第四章 記憶02
内容を見て、顔を険しくした僕は、無言で怜美を見る。
ジャパンコレクションという、通販会社は実在していない?
「じゃあ、僕が只管、打ち込みしていたのは何?」
すべてコードナンバーが割り当てられ、上がって来た伝票には数字の身だけが記されていた。唯一名前の部分だけが違っていただけだったが……。
「分からないの。どこをどうやって調べても、何も出てこないの。もっとおかしなことに、これを調べて貰っていた探偵が、急に連絡が取れなくなってしまったの。事務所もいつの間にか閉鎖されてしまっていたし、おかしなことだらけよ。私の周辺もね」
そこまで言った怜美が、目を見張る。
僕はそれに釣られて、後ろを振り返った。
瑠羅だった。
怜美と瑠羅を見交わす僕を見て、クスッと笑い声を上げたのは、瑠羅だった。
「本当に忘れてしまったのね。おバカさん」
そう言う瑠羅に、僕は首を傾げた。
「どういう意味?」
私たちは姉妹よ。二人並ばれ、僕はやった二人がそっくりなことに気が付く。
「でも、きみは優奈の」
「そう優奈の姉」
顔を曇らせた瑠羅に代わって、戸籍上わねと怜美がボソッと言い繋いだ。
「どういうこと?」
「それは、私が訊きたいわよ。いきなりこの人たちがやって来て、私たちは大人のエゴで、入れ替えられたって言うのよね。信じまいが信じようが、真実よって言われてもね」
ふてる様に言う怜美の隣に、瑠羅も座り、僕をじっと見る。
「あなたなら、私が嘘を言っていないって分かるでしょ?」
「なぜ、僕が……」
言いかけた僕は、手で口を塞ぐ。
僕は確かにその経緯を知っている。理由は分からないが、しっかり目に焼き付けられた光景。
「わからないな」
怜美が、髪を指に巻きながら、言う。
ぶるっと寒さに、体を震わせた僕は家の鍵を開ける。
用心に用心を重ね、入って来た怜美が頷いて見せる。僕はその合図で電球に手を伸ばした。
「ここどこ?」
「おばあちゃん、ただいま」
仏壇の写真に向かって僕は手を合わせる。
「なんか、かび臭いね」
「仕方ないさ。あいつらの監視が厳しくなって、なかなか来れなかったからね」
家じゅうの戸を開け、空気を入れ替えながらいう僕の横をついて回りながら、怜美が不安そうに外を眺める。
「当分は見つからない。ここと僕の接点は分からないと思うし」
「考えたわね」
「瑠羅。来ていたのか」
縁台に座り、足を投げ出しながら微笑む。
「優奈は?」
「やることがあるから。それに、あの子の存在を気が付きはじめられちゃっているみたいだし」
「フーン」
僕は振り返り、玲奈を見る。
「あの子は危険よ。なぜ巻き込んだの」
小声で訊く瑠羅に、僕は微笑む。
「怜美」
「何?」
怜美は瑠羅が座っている場所へとやって来る。慌てて退いた瑠羅が、目を見開く。
二つ用意したお茶を、僕らは一緒に飲む。
大あくびをし出した怜美を見て、ふっと笑いを零す。
「眠いの?」
頷くのも煩わしそうに、目がくっつのを堪えている玲美の頭を自分の膝の上に誘導し、僕は瑠羅に目配せを送った。
「瑠羅、攪乱を頼めるかな?」
僕の膝の上で寝てしまった玲美を見ながら、僕は呟く。
「いいの?」
瑠羅が、怜美の頭の上に手をかざす。
「この子は元々無関係だった。大人たちの勝手なえごで巻き込まれただけだ。何も知らない方が良い」
上目使いで言う僕に、瑠羅を優しく微笑んだ。




