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嘘つき四つウサギ  作者: 千羽稲穂
第一章 兄ウサギ
24/29

家族だから。

 部屋に暗幕がおろされているようだ。だけど、暗幕の奥にいる彼のことはよく見える。裏の幕には慣れっこだったから。


 彼は張り詰めた糸をほどくように表情をゆるめた。途端に香るのは嘘くさい煙草の香りだ。漂う異様さを際立たせていく。

 彼の放つ雰囲気は、異質としか言いようがないぐらい無臭で薄い。それなのに私に近づいてくる時だけは誰かの何かを纏っていた。それは兄であったり、見ず知らずの誰かであったり、つまるところ私が知らない人物の皮を被る。おそらく私の知らないどこかしらで成り代わった人物の雰囲気を纏っていたのかもしれない。だからか知らないが歪な雰囲気を常に感じていた。


 今はありのままとでもいうように無機質さに包まれている。


「俺が久藤だってこと、いつから気づいてました?」

「だんだん、かな。結構違和感があったから」


 久藤君は手にはめた黒の皮手袋を外す。右手、左手、両方外して、ぽいっとごみを捨てるかのごとく部屋に投げ捨てた。あらわになった昔のやんちゃした手の傷々は本物の兄の傷に似ている。今度はコキコキと関節を鳴らし始める。すると形がもとの久藤君の平べったい手のひらに変わっていく。薄く、しめっぽい見覚えのある手のひらになっていった。


「君は知りすぎてたし」久藤君が久藤君になるのを見て、ごくりと唾をのんだ。「兄が『ナリカワリ』にあったのは兄がいなくなった時点で感じていた。ねぇ、久藤君。あなたは兄になるために、空き巣を繰り返していた。でも、技術までは、コピー出来なかった」

「隣の部屋にある赤い点と青い点ですね。今回あんた達をはめるのに邉という駒は便利だったなあ。見事お兄さんに対しての焦りを植え付けてくれたから」

「そうして私と兄を徹底的に離した」


 久藤君は目の前で腕を回す。ぶん、ぶん、と二周して、ぐっと伸びをする。するとさっきよりぐんと体が大きくなったように見えた。体が大きく見えるわけではない。本当に大きくなったのだ。見上げてしまうほどの大きさの久藤君の体。腹と背中の間が相変わらず平べったい。筋肉の尽き方は並みだ。これが本物の彼の体。


「その後は?」と、久藤君が促し、顔にはりついたゴム状の何かをとり顎や顔の至る所の関節をいじった。

 まじまじと見惚れていると、すぐに久藤君の顔が浮き出てきて、こちらを凝視する。慌てて「決定的だったのは希星の念写。そこにあなたが写ってた」

「まさか」

「そのまさか。姿は兄だったけどね。でも、おかしかった。私の兄はね、尾行が下手で私にいつもまかれていたから。その兄が私の背後にいる。私は気づいてない。じゃあ、この人は一体誰? ってなるけど、私はすぐにあなただってわかった」


 大きな体を見上げる。彼は立ちはだかる。私が見上げている光景に、久藤君はにんまりと満足げに笑う。歩み寄り私の髪をひとふさ手にする。するりと細い髪が彼の手の中で滑っていく。艶めく私の髪を気に入っているのか、また手にかける。私は横目にそれを見つめる。細い髪一本一本が愛でられる。


 ポーカーフェイスを崩さずに、そのままで続けるしかない。この場で圧倒的有利なのは彼だ。


「だってデートの時私のいろいろを知ってたもの。まるでつけていたみたいに。いつも私の後ろを尾行していたみたいに。なんの気配もなく、無臭だった。そして思い出した。あなたはデートの最中からずっと何の匂いもしていなかったことを」そこで脳裏に糸がはられた。昔々の大昔の記憶がこちらに向かってくる。白く細い糸が煌めく。


