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召喚されて、戻ってきたら  作者: 塔子
召喚されて、戻ってきたら 4
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【前編】

私は、空を恨めしげに見上げる。


今日の天気予報の降水確率は、0%だって言ってたのに。


何?これ!!ゲリラ豪雨じゃない!!


駅を出た時は、まだ晴れていたのにーーっ!!ふざけるなーーっ!!


今朝、観たテレビの中の気象予報士の笑顔を思い出し「絶対、許さん!!」と、心の中で叫ぶ。


とにかく、目に付いた軒下に身を置く。


それでも、荒れ狂う雨と風に全身を濡らしていく。ここに居ても全く意味がない。



~♪~♪



こんな時に限って、誰から電話なの!



「もしもしっ!」

『メグム!そこを動かないで下さい!』

「えっ!?」

『迎えに行きますから、待っていて下さい』

「は!?この雨の中、迎えにって、アレクまで濡れ――」

『いいですから、待っていて下さい』



一方的に電話は、切られた。


相手は、アレクシス。


五年前までは、異世界では稀代の魔術師と呼ばれるほどの実力の持ち主。


行く末は、大賢者になるはずだった男だ。


待っていて下さいって、私がどこに居るのか、知ってるの?


ぼんやりと見つめた雨風の先に、すっと腕が伸び、その腕の中に身を引き寄せられる。



「あわわ、アレク!?」

「メグム、待たせましたね」



一瞬、エスト様かと思った。


だって、何も無い空間から、突然、現れるから。



「アレクっ!?いつの間に転移の術を?」

「使えないという訳では。不得意なだけで…」

「そ、そうなの」

「メグムが僕の魔石を常に身に付いていてくれるから、いつでも傍に跳ぶ事が出来るようになりました」

「――っ!!?」



ま、魔石!!凄いっ!!


――って、そこじゃない!!これって、所謂、GPSと同じじゃないっ!!


“居場所もルートもよく分かる”って、昔、CMで聞いた事あるっ!!


私って、そんなに心配させるほど、ふらふら…――してないって、言えない。


ゆーくんに言わせると、元の時間に戻って来たとは言え、五年も異世界へ行ってたもんね。


少し異世界での事を思い出しては、懐かしいな~なんて思ってみる。


まだ、戻って来て数ヶ月しか経たないのに…。



「メグム!!」

「あわわっ」



アレクが、いきなり強く抱き締めてくるから「どうしたの?」と、顔を上げて問うと「メグムが、今にも消えてしまいそうで…」と、眉根を寄せて困った顔をしてくる。


だーかーらー!!


もう、二度と、訳分からない所には行きませんっ!!


行け!って、言われても全力でお断りしますっ!!


異世界召喚とか、魔獣を倒してね♪とか、絶対、イヤだーーっ!!



「アレク、大丈夫。私だって、もう異世界召喚はごめんだよ!!」










転移の術で着いた先は、マンションの洗面所。



「おかえり!メグム!!」

「レオン、た、ただい――っ!!」



挨拶もそこそこで、レオンの手は私の服を脱がしに掛かる。


私を抱き締めていたアレクの手もレオンと同じ動きをする。



「ま、待って!コラ!勝手に脱がすなー!」

「濡れたままでは、風邪をひきますからね」

「お湯張り済みだ!俺が準備したからな!」



……はぁ。


どうして、毎回、こうなるの?


止めてと拒否しても、抵抗しても、2対1では勝算が無い?


「おすわり!」と、連呼すればいいの?


……はぁ。


お風呂、温かくて気持ちいい。冷え切った身体が、ポカポカしていくのが分かる。



「――って!結局、一緒に入ってんじゃないわよーーっ!!」



湯船に浸かり、つい、まったりしそうになった所で、拳を作り叫ぶ。



「僕だって、温まりたいです。雨に濡れてしまったんで」

「そ、それは、アレクが濡れた私に抱き付いたからでしょう!!」



それに、何っ!その、しっとりと艶のある表情はっ!!


銀色の髪が濡れて、無駄に色気を出すなーーっ!!



「別に、いいだろう。三人でも余裕の広さなんだしさ」

「レオンは濡れてないのに 一緒に入る必要は無いでしょう!!」

「俺が掃除してるんだから、一番風呂は俺のものだ!」

「…まぁ、確かに」



思わず、納得してしまった。


相手は、レオンハルト。


五年前までは、異世界では最強の剣士と呼ばれるほどの実力の持ち主。


行く末は、大将軍になるはずだった男だ。


レオン!いつも綺麗に掃除してくれて、ありがとう。


……いやいや、そうじゃなくて!


何っ!その、鍛え切った身体はーーっ!!


いつ、鍛錬してるのよ!!大胸筋!腹直筋!!大臀筋!!!――あわわっ!!!


それより、異世界に居た五年間では、私は“しっかりとしたお姉さん”という立ち位置を守ってきたのに。


今では、お世話されまくりの、面倒掛けまくりのダメな元勇者だ。


……はぁ。


正真正銘、本当の溜め息を付く。



「何だ?溜め息なんか付いて」

「何か悩み事ですか?メグム」



三人で、お風呂。


異世界に居た時は“裸のお付き合い”なんて、絶対許さなかったのに。


……家族になった訳だから、いいのかな~?



「三人で昼間から、風呂とは良い身分だな」



湯煙の向こうに、不機嫌な表情であろう、ゆーくんが立っている。



「おかえり、ゆーくん」

「よぉ、ユーリ、おかえり」

「おかえりなさい、ユーリ」



湯気で曇った眼鏡を外し、服を脱ぎ始めるゆーくん。



「俺も入る」



四人で、お風呂。


広いとは言え、さすがに四人は狭い。



「温泉とか、行きたいよね~」


広ーい露天風呂を想像して、この呟きがポロリと口元からこぼれる。


この時、まさか、本当に広ーい広ーい露天風呂に入れるなんて想像もしなかった――。






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