9
東の空が明るくなって、夜が明けたころ。徹平が配属された先頭部隊にガワール油田を包囲する待機命令が出た。ガワール油田は世界最大の油田であると言われている。徹平の任務は、日本に石油が安定供給されるように油田をテロリスト団体から何が何でも守ることである。
「結局、攻撃されるより先に、攻撃しちまうんだな」
徹平の横の配置についた兵隊が言った。名前は吉居と言う男だ。
「どういうことだ?」
「安保法案改正の審議がなされていたころ、この存立危機事態を巡って、政府は同盟国が攻撃を受け、日本国民の生命が脅かされる場合に限って武力攻撃をよしとしていた」
「同盟国が?」
「なんだお前、知らねえのか、野党はよ、こっちが先に攻撃する事態にもなるんじゃないかと訴えていたが、本当にこうなるとはね」
「法律違反ってか?」
徹平の言葉を聞いて、吉居は大きくため息をついた。
「あの法律はな、なんにでも解釈できるんだよ、アメリカさんは、あのテロリスト団体と何年も前から戦っている。だから武力攻撃はもう受けてるんだよ。そして今、このガワール油田が狙われて、日本国民の生活が危ないってわけよ」
徹平は、吉居の話を聞いて、少し笑いが出た。
「あんた、何年も職業軍人やってんのに、戦争したくねえのか?」
「やりてえわけねえだろ!したくねえよ戦争なんか」
「よく戦えたな、それで…」
徹平は少し呆れた声になった。徹平も怖いが、戦争をしたくないとは思わない。日本に生まれて契約を交わした人間である以上、日本のためには戦わなくてはならないと考えているからだ。
「あのな小僧、よく覚えとけ、戦争がはじまったらな、怖さはなくなる。その一方で、銃を敵に向けた瞬間俺たちは、人間じゃなくなる。見失うなよ、人間を」
吉居は、最後の言葉の語気を強めていった。
「それからよ、日本は太平洋戦争でアメリカとイギリスに宣戦布告した時、真珠湾より先にマレー半島を襲撃した。なぜだか分かるか?」
徹平は、小さく息を吐いて答えた。
「敵方がたくさんいたからとかか?」
「違うな」
吉居は即答した。
「石油だ、すべての戦争はな、自衛意識から始まるんだよ」
「敵が来たぞ!」
吉居がしゃべり終わると、大きな声が響いた。その時、大きな音とともに目の前が一瞬明るくなり、熱風が吹き荒れた