 いや、違う。もっと昔から、彼の雰囲気を知っている。


「いいや、違う。もしかして、あなたは私の後ろをつけていたんじゃない? ずっと何年も。十年も前から?」


 髪から、今度は頬に彼は手をかける。平たくしめっぽい手、でもどこか温もりがある。腕が伸びて、私の体を抱きしめる。どんどん相手のペースに持っていかれる。するすると、体を倒されて私の顔の横に手を付ける。大きな腕の塔が一本立つ。塔の先端を見るとさきほどの兄さんの顔はどこにもない。

 久藤君、その人の顔が間近に見てとれた。邉にはかなわないが、男らしい顔だ。真剣な光を目に宿して見つめる。私の瞳の奥底にある感情を奪ってくる。


「久藤君の狙いはなに?」


 ほうっと吐息が耳元にかかる。


「兄さんなの?」


 不機嫌そうに、しかし目が潤んでいる。


「それなら私のことをつけてたのはなんで?」


 私の声が震える。目が熱くなる。


「ねぇ、兄さんはどこ?」


「殺したの?」


 返答を待つ、一つ一つの間が心にしみていく。冷たい床が心を突き刺す。

 早く、早く教えてほしい。



「兄さんを返して」



 ポケットの中の種を握ろうとするが、私の手を久藤君は握って止める。私のすることも、したいこともさせない腹積もりだろう。動かないで、なんて妙に色っぽい声が私の鼓膜を揺らす。


「正直、俺はあんたと接触する気はなかったんですよ」


 にっこりとほほ笑む久藤君の笑みはこれまであってきた人の笑み以上にゾッとするものがあった。背筋に冷たい汗がにじむ。五月雨にうたれたように体が凍り付いていく。


 五月雨の中の自分を浮かべた。すると隣には、終夜がいた。彼の温もりある小さな手が私を握り返してくれた。今はそのぬくもりを目の前の男に吸い取られていっている。


「あなたの兄も殺すつもり(・・・)だった」


 零れだす言葉に返答しようと喉の奥から声を上げようとするが、久藤君は有無を言わさず言葉をつなげていく。

「狙いは、」と。

 頭の中で巻き散らかされた情報紙に描かれた点と点に彼は言葉で線を繋げていく。


「俺がナリカワリとして受けた依頼の狙いは、あなた達兄弟姉妹だったんです。だから何年も何年も『久藤』として生きてきた。それなのに、全くどいつもこいつも……」


 久藤君の手が強く強く握られる。私の手が軋みだす。力の凄みに私は全く抵抗できない。兄が生きている事実を聞いてから、更に形成は不利になっている。一方で死んでいなくてよかったと、私はほっとしている。その表情を見せようとすると、久藤君はよりどう猛な目を向けてくる。獣が狩りをする時に光らせる一瞬の殺気を発する。すぐに自分の表情を隠す。


「あなたの弟は気づいた。あの雨上がりの日、お兄さんに殴られたグラウンドで。あの時あなたの弟は『お前は久藤じゃない』と言い寄ってきた。お姉さん覚えてますか? あなたが俺に毒を仕込んだ日のこと。俺が『久藤』にナリカワってあなたと初めて出会ったのがあの日だった」


 私が屋上から邉を呼んだ日のことを思い出した。あの時久藤君はグラウンドに出来た大きな水たまりに邉を沈めた。

 

 その時水たまりに写る彼は果たして彼だったのだろうか。


 あの時、私とほんの少ししか接点を持っていなかった彼とその前の彼を比べるなんてできなかった。あるいは寸分の狂いもなく彼の行動や仕草が久藤のそれと同じだったから、気づかなかったのかもしれない。いずれにしても当時の私の感覚では彼が元の久藤だと気づくのは不可能だった。


