分かっている負けゲーム。
叶わないなんてわかっている。
そうだ、僕みたいな分際が彼女に釣り合うわけがない。
そんなのわかっている。
「わたし、今回は本気だよ」
彼女の真剣な言葉を、僕は受け止めることができない。
真剣に話しているのに、真剣に受け入れることができない。
わかっている、僕は悔しいのだ。
ただ悔しいのだ。
届きそうで届かなくて、
ずっと傍にいたのは、僕だから。
「そっか…。頑張ってね」
そんな言葉は嘘交じりの本音で、
本音交じりのウソだ。
僕は作家じゃないし、文豪でもないから、そんなうまいことは言えない。
分かっている。
彼女は作家みたいな人か、本が好きな人、若しくは作家と結婚したいと云った。
僕はこれと言って面白い話もかけないし、
難しい本を読むのが得意なわけじゃない。
此の前借りた、夏目漱石だって難しくてわからなかった部分もあった。
そうだ、そうだ、はじめからこれは負けゲームなんだ。
「最初から、かなわない方が高くても、わたしはあきらめない」
「僕は負けゲームはしない主義だから、諦めちゃうけれど、恋はすごいね」
「それは皮肉?それとも立てているの?」
「皮肉なんて…そんなこと言うわけないじゃん」
「どっちでもいいけれど、なんか尚さっきからおかしいよ」
「そうかな…自覚無いけど」
「そっか・・・うん。」
もしも僕が夏目漱石に会えるならこう聞きたい。
『どうしたら彼女にうまく気持ちを伝えられるんですか、教えてください。』