【前編】
夜空に、月がひとつ。
淡い光を放つ月は、こっちの世界のもの。
異世界の月は、双月。
紅い月と蒼い月は、見えない引力に引かれ寄り添い、下界に光を落とす。
双月は恋人に例えられる。
――まるで、双月のように。
何があっても、離れない、離さない。
そして、永遠を誓う。
大学、就活、アルバイト。
こっちの世界では、私は普通の女子大生だ。
これと言って、才能も技術も資格も何も無い。
「ただいま」
「お疲れ、メグム」
「おかえりなさい」
「早かったな、愛」
レオンハルトは右頬に。
アレクシスは、前髪に。
ゆーくんは、目尻に。
三人それぞれ、おかえりのキスをくれる。
勿論、“おはよう”もあれば、“行ってきます”もある。
一日の終わりの“おやすみのキス”を忘れたりすると、翌朝、シャレにならないほど、本気の愛情を注ぎ込まれる。
その日一日は、起き上がれませんでした。
「メグムー!昨日、シャンプー買っておいたからな!」
「ありがと…」
空のボトルにシャンプーを詰め替えてくれるのは、レオンハルト。
異世界では最強の剣士だった男が、今では元勇者の私にシャンプーを買いに走ってくれる男。
「はい、メグムの分です。洗濯物畳んでおきました」
「ありがと…」
綺麗にアイロンまでして、洗濯物を渡してくれるのはアレクシス。
異世界では天才魔術師だった男が、今では元勇者の私の下着まで几帳面に畳んでくれる男。
私が元の世界に戻る時、勝手に付いて来たレオンハルトとアレクシスは、すっかりこっちの世界に溶け込んでしまった。
「愛、先にシャワーしてこい。晩ご飯の準備しておく」
「ありがと…」
そして、イトコである私に晩ご飯を作ってくれるのはゆーくん。
現在ではイトコ同士だが、遠い昔、前世において異世界では、私たちは夫婦だったらしい。
記憶が無いので、何とも言えないけど。
四人揃って夕食を済ませる。
すっかり、この四人の共同生活にも慣れてきたように思う。
他愛ない話をし、楽しく食事を済ませる。
そして、翌朝。
私、工藤愛は大学へ行き授業が終われば、書店でバイト。続けてカフェでもバイト。
イトコの渡瀬侑理は、私と同じ大学へ。
レオンハルトは、大学近くのカフェで朝からバイト。
アレクシスも、朝からレオンと同じカフェでバイト。
これが、私たちの新しい生活リズム。
もう剣とか魔法とか、傷付きながらも魔物と戦う日々から、かけ離れた平穏な日常。
きっと、異世界に残っていても魔獣は居ないのだから、どちらにしても安寧な毎日になっていただろう。
私にしてみれば、本来の生活に戻っただけ。
だけど、最近、ふっと考えてしまう。
本当に、これでいいのかな?――って。
私が働く書店は、大学近くのこぢんまりとした小さな書店だ。
老夫婦が営む書店は、入手不可能などんな書籍も入荷してくれるという知る人ぞ知る有名書店だ。
店内の隅には机と椅子が有り、ちょっとした読書スペースになっている。
「お疲れさん。愛ちゃん、あがっていいですよ」
「お疲れ様で~す。お先に失礼しま~す」
仕事内容は、販売と書棚整理、あと掃除を少し。
主に、老夫婦の代わりにお店番という感じ。
都合のいい時間に入って夜7時を過ぎれば、バイト時間は終わり。
そして、今夜はその足でもう一つのバイト先のカフェに向かう。
「お疲れ様です!オーナー」
臙脂色のエプロンを身に付け、店内に。
早速、トレイにグラスを載せ、オーダーを取りに行く。
私が通う大学の他にも大学があるので客層は学生が多いが、シンプルな店内とゆっくり出来る空間が好評で、ランチタイムには主婦たちもやってくる。
「メグム、これ、3番のお客様」
「了解!」
「メグム、レジ、お願いします」
「了解!」
私の紹介というより、ゆーくんの推しでここのカフェで働く事になったレオンハルトとアレクシス。
私も就活でなかなかバイト時間が取れなくて、代わりに二人が入ってくれてる分とても助かっているとオーナーは言う。
何より、二人のおかげで、4:6だった男女比率が2:8になり、絶える事無く女性のお客様が来店しあまりの盛況振りに、オーナーはほくほく顔だ。
すっかりイケメンカフェ店員として、有名になった人気者の二人。
