第五話 国の状況
「俺にも隠し事をするのか?」
「いや・・・そんなつもりじゃないけど・・・。」
ジトラの視線をかわしながらしどろもどろしている。
「・・・サガラにばれたら、俺ここにいれなくなる。」
下をむいたままジトラを目だけ見上げてみると、ジトラは足を組んで椅子に横にかけ、背もたれに肘をついたまま、俺を見てる。
すごい威圧で、動けない草食動物のうさぎのようになる俺。
「・・・そうか。俺はなにをきいても、この国に害がないのなら怒らん。サガラが怖いなら、俺は言わん。
ただ、おまえがあの女をどこで見付け、なぜこの城へつれてきたか知りたいだけだ。今まで街を巡回しても、あんな娘がいた記憶はない。ちまたでは美形な方だ。なれば噂ぐらい聞きそうなはずだ。」
痛い所をつかれた。ショウやサガラは街にはめったに赴かない。だからかわせたが、ジトラはそうもいかないらしい。でも、ジトラなら信用できる。俺もよくなったら少女に素性を尋ねようと思ってた。ジトラが一緒なら心強いかもしれない。
いつも強きな俺でもジトラとサガラの前じゃ、弱きになってしまう。5才位年が離れてる分、兄のような安心感があるのかもしれない。
「今、この国も危ない状況なのはわかっているだろ?島国でこのナインの上に位置するガゼトニア国が強大な軍事力で領土拡大を狙っている。いつ、どんなやつがショウ王子の首を狙ってくるかわからん。スパイもいるかも知れない。」
そう、今豊富な資源が国々に別れて存在する。ナインは水と宝石、ガセトリアは炭鉱、鉄、銀などだから軍事力は強大だ。隣のドュエル国は食料と大きな領土。ドュエル国の、ナインとは逆の隣に一番小さいケラール国があり、ここは音楽と医療の国であり、いつも争いのときは中立であり、どこの国の者でも治癒してくれる。
今この四国が意志とは無関係に争いに馳せ参じようとしていた。
ガセトリアはケラールの医療をもわが力にしようと考えているらしい。
今はドュエル国の領土に目をつけ、両者睨み合いの冷戦がつづいている。
武器はガゼトリアが上だが、ドュエルには三強と呼ばれる、神にも崇められる兵が三人いる。そして広い領土なので兵の数もガゼトリアをゆうに三倍は越している。
「ジトラ、危ないってわかるまで、俺とジトラの秘密にしてもらえないか?あの子が危ないとは思えないけど・・・。」
ジトラはいつも俺の困ってる事を無愛想ながらに一緒に片付けてくれる。
まだ入ったばっかの頃、みんなにちびとかガキが何、兵隊ごっこしてんだってからかわれて、隅で一人でいたら、
「おまえは確かにガキかもしれんが、ここの誰より強くなれる気がする。俺の次に。まぁ頑張れよ。」と言って去っていった。休息所に戻ってみると、馬鹿にしてたやつら、ジトラにやられてのびてた。
ジトラのほう見たら何事もなかったかのように、本読んでたけど。ここにきてやっと友ができた時だった。
そして、いつも禁止されてた泉に行ってたこと、少女にあったことを、ジトラに全部話した。
空に朝焼けが表れ、すこしずつ色が鮮やかによみがえっていっていた。