「やっぱり昔から、あなたは『久藤』君だったのね」


 久藤君がかわいそうに思えてならなかった。あの時から、この人は久藤に成り代わっていた。裏の人間だ。自由がない生活だったに違いない。

「俺を憐れんでる? それはお門違いですよ。お姉さん」と、言ったと思えば握った手を離し再び私の髪で遊び始めた。「俺はそれなりに楽しかった。知らぬ間に成り代わったのを知らずにいつも通りに接してくる久藤の友達にも親にも、心の中であざ笑って、一歩上手にいたことが、なによりも楽しかった。元の久藤は死んでいるのに。ナリカワリは完璧に行われた」


「でも、邉は気づいた。ほんの少ししか接していなかったのに。その上今回は『アリクイ』の子分や私にもナリカワリなのがバレた」


「やめてくださいよ。今回は時間がなかったんだ。本来は寸分たがわずその人になれる自信があるんですよ」


 私の髪から、久藤君はぱっと手を離す。ほどけていく髪が薄闇にまぎれていく。その間に、久藤君の歩んだ人生を思い描く。


 もしかしたら、売られた子供だったのかもしれない。終夜同様何か裏に関わるものを見てしまったり、巻き込まれたりして、そうして『ナリカワリ』になるようにしつけられて、私の家族の元へ来た。久藤君にはどうしようもできない大きな力が働いて、依頼という命令をされ、小さいころから監視させられていた。


「それなのに、俺としたことがあなたに接触してしまった。いや、そうじゃない。あなたがあんまりに……」


 困ったように眉をしかめて、私に真正面から向き合う。


「愛おしかったから、つい助けてしまったんです」


 ぺろり、と久藤君は私の唇を舐めた。赤い血を飲み込んだ、汚れ切った私の唇を彼はお構いなしになめる。




 あの日の赤を飲もうとしているのだろうか。




 久藤君の背後に、暗闇に誘う女の子がいた。パーカーを着ている。髪はセミロングよりも少し長め。やんわりと目を細めて、こっちにおいで、と女の子を連れこんだ。


 ああ、その子は血に染まる前の私だ。


 女の子を連れ込んで、私はポケットに手を入れていた種を育てた。そして大きく鋭く尖ったナイフに姿を変化させて握りしめた。その時の私の決心は揺るがなかった。

 路地裏でこの子を殺めるんだ、と。


 正面を見据えると連れ込む女の子の整った顔つきがよく見えた。鼻筋が通っていて、目は大きく、まつ毛は長い。化粧も最近の流行りを体現させている。それでいて儚げで可愛げがある少女だった。白く細かいレースがあしらわれている清純なワンピースを着ていた。

 見目麗しい、邉にお似合いの子だ。


「お姉さん、どうしたんです? こんなところに呼び出して」


 ひとつひとつの所作に有無と言わさない美しさを感じた。だがこの見た目に反して、この女の子は邉のストーカーだった。私の家族に近づき、外堀から埋めて邉に突撃する。そんな強情な女の子だ。


 こんな子でも邉は丁寧に扱ってしまう優しさがあることを私は知っていた。邉は押しが弱いから、心のどこかでこの子なら邉と上手くいくだろうとも確信めいたものも持っていた。


 デートで彼女が邉の手を引いて歩いていく。いつもくっついていた邉は私にくっつくでもなく彼女にくっついていく。ぽっかりと空いている私の隣には誰もいない。

 そんな光景が容易に浮かぶ。そして、容易に浮かぶからこそ心の中が浮足立つ。


「もしかして私が知っているからですか?」


 彼女はそこで秘密に触れた。ちっぽけで繊細な寂しくて死んでしまうウサギの秘密を露骨にあざ笑い、勝ったとでもいったような笑みを含ませる。獲物を狩る狼みたいに彼女の瞳はギラギラと光っていた。