レオンは、今でも剣の鍛錬は欠かさずしているようで、スマートな身のこなしはさすがとしか言いようがない。
アレクも、今でも精神修行は欠かさずしているようで、誰に対してもにこやかにお客様を捌く姿は尊敬する。
始めた頃は、どうかな?って思って見ていたけど、二人の覚えの早さはは流石としか言いようがない。
そして、私達三人の息はぴったり。
異世界で五年も一緒に旅をして来たんだもの、何も言わなくてもアイコンタクトで意思疎通が出来てしまう。
そして、バイト時間もそろそろ終わりという頃になると――。
「いらっしゃい、侑理くん」
「こんばんは、オーナー」
こんな風に、ゆーくんはいつも私を迎えに来てくれる。
バイトが終われば、四人一緒に家路に着く。
これが、今の私の日常。
ふと、夜空を見上げれば、月は――やはり、ひとつだけ。
「ふわぁ~」
気の抜けたあくび。
最近、ちょっと寝不足気味。
あ、ヤらしい事してると思った?
全く、そういう事とは関係ありませんから!!
こっちの世界に戻ったばかりの頃は、朝も昼も夜も一日24時間、私に重過ぎる愛情をガンガンぶつけて来たけど、近頃は三人とも落ち着いて来たと言うか…。
私がどこにも行かない。傍に居るというのが分かったのか、穏やかな空気が漂うなった。
――二人にとって、ココは異世界だ。
何も言わないけど、不安だったはず。
ゆーくんも、また私が知らない間に異世界に行くんじゃないかって、さらに過保護…――否、ちょっとそこまでの外出すらかなりの束縛で大変だった。
さすがに、私も二度も異世界召喚は勘弁して欲しい。
今日は、書店でのバイトだけ。
いつもと変わらず「こんにちは!店長さん!」と挨拶すれば、「今日も元気だね、愛ちゃん」と返って来る――はずなんだけど。
「愛ちゃんに、お客さんが来てるよ」
え?
店長さんが読書スペースに視線を向けるので、私も顔を上げる。
そこには――。
金の粒子を全身に纏い、神々しいオーラを放ち、艶美な微笑みを浮かべた――女神が居た。
「メグ、変わりは無くて?」
「……エーレンフェスト様」
女神の柔らかな微笑みは、全てのものに祝福を与えてくれる力がある。
思わず頬が熱くなるのを感じてしまう。
店長さんが「今日は、いいから」と言ってくれるので、有り難くその気持ちを受け入れる。
人気の無い路地に入り、エーレンフェスト様は転移の術を施す。
すると、何も無い空間にマンションへと続く道が出来る。
若き大賢者、エーレンフェスト様。
エーレンフェスト様は、私を勇者として召喚した三賢者の一人。
何も知らない私に異世界の全てを。
日常生活から旅に出る時の心得。
剣の扱い方、魔術の使い方、何から何まで教えてくれた人。
時には師として、時には姉として私を導いてくれた。
そして、魔獣を倒して無事に戻った私たちを誰より喜んだのはエーレンフェスト様だ。
ゆーくんのマンションに着いて、玄関を入る。
「あっ、エーレンフェスト様。靴は脱いで下さ――ひゃっ!?」
ビ、ビックリした~~。
だって、後ろから抱き締められている。
「あ、あの、エーレン――」
「………」
エーレンフェスト様は、ただ私をぎゅっと抱き締めるだけで。
「エーレンフェスト様…」
「――エスト」
「!?」
「私の事は“エスト”と…」
それは、異世界に居た頃にエーレンフェスト様から何度も言われ続けた事だ。
召喚されたばかりの私は、“エスト”と呼んでいたけど、少しずつ異世界の事を理解するにつれ、大賢者様の事を愛称で、しかも呼び捨てにするなんて畏れ多い。
私が“エーレンフェスト様”と呼ぶと、形の良い眉尻を僅かに下げ、切なげに微笑むだけ。
それでも、私は勇者として召喚された者だけど、異世界では異質な物。
エーレンフェスト様が許してくれても、周りの人達はいい顔をしない。
いくら、私でもそれぐらいは分かる。
「エーレンフェスト様、上がって下さい。今、お茶を淹れます」
「……そうね。久し振りに貴女のお茶を頂きましょう」
エーレンフェスト様の吐息が首筋に掛かる。
そして、解放された身体。
あの頃は、ただ安心を与えてくれる温もりだったのに、今は心苦しく震えるのは、どうしてなの?
