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「それ、どういう意味だよ」
「俺も、そうなんだ」
「俺も?」
「うん」
まさか、こんな映画みたいな展開が起きるとは予想外であった。しかし、徹平はすぐに思い直す。これも戦争体験コーナーのシナリオだということだ。これなら映画みたいな展開も予想できると思った。
「お前も、戦争体験コーナーから、この非現実的な世界に来たってわけか」
「そうだ、ならお前もなんだな」
「ああ、戦争体験コーナーから来た」
徹平がそう言うと、その男は、大きくため息をつき一度下を向くと、すっと顔をあげて徹平の顔をまっすぐ見た。
「初めてだよ、お前みたいなやつ」
「初めて?」
「ああ、この世界の人間は戦争とか、目の前で人が死ぬこととかにある程度は慣れてるが、俺たちの世界の人間は、この世界に来た瞬間ヒステリーを起こし、廃人になってしまう」
「俺は違うってか?」
「まあな、初めは発狂したようだが、そのあとは落ち着いている。そんな奴は初めてだ」
徹平は、「ふ~ん」と言いながら大きく相槌を打った。
「あんたも、戦争したくてここに来たのか?」
「そうだ、今の日本に飽き飽き来てな」
徹平の質問にその男は淡々と答えた。
「もう二年くらいになるな」
徹平はその次の言葉を聞いた瞬間、言葉を失った。二年もこの世界にいるとはどういうことなのか、少し不安に思った。しかし、またすぐに戦争体験コーナーの設定上の問題だと捉えなおした。
「そんなにいるのか、大変だな」
「まあ、俺のほかに、この世界に来たやつは数日も経たないうちに廃人になってよ」
「戦争が怖かったのか、平和ボケで」
「いや」
徹平のその言葉を男はすぐに否定した。
「ここにもともといる兵隊たちはいかれた人間に近い。新入りも来て、最初は普通だがそのあとは廃人になり死ぬか、戦死するか、狂って仲間殺して死ぬか、感覚を失い人殺しマシーンとして生きるかだ。それについていけないんだよ。特に俺たちの世界の奴は」
その男は語り終えると、また大きくため息をついた。
「俺の名前は、時田守、お前は?」
「三山徹平」
「徹平か、よろしくな、そうだ、今から女の抱き方教えてやるよ。戦場はこれがないとやっていけねえぞ」
「どういうことだ」
「ここの軍隊は、よその軍隊とは違い、心理カウンセラーとかが常駐していない。精神行くやつが多いからよ、女がいるんだ」
徹平は、女の抱き方と聞いて乗る気ではなかったが、時田守と言う男の視線が徐々に睨みつけるような目になり、怖くなったので付いていった。
それから、1年半の月日が流れた。最初に時田から2年と聞いたときはゲームの設定だと思ったが、本当に普通の長さで普通に月日は経っていった。
徹平は、それから人を下すことも経験し、最初は嫌だったが、やらないと敵が自分を本気で殺そうとしているので、適であれば迷いなく殺すようになり、あまり殺しているという感覚はなくなった。悪夢を見るようになったが、精神がおかしくなるようなことはないと思っていた。
女性は誰であっても抱けるようになった。好きも嫌いもなく、ただ訳が分からず欲望に走っているだけであった。
そして、徹平は自分が学生であることをとうの昔に忘れていた。
すこし、戦争の悪い部分や人間性を崩壊させる部分を誇張して記述しています。




