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隣町につながる橋を渡り、地図が示す通りの道を進むと右手にかなり古そうなゲームセンターが見えてきた。見るからに老朽化しているその建物は、徹平が耐震強度の心配をするほどであった。
中に入ってみると、そこに人はいないようであった。古そうなゲーム機が何台もあったので覗いてみたが、インベーダー、ストリートファイター(初期)、ファミスタ(落合が現役)と内容からしても古そうだった。
徹平はこのゲームセンターには誰もいないのか、そしてこのチケットに書いている【戦争リアル体験コーナー】というものは本当にあるのか不安になってきた。もし、そのコーナーがなければ徹平がここに来たことは無駄になってしまうからだ。
「すいませーん、誰かいませんか」
徹平は大きな声で、まだ見えないゲームセンターの店員を呼んでみた。しかし、反応はなかった。
「すいませーん」「すいませーん」
徹平は何度も呼んだが、店員は出てこなかった。
徹平は、あきらめがついて、明日あの学生にあったら文句を言ってやろうと考えて、ゲームセンターから立ち去ろうとしているその時であった。ゲームセンターの奥の暗闇から、ゆっくりと不気味な物音を立てて、人影が動くのが見えた。徹平は若干の恐怖を感じ、息をのんでそれを見つめていた。するとその人影は、体格がふくよかな男性に変貌した。
「呼びましたか、私のこと」
その男は、そう言いながらゆっくりと近づいてきた。
「あなたとは分からなかったが、店員を呼びました」
「ハハハ、えらい理屈っぽい坊やが来たこと」
「坊や…」
徹平は男のその言い草に若干腹を立てたが、戦争体験するためだと思い我慢した。
「ああね、そのチケットを持っているということは、戦争を体験しに来たんですね」
男は徹平が手に持っていたチケットを見て言った。
「ああ、そうです」
「ならば、これをかぶって、どこか椅子に座ってください」
男はそう言うと、変な帽子みたいなものを徹平に差し出してきた。
「なんですか、それは」
「スーパー戦争体験、脳波ビンビンマシーン№5です」
「あ、そうですか」
徹平は、ネーミングのことはよく分からなかったが、とりあえずこれを被れば戦争を体験できるのだろうと考え、帽子を受け取った。
「椅子に座ればいいんですね」
徹平はそう言うと、腰を掛けれそうな丸椅子があったので、そこに座ろうとした。
「ちょっと待って―、背もたれがある椅子でお願いします。体験中は、意識を失っていることになるので」
「あ、はい」
徹平は、早く説明してくれよと言いそうだったが、我慢し、背もたれがある椅子を見つけて座った。
「準備はいいですか」
「いつでもどうぞ」
徹平がそう言うと、男は帽子をさすり始めて話しはじめた。
「あなたは、中東第一戦線に送り込まれている、一兵卒の役です。怪我しますが、現実ではないので、痛みにこらえて頑張ってくださいね。では」
徹平の視界がいきなりまばゆい光に包まれて、その刹那、大きな何かが爆発した音が聞こえた。
気づくと徹平は、軍服を着て走っていた。
「急げ!」
大きな声が響いている。
「やった!まじでリアルだ」
徹平は、嬉しくなって、持っていた銃を構え発砲してみた。するとすごい衝撃とともに、弾が出てきた感触がした。
「バカたれが!」
その声とともに、徹平の頭に強い痛みが走った。いきなり殴られたのだ。
「むやみやたらに発砲するな!」
「はい!」
つい、返事をしてしまったが、そのげんこつがとてつもなく痛かった。
「ここまでリアルかよ」
徹平はついそれを口にしてしまう。
「危ない!」
いきなり、危険を知らせる声が響いた。その時だった、大きな音とともに、目の前が爆発し、前の人間が木端微塵に吹き飛んだ。
「ぎゃー!」
前を見ると、足が吹っ飛んだ兵隊がもがいている。それと同時に、徹平の足に激痛が走った。足から血が噴き出している。
「なんだこれ…なんじゃこりゃー、ぎゃー」
徹平の頭に恐怖の言葉が一瞬にしてまとわりついた。