紅茶の香りを楽しみながら、優雅にカップを手にするエーレンフェスト様。
長い金色の髪が、少し乱れている。
私は、自分の部屋からブラシを手にエーレンフェスト様の後ろに立つ。
眩しいほどの艶やかな髪。
「ありがとう、メグ」
「綺麗な髪で、羨ましいです」
長くて綺麗な金色の髪なのに、相変わらず手入れもせずに伸ばしっぱなし。
つい、見かねた私は毎朝エーレンフェスト様の髪を梳き、纏めて上げるのが日課になっていた。
「エーレ…――」
「“エスト”よ!」
命令ではないが、強く言われては従うしかなくて…。
「エスト…様は、自分の事を分かってないです!」
それは、懐かしい行為と懐かしい台詞。
「背も高く、スタイルも最高で、完璧な美貌の持ち主なのに、ちゃんとお手入れしないのは勿体無さすぎです!」
華やかなドレスを着て、輝く宝石を身に付け、メイクだって(必要無いけど)少しすれば“天界の女神”だと言えば、誰もが信じて疑わないだろう。
「…でもね、万人に誉められても仕方ないわ。私はたった一人に想われたいのよ」
これが、私達のいつもの会話。
「有り得ないです!誰ですか?エスト様の言う“たった一人”って!」
「……――」
いつものエスト様なら、ここで答えをはっきりさせず曖昧にしていた。
ずっと叶わぬ恋をしてるんだと思っていたから、無理に相手の名を聞き出そうなんてしなかった。
なのに、つい“誰ですか?”なんて口にしてしまっていた。
「それは――」
答えようとするエスト様と答えを待つ私。
尋ねておきながら、本当に聞いていいのか。
聞いたところで、何も出来ないのに…。
「ただいま!メグム、居るのか?」
「ただいま帰りました、メグム!」
え?え?え?今日って、バイトは?
何で二人一緒に帰って来たの?
「お、おかえり…」
二人が私の姿を捉えるのと同時に、もう一人の存在にも気付く。
「げっ!マジでエーレンフェスト!?」
「わっ?!本物のエーレンフェスト!」
エスト様はにっこりと笑顔を浮かべ二人の前に立つ。
「レオンもアレクも、相変わらず元気そうでなりよりね」
微笑んでいると言っても、エスト様の目は笑っていない。
「“げっ!”とは、どういう意味かしら?“わっ?!”とは、誰に対しての言葉かしら?」
ゴツン!ゴツン!と、レオンとアレクの頭上にエスト様の拳が落ちる。
「師である私に向かって、本当に生意気ね!」
イテ!イタ!と、二人は頭を抱え本気で痛がっている。
そして、始まったエスト様の長~い長~いお説教タイム。
誰に向かって“マジ”とか“本物”とか言ってるの!とエスト様は本気で怒っていると言うより、傍から見てると、どうしようもないやんちゃな弟二人を楽しみながら叱っているという感じ。
レオンもアレクも毎回こんな感じなので、慣れっこと言うか反省してる風を装っている。
身寄りの無かった二人を引き取り、レオンには剣術をアレクには魔術を教え、本当の家族のように仲が良い。
そして、私もすっかり慣れっこで、横に居て微笑ましくこの光景を楽しんでいる。
魔獣討伐の旅に出るまでは、私達はかんな感じだったから。
エスト様に淹れた同じお茶を自分にも用意し、二人がお説教されている横で何事も無く暢気に飲む。
……――エスト様って、どうしてこっちの世界に来たのかな?
