でしょう? ミーケ先生、英語の桐原先生、給食のおばちゃん?」


 神崎が少し考えて「給食のおばちゃんかしら?」



 龍生は頷いた。

「理由は?」

「ご好意で桃城さんにご飯を提供している可能性があるから?」

「証拠は?」



 神崎は少し考える。ヒントは『桃城のエプロンに付着した汚れ』だ。


「桃城さんが桃城さんのロッカーにエプロンが入っていたわ。きっと給食のおばちゃんはこの学校で料理を教えているんじゃないかしら? そのよしみでだと思うわ」


 龍生が満足げに「その通りだ」そして続ける。




「桃城は経済的負担がある。だから家からご飯を持参している。ようはそれをどこで食っているかだと、神崎はそう考えたわけだ。しかし、本当に経済的負担がある人間が、必ずしもご飯を持参できるとは限らない。

だから給食のおばちゃんがまかない飯を振舞っている、というわけだ。給食のおばちゃんが料理を教えているのは本当だし、おそらく家庭科室にいると考えていいだろう」



 龍生はフリースペースの献立カレンダーを指差した。

「そこで、俺の予想だと昨日の売店日替わりメニューはカレースープがラインナップされているはずだ」

 もちろん、昨日のメニューにはカレースープが入っている。


「どうしてわかったの?」神崎が尋ねた。


「桐原先生が言っていたろ、カレースープこぼしたって。給食のおばちゃんの調理服にも時間が経ったシミがついていた。見た感じだと恐らく同じものだ。だからおそらくカレースープ」


「でも、今までの説明だと、桃城さんがそれを食べたって証拠にはならないんじゃないかしら?」



「いいや、証拠ならある。

桃城は上履きが汚れいていたが、主に底から側面にかけて。あれは、汁物をこぼして、それを踏んだということだ。上履きが白だからな。

女の子の上履きが洗ってないだけであそこまで汚れるとは思えない。給食のおばちゃんが裾を汚したのと同じ理由だと思うんだよ。

あくまで想像の域は出ないけれどな」



 龍生がそう言うと椅子にふんぞり返って、

「そこを踏まえると桃城は家庭科室にいる。ま、どのみち桃城と話をするのは放課後でも問題ないだろう。別に逃げるわけじゃないし」


「私は行ってくるわ。今すぐ話を訊きたいし」神崎がそう返したときであった。



「それはどうかしら?」



 龍生の後ろからおしとやかな声が聞こえてくる。

 二人が振り返るとそこには花園崎がいた。


 龍生が彼女に文句をつける。

ざき、お前と一緒にいると人目について仕方ないんだが」


 言った言葉通り、花園崎はそのおしとやかな風貌で周りの視線を釘付けにしていた。


 そんなことを気にする様子もなく花園崎は続ける。

「桃城さんは先ほど早退届を提出しておりましたわ。放課後になればおそらく彼女は家にいると思います」


「まったく、毎回どこからそんな情報を集めてくる?」


「ちなみに、今日、料理研究部はお休みです。家庭科室も見てきましたが施錠されていましたわ」


「なるほど、集まりに参加しないと思ったらそういうことか。それともまた親父に事後報告でもしてたのか?」



 龍生の意地悪な顔を見て、花園崎が顔に影を落としてにこやかに、

「あなたがさっさと私と付き合ってくれればそんなことしなくてもいいんですけれどね」


 それを聞いて神崎が驚いて口をふさぐ。

 龍生が悪態をつき、花園崎がしっとり笑った。

「余計なことを」

「あなたがいけないんですよ」


 すると龍生が腕を組んで天井を見上げる。

 数秒間考えると、椅子から飛び上がった。


「よし。なら今から探すか」


 そのままの勢いで龍生は廊下へと駆けていった。


龍生の絶望が何かわかる人はどれだけいるのでしょう?

私が理解されなかったもので、わかった人はメールください。


次回、『絶対的なピンポンダッシュ!』

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