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サウジアラビアへの出撃1週間前となって、新しい軍の司令官がやってきた。徹平はその姿を見て驚いた。なんと、ゲームセンターで徹平をこの世界に送り込んだふくよかな大国の男だったのだ。
「これから、ここの陣頭指揮を執る、轟仁平次だ。私の命令にはなんでも従ってもらう」
「はい!」
男の言葉に全員が返事をする。
「一つルールを決めよう怪我をしたら足手まといだ、その瞬間において行く」
「は…」
「返事は!?」
「はい!!」
その男の驚きの命令に一同驚いた。怪我をした瞬間、足手まといだから仲間を見殺しにしろと言うのだ。
徹平は全体集会が終わった後、轟と言うその男のそばに行き、今徹平がおかれている状況の説明を求めようとした。徹平は強い口調で轟につかみかかっていったが、その場で投げ飛ばされた。
「三山徹平、ここまでよく廃人にならんで来れたものだ」
「廃人?」
徹平は、自分の五機が強まり、顔全体に力が入っていくのを確認した。
「まあ、そんなに眉間にしわを寄せなさんな、あんた性格によらずイケメンなんだから」
「何が言いたい」
徹平は、その男が自分を見下しているように感じた。
「君を見下すなんて当たり前だろう」
徹平は、その男に心まで見透かされているような感じになった。
「君は、平和ボケしていたからな」
轟は含み笑いを浮かべながら、徹平に言った。
「平和ボケ?俺が?」
徹平は、むしょうに顔の周りが熱くなるのを感じた。
「戦争がしたかったんだろ?」
「したかったわけじゃない、戦争は国民の義務だと思っていただけだ!」
「今もそうか?」
「ああ、国と契約を結んでいるんだから」
轟は大きくうなずく。
「契約か、それは正しい答えかもしれない、しかし、貴様はここで時田と言う男にあったな」
「ああ」
「あいつ、お前と一緒で、平和な日本から体験コーナーでこの世界にやってきたんだ」
「知ってるさ」
「あいつ狂っていただろ?」
轟の笑い顔は、もう含み笑いと言うレベルではなくなってきた。しかし、ただ不気味な笑い顔だ。
「確かに狂ってた」
「体験コーナーからここに来たやつみんな、狂う」
「みんな?」
轟は声をあげて笑い始めた。
「元来、この世界にいる軍人はみんな職業軍人。戦争に行きたい奴はいないが、戦争には慣れている。戦争をやりたくはないが、戦争を止めるために仕方なく戦っている人たちだ」
「仕方なく?」
「それに比べて、お前らは戦争に慣れていない、戦争がどんなものなのか知らない、ゲームの世界でしか経験していない。そして、死にゆく人を見て、銃弾をうける自分のいて身を感じ、人を殺す感覚を覚え、お前たち非職業軍人は精神を崩壊させる」
徹平は、握っていたこぶしをほどいた。
「平和ボケとはこのことだ」
「どういうことだ」
「戦争をどんなものかも知らず、何か起これば、対話はダメ、武力で対抗だ。戦争をしてしまえばいい、どんなひどいものかも知らないのに」
轟は、大きく息を吐き続けた。
「私があのコーナーを作った目的は、そう言った君みたいな平和ボケ野郎の精神を崩壊させることだ」
「俺を…」
徹平は、少し冷や汗をかいてきた。
「君の書いた文書を読んだ。君はもう、戦争なんてしたくないと書いていたね。しかし、それを破り捨てていた。認めたくないから」
確かに、徹平はあの文章を書いた後、それを認めたくなくなり、破り捨ててしまった。
「認めねえよ、精神も崩壊しないからな」




