ちょちょいと注意事項を聞くらしい
時間・・・あっぶね・・・
「うむむ・・・何を受けようか・・・。」
昨日の事を考えている間に、いつの間にか、俺は冒険者ギルドに着いていた。そして、当初の目的通りに依頼を受ける為、看板の前で沢山の冒険者に混じって依頼を吟味している。
「そうだなぁ・・・外に出たいからこの『薬草採取:薬草十束の納品』っての受けるかな?」
そう呟いて、依頼書を引っぺがした。剥がす前に詳細から確認したが、報酬は1000円で、内容は、群生している薬草を十束取って来い、草を纏める紐はギルドに渡してある十本しかないから絶対に無くさないように、と言う事らしい。この依頼では、『薬草』と書いてあるが、G級として出て来る以上、実際採取すべきなのは、『ヤクソウモドキ』なのだろう。『鑑定』を使えば早く終わる依頼だ。
俺は、剥がした依頼を見ながら受付に持って行った。受付では、まだ依頼を受ける人は少なく、空いている席もいくつかあった。その空席の場所にまたあの男の人が居た為、そこに行く。
「どうも、おはようございます。今日はこの依頼を受けたいのですが・・・。」
「あ、でしたら少々お待ち下さい。渡されている紐を取りに行くので。」
そう言って席を立って奥に行く男の人。今後も俺の中でのあの人の呼び方は『受付の男の人』なんだろうな・・・名前聞いてないからね!仕方ないね!決して「いや、受付に男しかおらんのだからそれ言うと分からなくね?」と言うツッコミは求めていない。
「お待たせしました。こちらが紐と、薬草が群生されているとされる森の地図になります。こちらの依頼を受けるのは初だと思いますので、説明をさせて頂きたいのですが、宜しいでしょうか?」
「あ、お願いします。」
俺が変な事を考えているほんの少しの間に戻って来た受付の男の人からの提案を、快く俺は受ける事にした。
「はい、では説明させて頂きます。まず、場所ですが、G~Eまでの特殊な条件の無い依頼の場合、この国から出て真っすぐ東に行った所にある森がその場所です。この森では、沢山の種類の草が生えていて、正に宝の山と言っては過言ではないんですね。さて、場所についてはここまでとしておいて、次に、依頼の内容について話そうと思います。この依頼では、世間一般に使われている、こちらの薬草の採取が条件です。」
そう言って受付の男の人は、紐、地図と共に持って来た一束の草を机の上に置いた。その草は、前世でも知られている雑草の、『シロツメクサ』に非常に似た細長い植物であった。
「こちらの植物は、基本的に纏まって生えています。まだ理由はさっぱり分かりませんが、その纏まっている量は常に等しく、量の多い少ない等の文句やクレームが全く無い、ある意味非常に助かる薬草です。まあ、たまに物凄い回復効果を持った薬草もありますから、そこら辺の違いはあると思いますけどね。そう言った物は基本的に『アタリ』と呼ばれています。」
・・・『アタリ』と言うか、100%そっちが本当の薬草だろうな。まあ、本当に偶然だから『アタリ』って呼ばれるんだろうな。
「まあ、『アタリ』の事は置いておくとしましょう。この依頼で依頼されている薬草は、普通の雑草との見分けが付き辛い為、ポイントとして、普通の雑草より緑が深いと思って下さい。ちなみに、こちらがそこら辺の平原で採取してきたただの雑草です。見比べて下さい。」
そう言って、薬草のすぐ隣に、また同じような形をした草を置いた。うむむ・・・。本当に見分けが付き辛いな・・・形だけは。色が完全に違うな。何だろう。抹茶と緑茶の違い位違うな。・・・この説明クッソ分かり辛い気がする。
「そうですね・・・完全に色が違いますね。本当に形しかそっくりじゃないとは・・・。」
「本当にそうなんですよね・・・。まあ、見本としてこの雑草を持って行って下さい。これを基本にして探せば結構簡単に見つかると思いますよ。でも、普通の雑草に薬草が混ざっていると相当な違和感ですから、こんなのが無くても分かる人は大勢いるんですけどね。さて、依頼の進行についてですが、森に着いたら、まずこの薬草を探して下さい、そこそこ生えている草なので、すぐに見つかるとは思いますが。見つけたらですが、先程説明した通り、この薬草は纏まって生息している為、その纏まっている部分の根の辺りをナイフ等の刃物で切り取って下さい。ありえないとは思いますが、刃物を持っていない場合は、切れ味が少々悪くなりますが、こちらから貸出する事が出来ます。・・・でもジンさんは要りませんよね。武器がナイフですし。」
まあ、確かにその通りだな。まあ、切れ味が悪くなっても構わないよな。貸出して貰えるなら。・・・ん?『切れ味』?何か忘れてる気がする・・・。何か神様に言われてた気がするんだけどな・・・。
「まあ、話を続けますが、切り取った薬草を、この紐で縛ってから仕舞って下さい。そして、この国に帰ってくれば構いません。それで依頼完了です。・・・あ、注意事項を忘れていました。この依頼で行く森では、魔物が出現する可能性があります。大体下級の雑魚レベルの魔物しか出ませんが、きちんと注意をして下さい。勿論倒しても構いません、その代わりきちんと討伐部位をしっかり取って来て下さい。ちなみに、魔物を倒すことも、ギルドの評価に入るので、出来そうであれば出来るだけ討伐をするのもアリかもしれません。・・・たまに自分のランクを上げる為に自分じゃ倒せないレベルの魔物と対峙して死んでしまう方がいるので、自分の力量を考えて行動してください。」
・・・。うげぇ・・・やろうと思ってたのに・・・。やめとこう、きちんと順序を立ててランクを上げていった方が良いな。目指せA級!って感じで。
「えーと・・・すみません、討伐部位って何ですか?」
でも一応聞いておこう。一応だよ?一応。
「ああ、すみません、説明がまだでしたね。魔物はただ討伐するだけでは駄目なんです。ただ討伐したって言うだけなら誰だってできますしね。それでギルドの評価がおかしく評価されてしまって、沢山の人が高ランクに行って、高ランクの魔物に殺されてしまいました。そこで、ギルドが見つけたのがこの『討伐部位』です!そもそも、魔物と言うのは、魔力を吸い込んで変態してしまった動物達なんです、そのせいなのか分かりませんが魔物にはそれぞれ、特徴のある部位がありまして、その部位を切り取る事で、初めて『討伐した』と言える様にしたんです。ちなみに一般的な下級魔物のゴブリンは曲がった耳、コポルトは小さいアクセサリーです。」
「ふむふむ。成る程。良く分かりました。ありがとうございました!じゃあ行って来ますね!」
「分かりました。ですが、気を付けて行って来て下さいよー!」
最後に受付の男の人の台詞を聞いて、俺は依頼を達成しに向かった。