 兄さんの手袋も、この子の瞳も、私は苦手だった。私の知らない強さがあるから。私の秘密を知っているから。


「知っているって何を?」とぼけて彼女を許そうとした。ここで彼女が言わなければ、見逃してあげるつもりだった。

 だけど彼女は告げた。




「家族愛なんかじゃない。お姉さんは邉君を男性として愛しているんでしょ?」




「あんたは、邉のことが好きなんでしょ」

 あの日殺した女の子の声と耳元に囁いた久藤君の空しい声色が重なる。すりよってくる久藤君の顔は真顔でにこりともしていない。

 そこですっと、久藤君は顔を手を私の首に巻き付けた。冷たい水に触れている感触が首にあてられる。力を入れたらすぐにでも絞め殺されてしまいそうだ。


「言ったじゃないですか。あの時奪うって」


 真綿で首を絞めつけられているような柔らかさで久藤君はのしかかっていた。


「俺は決めた。あんたを助けてしまった日から上からの依頼を放り投げてでもあなたを手に入れようって。だから、監視を無視してあんたの『家族』と言う重しを全て奪うことにした」


 デートを持ち掛けるための交渉手段として私の耳元で久藤君は囁いた。「あんたが邉を好きなことを知っている」と。その時点でこの人は覚悟を決めていた。

 久藤君の言う依頼主がどれほど大きいか、私には分からないけれど、何十年も監視してきたことを思うと言わないでも得体の知れない巨大さは理解できる。


「最初はお兄さん、次は希星ちゃん、そして邉。そうしたら、あんたも楽になる。あんたが背負う何かもから解放され、俺のもとにきてくれる。あんたの気持ちも晴れる。だから計画をたてたんです」


 居酒屋で、ふられた兄さんが私に言った。「まだ好きか」と。私はこくんと頷いてしまった。兄さんは、私が誰を好きか、昔から分かっていた。私にちょろちょろとついてくる邉を見て私が家族以上の何かを彼に感じていることに、にぶちんなのに察していた。

 そうだ、ずっと前に兄さんは気づいていた。でも、そっとしておいてくれた。兄さんも兄さんで、女運がないからお互い様とでも思っていたのかもしれない。早くふっきれたらいいな、と私のことを分かっているみたいに頭をがしがしと撫でられた。


「黒木さんに情報を渡して脅しをかけた。名簿を送りつけてやってね。俺の知っているこの街の裏事情全てさらけ出して、あなたのことを狙っていると言ってやった。あなたの命は俺の掌の上にあるんだと知らしめた。わざわざ名簿から『アリクイ』やお兄さんの名前まで消してね。

 あの人はあんたのことになると節操がないんですよ。あんたを救うためにお兄さんやあんたを騙すことを了承した」


 黒木さんだってそうだ。黒木さんはあの日から、私のことを守ってくれる。そんな彼の感情に気づきながら私はあの人を騙した。後ろから抱き着いて「私の好きな人は一人だけ」なんて、当然のことを告げた。

 邉しか、私は好きになったことなんてない。そのために人を殺してしまうほどに、私は邉のことが好きだった。この感情を止めることなんてできなかった。


「あとはお兄さんに化けて、あんたの家庭を内側から壊す算段だった。お兄さんとあんたを引きはがすために以前受けた依頼の『アリクイ』のナリカワリの地位も利用して、いろいろやってゆさぶりをかけた。

 そうだ。あんたは一つ間違ってる。俺は下手な空き巣なんてやっていません。やったのは、邉に『アリクイ』にいた下手な空き巣をした男の子の情報を流しただけです。

 他には、お兄さんの恩師を自殺に見せかけて殺すとか。

 ああ、あの時は傑作だった」


 台風がこの街を襲った日には水に滴る邉を見て胸の鼓動を抑えられなかった。何度隠したって、何度思ったって、この感情が成就することはないのに思い続けてしまう。

 罪な私の秘め事は、きっと誰にも分ってはもらえない。


「どこにでもいるホームレスだと思っていたんだけど、お兄さんにとってはその人が裏のいろはを教えてもらった恩師だったんすよね。『アリクイ』の中でもそいつにイラついていた連中がいたんで方法を教えて自殺に追い込ませた。案の定、お兄さんは血相を変えて『アリクイ』の連中を探した。

