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レッドアイ  作者: kikuna
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第四章 記憶05

 数回に分けて見せられた事象に、僕は顔を顰め、何のためにと呟く。


 「研究の為です」

 優奈の答えに、僕は首を振る。

 「人体実験って訳だ」

 やるせない気持ちだった。

 しかし、嘘などそう長く突き通せるものじゃない。事実を知るのにそう時間は要さなかった。

 

 母親は一命を取り留め、その引き換えに一人、子を失った。それが瑠羅。

 長時間の手術を終え、病室に戻った母親を見つめながら、父親は涙を流し、兵藤に頭を下げる。

 兵藤は勝ち誇ったように、廊下を戻って行った。


 試験管に入れられた胎児。

 開くドアの方を見て、兵藤は頬を緩ませる。

 「一つしかもらえなかったけど、もう一つは生まれてからでも遅くはない」

 不気味な笑顔を見せる兵藤に、看護師が戸惑いながら微笑み返した。

 「どうして、きみたち姉妹に拘るんだ?」

 火が弾ける音がしばらく続き、この能力ちからのせい、だと思う。と優奈が呟く。

 「だって、きみたちは人間としてまだ確立もされていなかった状態だったのに、そんな能力があるなんて、分かるはずないじゃないか」

 「兵藤は少しでも兆しがある子を集め、非道な方法でそれを確かめた。私のママもそうだった。ただ勘が鋭いと言うだけで、兵藤の元に連れて行かれた」

 悲しい目をした優奈が振り向く。

 僕の中でくすぶっていた僅かな記憶が、優奈の話と合わさる。


 怯えた目の少女。西日が差し込む部屋。窓のカーテン。鈍い感触が手に伝わって来ていた。

 急に、僕は触れてはいけないものに触れてしまったような、罪悪感に捉われ、優奈の顔をまともに見れなくなる。

 頭に無数の管が繋がれ、電気が流される。心を焼き尽くされるかのように、子供たちから表情が消え、うわ言を口走るようになる。その処理を任されていたのが……、水沢。僕の中で、記憶がぐらぐらと揺れ始めていた。

 「もうすぐ何もかもがなくなる」

 優奈の言葉に、僕は目を見張る。

 「それでも助かる人はいる」

 「そう、不公平に選別された人間が、のうのうと生き延びる」

 そう言う優奈の目からは、もう怯えはなかった。

 「私たちに手を貸して欲しい」

 「それは、できない」

 「どうして? あなたはもうあの男に」

 僕は首を大きく振る。

 「ならどうして」

 「苗代さんが何を考えているのか、僕にはさっぱり分からないんだ。それがどういうことなのか僕は知りたい」

 

 長い廊下を、僕は誰かと手を繋ぎ歩いていた。

 「あなたは、何かを知っている。私にそれを教えて欲しい。ママは、私を産むと心を壊してしまったと、パパから聞かされているわ。でも、私ずっと思っていた。ママは、何かを知ってしまったから、殺されたんじゃないかって」

 「殺される?」

 「一度もあったことがないママなのに、おかしいでしょ。だけど確信はある。あなたに会って、私はそれをより強く感じました」

 無言で見つめる僕を、優奈はまっすぐ見つめ返していた。

 

 

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