表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/41

少女は残酷な推理にすら達成感を感じてしまった……。

推理できたことに快感を感じるのは探偵のサガなのか、それともただの傲慢なのか。あなたはどっちだと思いますか?


sp 今回、桃城に関しての身体的情報が新たに出てまいりますが、構成を考えての配慮ですのでご了承くださいね。

 春、この季節にしては照りつける太陽は、ほのかに生徒たちの体温をあげていた。


 軽い温風が吹き渡り、鳩が舞う。

 そう、焦げ付いた中庭の上を……。


「あれはなんだったの……? この世の光景とは思えないわ……! おばちゃんがいきなり中庭全域を大爆撃したのよ! よく私生きてたわよ本当!」


「しらんだろ、ああいうのがここでのルールだよ」


 神崎が騒いでいてが、龍生は平然と隣を歩いて廊下を進みとあるところへと向かう。


 体育のあと、すぐさま着替えて落ち合ったこの二人は、昼休みの間にまた桃城に会いに行こうとしていた。

 神崎が拳を腰に当てて龍生の顔を覗き込む。


「だいたい、桃城さんになんで会いに行っているのかも忘れるくらい大変だったのよ? ちょっと整理しましょう」


 するとメモとペンを取り出して、

「まず、桃城さんが冤罪をのちの和解金を目当てにふっかけた。次に、桃城さんはいじめられていた。彼女がそのことで冤罪に加担していたんなら、お金をカツアゲでもされていたのかしら? 三つ目は、あなたのあの言葉よ。『同級生』って言っていたわよね? 何か確認していたんじゃないの?」


 龍生は歩きながら頬を掻いて。

「あれはただの振りだ。桃城が冤罪をふっかけたのが事実なら原因があるはずだ。『同級生』という言葉を聞いて桃城がとった行動は『左上を見る』だ。このことより、彼女がその時点で誰かを思い浮かべたことがわかる」


 神崎が軽く胸を張る。

「知っているわ、カウンセリングでよく使う診断方法ね」


 龍生は続けた。

「しかしだ、それはあくまでイメージ。カツアゲをされていたのなら、その瞬間の不安を思い出すはず。するとその時は『右下を見る』という行動になるはずだ。よってカツアゲをされてはいない」


 すると龍生は立ち止まり、神崎の目に視線を合わせた。


「これより何がわかる?」


 彼女にはわかった。

 こいつは今、私を試している、と。


 それでなくとも神崎は龍生にやられっぱなしだ。

 なんとしてでも取り返してやる。そう誓った。


「カツアゲじゃないんだったら、家庭の事情かしら? 借金で首が回らないとか……」


 龍生が唇をすぼめた。

 やけに表情豊かな彼を見てわかる。

 まだ試している、と。


 神崎は続けた。

「それとも、よっぽど浪費家とか? ここは私学だからお金を使う周りに合わせようと思ったら大変よ?」


 龍生が眉をあげた。

 だが、同時に小鼻を膨らませている。

 バカにしているのだ。


 このガキゃあ……。


 そう思っていたが神崎は思い直した。今まで言ったことは全て想像。推測ではない。

 神崎はため息をついた。少し冷静になろう。そう思う。


 さらに、彼女は目を瞑った。集中をしたのだ。

(何かなかったかしら? 思い出して、あの時の情景を……!)


 神崎はここに来て桃城の姿を思い描く。

 頭に浮かんだのは、『あかぎれた手』、『汚れた上履き』、そして『疲れ切った目尻』……。


 神崎は目を開けるとこう言葉を連ねた。


「彼女は手があかぎれていた。それは家事をよくやっている証拠。もしくは水仕事。飲食店でバイトをしているかもしれない。汚れていた上履きは彼女が忙しくて手入れをしていない事を意味している。つまり、上履きを手入れするという家事を放っておく彼女はアルバイトをしている。目尻からもそれはわかるわ。よって、学業との両立に疲れている」



 やった、これで間違いない。

 神崎は自分のやってのけたことに達成感を感じていた。



 しかし、龍生はため息をついて、

「はぁ、なんでそんなに生き生きとしていられる?」



 神崎はその言葉が心に突き刺さった。


 この私立高校に通う人間は通常、アルバイトをしない。なぜなら禁止されているからだ。

 生徒が社会に出て問題を起こせば高校の落ち度になる。


 しかし、そんなかアルバイトを許可してもらうことができる場合がる。それは卒業が決まった三年生。あとは貧しい家庭の人間だ。

 神崎はこの高校に編入する前にそのことは頭に入れていた。


 しかしそんな大変な状況を推測したのにも関わらず、達成感に浸っている。

 それは彼女の正義感が許さない。

 すぐさま口元を引き締めた。


 龍生がうなだれる。

「ま、そこまでできるのならもう自分でやれよ。俺は今の聞いてちょっと疲れたわ」

 そう言って龍生は来た道を戻り始めた。


 神崎は思わず手を伸ばす。

「ちょ、待ってよ!」

「しらん、疲れた」

「そんな……」

 神崎はかなり傷心しながらも、桃城の元へと向かった。


推理小説になってきたでしょうか? また読んでくださいね。


次回『スイリヤはわかってもらえるだろうか?』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