第四話 ナイン城
━━━あったかい
感覚がゆっくりもどってくる。
私は今どこに?
確か泉に落ちて・・・
ゆっくりと目を開いてみる。
ここは?
白いベットの上に寝かせてもらっている。
どこだろう?窓から月明かりが注いでいる。
照らされた部屋の中を見渡す。四方を白い壁で囲まれた部屋でベットの横に窓がある。高い所みたいで月明かりにとおくの木々が見える。あの奥には、泉がある。
布団から腕を出してみる。衣服が着てたものとは違う、白いふわりとした袖になっている。レースに着飾られた袖口をみて、濡れていた服も着替えさせてもらっていることに気付く。
また見渡してみる。横にある衣裳ダンスは白に黄色を足したような色で繊細な細工が施され、バラなどの花の絵が高級感を思わせる。ベットの足のほうにある化粧机も同様で大きな三面鏡がある。
きっと裕福な方のお家なのかしら。ここはお城?
この辺りだとナイン城かしら。
夕暮れまでは覚えてる。それからどれくらい時間がたったんだろう・・・?
ふとベットの横に重みを感じそっちの方を見てみる。月に照らされてすやすや眠る横顔がみえた。
椅子に腰掛けて腕に顔をあずけ眠っている。
あの時みた男の子。このお城に住んでるのかしら?ずっと付いててくれたの・・・?
少しほほ笑み、私は腰を起こしてベットの背にもたれる。
その静かな振動でヒートは起きた。ゆっくり目を開け、少女の姿を確認し、安堵したように、ふぅと一息ついて、
「よかった」と言った。
「ありがとう。もう大丈夫です。ご迷惑おかけして、ごめんなさい。」
やさしい目。そして、さらさらと流れるような綺麗な声。
「・・・どうかしました?」はっと気付いたようにヒートは顔をそらす。
「いっいやぁ、大丈夫でよかった。今日はこの城に泊まっていって、よくなったら家に帰ったほうがいい。もう少しよこになってゆっくり休んでいけよ。王子の許可はとってるから。」
月に染められた顔は少し赤く、早口で言う。
「ありがとう。ではまた休みます。あなたも、お休みしてください。」
「あぁ。また明日朝くる。・・・と、その前に、名前聞いてもいいか?」
「リーア。あなたは?」
「ヒート。じゃあな。」 軽く手を振り、ドアがパタンとしまった音がして、ヒートは自分の部屋に戻った。
優しい方・・・。よかった。あの時以来、人には近づかなかったけれど、いつも見守ってたヒートは、やはり優しい方だった。まだ、あんな方がいるなんて。
もう少し、みてみたい。色んな物を、人を・・・。
怖くて・・・
無情に感じ、目をそらしたものを・・・。
いつのまにか、また深い眠りへと誘われた。
不思議な一日だった。椅子に腰掛けながら、蝋燭がちらちら揺れる明かりをみながら思った。
あの少女はどこから来たのだろう。俺しかいけなかったはずの泉にいて
しかも一瞬泉の上に立ってたように見えた。見間違いか?
姿も変わっている気がする。薄青い髪の色で真っすぐだった髪が今では金でゆるくうねっている。瞳の色も・・・。
しかし、綺麗だった。澄んだ泉の水のように・・・。そしてヒートも眠りの支度をして、明日ショウ王子に合わせようと思いながらベットに横になり、静かに目を閉じた。