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僕たちは戦争を知らない。
だから僕たちは戦うことを知らない。僕たちは自分の身を自分で守るすべを知らない。第二次世界大戦が終わった後、僕たちの国はアメリカさんに守ってもらう決断をして、アメリカさんの兵隊たちは日本に居座るようになった。そして、日本は高度経済成長の宴の中鋼の鉄骨に囲まれた折の中になってしまった。
平和が訪れた。本当の平和か分からないが、平和が訪れた。日本の外の国では、毎日のように戦争が起こっている。しかし日本人はそれを知らない人がいる。毎日毎日、どっかの国がどっかの国と戦争をしてたくさんの人が死んでいる。日本人は、その最中でゲームを楽しんだり、デートをしたり、アイドルにはまったり、色々だ。
そして日本人は、僕たちの国を狙おうとしているほかの国の存在を知らない。お隣の国、韓国や中国は今か今かと僕たちの国を狙っている。しかし、僕たちの国民は戦争をしたくないらしい。対話対話と言い武器を持って向かってくる相手に対して丸腰で臨もうとしている。
対話で解決できると思っている。これが平和ボケだ。僕たちは戦争を知らないから平和ボケしてしまったのだ。私は、日本の国民がもう一度自分の身を自分で守る国になるように、憲法9条の改正を願う。そうなった戦争は、聖戦なのだ。
三山徹平は、高校生の時に自分が書いた作文を読み返していた。徹平は、我ながらに素晴らしい文章だと思った。この作文を書いて、3年の月日がたつが、徹平はいまだに日本国民は平和ボケをしていると感じていた。唯一変わったのは、政府が他国と同様に武器を持って戦える国に変えようとしていることぐらいであった。しかし、それにも反対が多い。徹平は、その政府の考えに反対する若者が多いのを見て、先が思いやられると感じていた。
この日の大学の授業は、国際関係についての授業であった。内容は近隣諸国との平和的関係性についてで、講師の先生はお互いのいいところを見つけて、互いに交流していくことの大切さを述べていた。
徹平は呆れたもんだと思った。学術的な話を聴くためにこの授業を受講しているのに、講師が話しているのは感情論である。考えが違うもの通しが仲良くできるわけでもなく、少しで意見が食い違うと戦争をしてきたというのを歴史が物語っている。あの精神分析の創始者、フロイトだって「人間は攻撃欲求の塊だから、戦争を繰り返す」と述べている。
徹平は、もうこんな授業やめてやろうと考え、最後の質問タイムで、講師に対して自分の意見をぶつけてみようと考えた。
「はい、そこの君」
徹平が手を挙げると、講師は淡々と徹平を指差した。
「先生がおっしゃっていることは理想論だと思います」
「ほう、というのは?」
講師は徹平の一言に目を丸くしていた。
「中国や韓国と仲良くできるわけがない。歴史が物語っています」
「それは、どんな歴史かな?」
「中国人や韓国人は、第二次世界大戦での侵略や秀吉の出兵を話しますが、日本は元寇や応永の外寇などで、中国や韓国に一方的に攻められてきました。それを棚上げし、日本の侵略の歴史を理由に日本を奪おうとしている国と仲良くできるというのは、無理じゃないですか?」
「あきらめるということ」
「はい、そうしかありませんね。先生が言う通り、そこで戦争になるなら、やるだけです」
徹平がそういうと、周りがざわつき始めた。
「戦争ね…中国と韓国そして日本、どちらも重要な貿易パートナーだけど、戦争したらこの三国はどうなっちゃうのかな」
「えっと、それは…せめて抑止力で改憲だけでも…」
「改憲ね、はいはい君の考えはよく分かりました。ありがとう」
授業が終わった後、徹平の背中に冷たい視線が降り注いだ。睨みつけてくるのは、留学だろうか。怖い怖いという日本語も飛び交っていた。こいつらもみんな平和ボケだと徹平は感じた。
「三山君」
徹平は、自分の名前を呼ばれて振り返ると、そこには授業などでたまに顔を合わせる男子学生がいた。
「君は、戦争賛成なんだね」
「必要なやつはな」
「ふ~ん、でも面白い考えだね」
徹平はなかなか意見の合うやつだと思った。身長は自分より大分低いが、脳みそはほかの連中より大きいようだ。
「でもいきなり戦争となると困らない」
その学生は、いきなり突飛よしもない質問をしてきた。徹平はこの学生が自分の意見に賛成してくれているのかどうか少し分からなくなった。
「困るもなるも行くしかねえだろ」
「練習もしてないのに」
「ああ…そういうことか、だから徴兵も必要なんじゃねえの、自衛隊もたかが知れてるだろう」
「実は、この隣町のゲーセンで、戦争をリアルに体験できるんだ」
「まじか、どこだ?そこ」
徹平はついつい身を乗り出してしまった。
「ここ」
そう言って、男子学生が取り出したのは、チケットだった。そこには、戦争リアル体験コーナー無料招待券と書いてあった。
「これ、無料って書いてあるじゃん」
「うん、これ使ったら無料」
「くれるの?」
「もちろん」
「ありがとう」
徹平は、それを受け取ると即座に駈け出して外に出た。チケットの裏に書いてある地図を見ながら歩き出した。そこの町は最近、原因不明の変質者が多発していることでニュースになっていて徹平も知っていたが、特に気にすることもなかった。




