3
徹平が気付くと、そこは薄暗い建物の中であった。建物の中はうめき声が響いていた。徹平の前におんぼろの白衣を着た医者らしき男が近づいてきた。
「あんた、戦場は初めてかね」
「………」
徹平は状況がよく呑み込めず、言葉が出なかった。徹平は元来、ゲームセンターのシミュレーションコーナーに来たつもりであった。まさかここまでリアリティーで、痛みまで感じるとは思ってもいなかった。
「まあ、このままだといつかは死ぬ。兵士は消耗品だからな」
「ここはどこですか?」
徹平はようやく、小さな小さな声で尋ねることができた。
「なんだそれ、ここはオマーンと言う国だが、まさかお前さんは、日本の軍がシーレーン封鎖の妨害に来たことを忘れたのか?」
徹平は首をかしげた。今まで、シーレーン封鎖とかホルムズ海峡とかいう言葉を聞いたことがなかったからだ。
「まあ、無理もないか。2年前の法改正でこうなったまでのこと。お前らが徴兵されるなんて思ってもみなかっただろうし」
徹平は、徴兵と聞いてますます意味が分からなくなった。あの徹平が知っている弱腰の日本が徴兵なんてことをするのだろうかと思った。
「足は、銃が貫通。でもこの程度なら歩ける。ここでの戦闘は終わったから、次までには治るだろう」
そういって、医者らしき男は去って行った。
徹平は自分の足がまだ痛いことを確認した。これからということは、またどこかで戦争をするのだろうか。そう考えると、あの先頭のシーンがフラッシュバックして怖くなった。しかし、徹平はこれがゲームであることを思い出し、気持ちを落ち着かせた。
「君は意外にやるなあ」
徹平は後ろから聞こえた声に反応した。後ろには、年が徹平より少し上くらいの小柄な男が立っていた。
「えらい、ヒステリーみたいになってたけど、君も戦争体験コーナーから来たのか?」
「なんでそれを」
「あ、いや俺も戦争体験コーナーから来たんだ」
徹平はその小柄な男の一言を聞くと、少し目を見開いた。




