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僕たちは戦争を知らない  作者: リョウ 戦争作家
2/11

 隣町につながる橋を渡り、地図が示す通りの道を進むと右手にかなり古そうなゲームセンターが見えてきた。見るからに老朽化しているその建物は、徹平が耐震強度の心配をするほどであった。

 中に入ってみると、そこに人はいないようであった。古そうなゲーム機が何台もあったので覗いてみたが、インベーダー、ストリートファイター(初期)、ファミスタ(落合が現役)と内容からしても古そうだった。

 徹平はこのゲームセンターには誰もいないのか、そしてこのチケットに書いている【戦争リアル体験コーナー】というものは本当にあるのか不安になってきた。もし、そのコーナーがなければ徹平がここに来たことは無駄になってしまうからだ。

「すいませーん、誰かいませんか」

 徹平は大きな声で、まだ見えないゲームセンターの店員を呼んでみた。しかし、反応はなかった。

「すいませーん」「すいませーん」

 徹平は何度も呼んだが、店員は出てこなかった。

 徹平は、あきらめがついて、明日あの学生にあったら文句を言ってやろうと考えて、ゲームセンターから立ち去ろうとしているその時であった。ゲームセンターの奥の暗闇から、ゆっくりと不気味な物音を立てて、人影が動くのが見えた。徹平は若干の恐怖を感じ、息をのんでそれを見つめていた。するとその人影は、体格がふくよかな男性に変貌した。

「呼びましたか、私のこと」

その男は、そう言いながらゆっくりと近づいてきた。

「あなたとは分からなかったが、店員を呼びました」

「ハハハ、えらい理屈っぽい坊やが来たこと」

「坊や…」

徹平は男のその言い草に若干腹を立てたが、戦争体験するためだと思い我慢した。

「ああね、そのチケットを持っているということは、戦争を体験しに来たんですね」

男は徹平が手に持っていたチケットを見て言った。

「ああ、そうです」

「ならば、これをかぶって、どこか椅子に座ってください」

男はそう言うと、変な帽子みたいなものを徹平に差し出してきた。

「なんですか、それは」

「スーパー戦争体験、脳波ビンビンマシーン№5です」

「あ、そうですか」

徹平は、ネーミングのことはよく分からなかったが、とりあえずこれを被れば戦争を体験できるのだろうと考え、帽子を受け取った。

「椅子に座ればいいんですね」

徹平はそう言うと、腰を掛けれそうな丸椅子があったので、そこに座ろうとした。

「ちょっと待って―、背もたれがある椅子でお願いします。体験中は、意識を失っていることになるので」

「あ、はい」

徹平は、早く説明してくれよと言いそうだったが、我慢し、背もたれがある椅子を見つけて座った。

「準備はいいですか」

「いつでもどうぞ」

徹平がそう言うと、男は帽子をさすり始めて話しはじめた。

「あなたは、中東第一戦線に送り込まれている、一兵卒の役です。怪我しますが、現実ではないので、痛みにこらえて頑張ってくださいね。では」

 徹平の視界がいきなりまばゆい光に包まれて、その刹那、大きな何かが爆発した音が聞こえた。


 気づくと徹平は、軍服を着て走っていた。

「急げ!」

大きな声が響いている。

「やった!まじでリアルだ」

徹平は、嬉しくなって、持っていた銃を構え発砲してみた。するとすごい衝撃とともに、弾が出てきた感触がした。

「バカたれが!」

その声とともに、徹平の頭に強い痛みが走った。いきなり殴られたのだ。

「むやみやたらに発砲するな!」

「はい!」

つい、返事をしてしまったが、そのげんこつがとてつもなく痛かった。

「ここまでリアルかよ」

徹平はついそれを口にしてしまう。

「危ない!」

いきなり、危険を知らせる声が響いた。その時だった、大きな音とともに、目の前が爆発し、前の人間が木端微塵に吹き飛んだ。

「ぎゃー!」

前を見ると、足が吹っ飛んだ兵隊がもがいている。それと同時に、徹平の足に激痛が走った。足から血が噴き出している。

「なんだこれ…なんじゃこりゃー、ぎゃー」

徹平の頭に恐怖の言葉が一瞬にしてまとわりついた。


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