第一章 予兆05
そこで僕は一つ、イメージが浮かんだ。
ミステリーツアー。自分の死期を知らせる死に花。不思議とどれが自分の寿命を教える花か分かってしまう。人間は強欲な生き物。何とか自分の寿命を引き延ばそうと主人公は目論む。
それは自分だけの野望と計画を企てて行くが、そのツワーに参加した誰もが。同じ考えで花をすり替えて行く。結局、元の木阿弥。変えられない運命。
我ながらいい案だと思う。
それを話す自分と、苗代を想像し、僕は大きくかぶりを振る。
ばからしい。まんまじゃないか。
独り言ちり、僕は先を急ぐ。
額に汗が滲む。
寺院の前までやって来た僕ははたと重大なことに気が付き、足を止めてしまう。
まるで図ったかのようにポケットの中で、携帯が唸りをあげる。
ディスプレイの表示を見て、僕は苦笑で電話に出る。
「もうそろそろつく頃だと思うけど、今どこら辺?」
「大当たりです」
「おお早いね。優秀優秀。で当然優秀な僕ちゃんの部下なら、花と線香ぐらいは用意して行ったよね」
言われて初めて気が付いた振りをして、謝る。
一呼吸置いた苗代の声が返って来た。
「ダメだよ~僕ちゃんの大事な人なんだから、そのくらいは用意して行かなくちゃ」
そんなことを言うなら自分で来い。
ムッとした僕はもう一度、スイマセンと謝る。
「今、自分で来ればいいのにって思った? 思ったよね。声がムッとしているもん。僕ちゃんが、めちゃくちゃ忙しいの知っちゃっているよね。その為の童貞君だよね」
ああ諄いし、うざい。
「そうですね。大変申し訳ありませんでした」
「分かってくれればいいんだ。僕ちゃん寛大だから。あと花と線香はね、寺に売っていると思うよ。イッツアビジネス。坊さんもバカじゃないだろうしね」
そう言われ、僕は辺りを見回す。
「ありました」
「じゃあ頼んだね」
「あの、墓の位置は」
僕の苛立ちはピークに達してしまっていた。声を荒げる僕をまるで楽しむかのように、苗代はゆっくりとした口調で答える。
「寺に入ってすぐの坂を上って一番奥の列。左奥側にあるから行けばすぐに分かると思うよ。丁寧にご冥福をお祈りして来てね」
「ご冥福って……」
僕の言葉を聞くこともなく、苗代の電話は切れた。
魚住雅代って何者だよ。
まだ真新しい花が活けてあり、僕は墓石の裏側を覗き込む。
享年46歳。亡くなられた日付は10年ほど前の5月と刻まれていた。
苗代とこの人物の繋がりを模索してみたが、まるで見当がつかず、くだらないことと、僕は適当に手を合わせるとその墓の前を離れる。