エスト様、レオンハルト、アレクシスの三人のやり取りがあの頃と同じで変わらぬ様子を見て私は思う。
――もしかして、もしかして!エスト様は、二人を迎えに来たの!?
そうとしか、考えられない!!だって、レオンハルトは無敵の最強剣士。アレクシスは稀代の魔術師。
そっか、そうだよね。
このまま、二人がこっちの世界でカフェの店員で良い訳が無い。
そう思うと、すっと胸に痞えていた物が落ちて行く。
レオンハルトもアレクシスも、異世界に帰って行くんだ――。
「ただいま」という言葉と共に、ゆーくんが帰ってきた。
あわわ、今日に限って三人共帰宅が早いってどうなのよ!
まさか、私、監視されてる!?
わ、分かった!GPSでしょう!!
遣りかねない!ゆーくんなら!
「何だ?あの金色のは?」
私を見て、不機嫌オーラ全開。
しかも、眉間の皺はいつもの三倍だ。
「愛!また、妙なモノ連れ込んで」
呆れ顔に溜め息。
いつもなら、私も勝てないと分かってても応戦するんだけど、今日の私は――。
「ゆーくん…」
すっと、自分の身を隠すようにゆーくんの背に中に回る。
それだけで、ゆーくんは私から何かを感じ取り、腕を組み、威圧感たっぷりの眼力でレオンとアレクを睨む。
「ユーリ!俺は何もしてないからな!」
「僕だって、身に覚えはありません!」
「なら、あんたか?」
一歩前に出て、名を名乗るエスト様。
「主の居ない間に、突然の訪問をどうか許して下さいね。私はレオンハルトとアレクシスの師で――」
イヤだ!イヤだ!イヤだ!
「私は二人の後を追って――」
イヤだ!この先は聞きたくない!!
“二人を連れ戻しに来た”と、最後まで聞きたくなくて、私は部屋から飛び出した。
正確には、逃げ出したのだ。
空はすっかり暮れ、今夜は満月だ。
明るい月光が、私の影を色濃くする。
お財布も携帯電話も、しかも靴も履かずに裸足のまま飛び出してしまった。
すれ違う人達は、私に道を譲るようにして避けて行く。
本当に、これでいいのかな?――って、ずっと思っていた。
変わらないままでいたいけど、そんなの無理だって知ってる。
でも、一緒にいたい。
ずっと一緒にいたい。
だって、大切なんだもの。
レオンの事もアレクの事も、ゆーくんの事も。
…私、ダメだな。
異世界に居た時は“勇者”と呼ばれて、さらに漆黒の女傑だとさえ言われたりしてたのに…。
「見つけたわ」
「!」
何もない空間がゆらりと揺れたと思ったら、白い手が伸びて来て私の手首を掴む。
逃げても、あっさり見つかるとは思ってたけど、こんなにもすぐに見つかるなんて…。
しかも、この感覚は召喚された時と同じ。
だから、今、私の手首を掴んでいるのは――。
「エスト様…」
エスト様は、数多くある魔術の中でも時空の術に長けている。
だからこそ、私を召喚し元の世界に戻してくれたのもエスト様な訳で…。
「エストさっ――!」
掴まれた手首ごと引き寄せられ、ぎゅーっと抱き締められる。
まるで、迷子になった小さな子供が親と再会出来て抱き付いてくる、そんな感じ。
「エスト様」
優しく声を掛ける。
「メグは、私を許してくれる?」
抱き締められたまま、尋ねられエスト様の表情を知る事が出来ない。
何を、許すの?