 あとは撒き餌をした。あんたが見つけたあの男の子、あれ。

 そしてお兄さんにお姉さんは間違った情報を持たせて、仲たがいをさせた。後は分かるでしょう。

 黒木が俺の手の内だというのなら。虐待の子供がいる場所、時間帯をいじらせて、君たちを離し、あんたは兄に再び間違った情報を持たせた。『アリクイ』のボス、俺が有利になるそんな情報を。お兄さんを俺のところまで来させた。そこで入れ替わり、長期出張の後久々に出てきた俺を見て、兄だと認識する。

 メールに『しばらく返ってこない』としたのは、しばらく時間を置いた方がお兄さんの記憶をおぼろげにできるから」


 でも、どうしてだろうか。


「お姉さん、それなのに俺はまだお兄さんを殺していない。確かに上にとってはお兄さんは有用で殺したくないとか、俺が死なないようにする交渉手段にもなるですが、もう今の俺にとってはどうでもいい。どうしてだと思います?」


 私はあの女の子を殺した日、邉への想いとは裏腹なことを叫んだ。


「あんたと交渉しようと思ってたんですよ」


 ぎゅっと目をつぶる。このまま死んでしまってもいいかもしれないと心底感じていた。この想いが成就しないのなら、あの日あのまま死んでよかった。黒木さんなんかについていかなければよかった。

 それなのに、私は今の今まで生きている。黒木さんも利用して、この思いもひた隠しにして、周りを巻き込んだ。


「あんたの兄を返してあげます。そのかわりにお姉さん……


 俺のものになってください」


 暗い闇に沈んだ瞼の裏に写る、白いレースのワンピースが赤く沈んでいく光景。その赤は美しかった。ふわふわ浮かんだドレスに私はふっと微笑みを零して、冷たくなった頬に一筋の粒が伝った。枯れたのどが先ほどの熱を思い出させる。あの言葉を噛みしめる。頭の中で反芻する。

 白いワンピースの、あの少女に向かって叫んだあの言葉を。



「邉は、家族だ」



 家族以上の感情を持ちながら、私は家族と言うくくりに固執した。


 それに何の意味があるのだろうか。

 私の意地なんだろうか。


 自然とでてきた言葉がそれで、私は彼女を殺して、「家族だから」と叫んだ。


 なぜ殺したのだろうか。

 家族だからか。

 邉のストーカーだからか。

 彼女に嫉妬したからか。

 私の秘密を知ったからか。

 秘密をばらされて家族が壊れることを恐れたからか。


 しかしあの言葉の意味はなんだったのだろう。

 私はなんであの時あんなふうに叫んでしまったのだ。


 家族って、何だろう。


 私には理解できない。

 それなのに、それなのに……




 家族との日々がこんなに愛おしいのはずるい。




 路地裏のような暗闇に誰かが忍び寄ってくる。コツコツと靴の音が近くなってくる。ぎゅっと目をつむったのに光が遮ってくる。漂う灯りがゆらりゆらりと舞う。それは一匹の蝶のように踊り、舞い、ひらひらと私の袂へ帰ってくる。そんな光はいらないよ、なんて言ったとしても、簡単には離れてくれなさそうだ。私の足元へたどりつく。


 目を開く。久藤君の奥に見える扉が、ぎぃ、と開くところだった。


「久藤君、その交渉」私はお得意の笑みを、ポーカーフェイスを、決めて私の首を掴んだ久藤君の腕をしっかりと両手で握った。



「絶対、無理」



 久藤君の背後の戸が開かれる。まばゆい光が目をさし、私は目を細める。久藤君の表情にあからさまな驚愕が浮かんだ。だんだん目が慣れてくると、そこに立っている人が認識できた。



 希星が念写した、あの狼目の男が立っていた。

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