あ、そうか、レオンハルトとアレクシスの事だね。
二人を異世界に連れて帰る事に対して訊いているんだ。
「許すも何も、私は平気――」
嘘、私は平気じゃない。
レオンが居なくなってしまったら。
アレクが居なくなってしまったら。
私は、どうなってしまうのだろう。
分かるのは、召喚される前の生活に戻るだけ。
私が最初に望んだ日常に戻るだけ。
その為に、元の姿で、召喚された日に、戻して貰ったのだから。
「私は、メグに責められても仕方がないと思っていた」
「………」
「こちらの都合だけで呼び寄せ、魔獣を倒せと剣術や魔術を教え…」
「………」
「勇者などと言って、メグ一人に全てを押し付けてしまったわ」
「………」
エスト様の言葉に、何一つ返す事が出来ない。
いくら無敵の勇者の私であっても、何度重責に押し潰されそうになった事か。
でも、そんな私を支えてくれたのは、エスト様であり、レオンであり、アレクであり。
「私が、メグを召喚しなければ…」
私は、ゆっくりと首を振る。
「そうね。今更、こんな事を言っても…。辛い記憶は――」
私は、慌てて首を振る。
辛くても悲しくても、私の記憶は私のものだ。
レオンやアレクとの旅の思い出も、エスト様と過ごした日々も、私には大切なものだ。
これ以上、記憶を奪われるのは嫌だ。
エスト様の“許して”って、この事なの?
「許します。確かに魔獣討伐の旅は大変だったけど、レオンハルトにもアレクシスにも出会えたし、エスト様にも――」
「メグ…」
「また、こうしてもう一度出会えて嬉しい!」
――嬉しい!
それが、今の私の素直な気持ちだ。
また、すぐに別れてしまうけど。
エスト様は、レオンとアレクを連れ、異世界に戻ってしまう。
今度こそ永遠の別れで、二度と会う事はない。
「ふふ、そんな顔をして“嬉しい!”と、言われてもね」
「?――っ!?」
あまりにびっくりし過ぎて、言葉も悲鳴も出ない。
エスト様は、ゆっくり私の目尻をちゅっと音を立ててキスを――否、キスなんて優しいものじゃない!
吸い付いてます!吸い付いてますよー!!
「エ、エ、エスト様~~!!」
「泣かないで。私の可愛いメグ」
な、泣いてるの?私が?
「うふふ、でも泣かしたいかも」
あわわっ、どっちなんですか?
「メグ」
「はい」
エスト様の声のトーンが低くなる
こういう時は、大事な話が始まる合図。
「貴女を召喚したのは、私」
「はい」
「どうせ勇者を召喚するなら、厳つい男なんかより可愛い女の子が良いと思ったの」
「…はい」
「だから、私の好みで選んだのよ」
「……」
「素直で頑張り屋さんで、前向きで一生懸命で」
ふむふむ。
「他人の気持ちには敏感なくせに、自分の事は鈍くて」
むむっ。
「でも、強気な態度を取っても本当は泣き虫で」
うっ。
「小さくて、食べてしまいたくなるほど可愛い女の子」
なっ!?
何ですか?
私は、食用だったんですか!
一体、どういう基準で私を選んだのですか!!
「わ、私なんか食べても美味しくありません!!」
「そうかしら」
いやいや“そうかしら”って、おかしいでしょう!
「エスト様~~っ!」
「食べてみないと分からないって、言ったのはメグ、貴女よ」
ひえ~~~っ!!
確かに、言いましたよ!でも、それは!
野菜嫌いのエスト様。偏食のエスト様。食わず嫌いのエスト様。
私がどれだけエスト様の不規則で不摂生な生活を正すのに頑張ったと思ってるんですか!!
魔獣討伐に旅立つ前日まで、アレコレ煩く注意したのを今でも覚えてますよ。
「エスト様、冗談もほどほどにして下さい!それより、ここは何処ですか?」