第七話 アスリアバージウス2
沈黙が部屋を満たす。
リーアは何かを探るように、俺たちを見ている。
俺は、まだ謎が多くて、全然理解できてない。
泉は狙われておかしくない。万病に効く聖神水が湧く泉。きっと、戦で傷ついた兵の回復に役立つだろう。
しかし、リーアが神だとしてもなぜ手に入れたいのかわからない。
破壊の神でも、再生の神でもない。泉さえ手にいれればそれでいいのではないか?
水の女神が戦いになんの利用価値があるのか? 「・・・俺はリーアがどんな力をもってるか全然わかんないけど、俺は、リーアのこと守る。」
リーアは悪いやつじゃない。俺にはわかるから。
「ジトラだってそうだろ?リーアは悪いやつじゃない。」
「・・・確かに。悪いやつじゃない。リーアの力を使って世界を戦へ導く気もない。ナインを守りたいだけだ。だから、俺はおまえを守る。」
「・・・ありがとう。」
リーアはほっと胸を撫で下ろす。
「私は、争いを好み、平気で殺戮を繰り広げる、そんな人たちをみてきました。人のため、自然を壊し、鳥や動物たちの住めない開拓をした。みな人は貪欲なのだと、思っていました。」
遠くでサワサワと木々がこすれる音が聞こえる。
遠い目を窓に向けながら、リーアは言った。
「でも、違っていました。前世の母のようなやさしさをあなた達は持っている。人の優しさを私は思い出しました。」
窓から俺たちにゆっくりリーアの視線が移動する。
「私は、自分の泉のあるこの土地に、ナイン国が生まれてよかったと思います。」
リーアがほほえむ。
「まぁ、俺はナインをこのまま、守っていくことに関しては貪欲だがな。」
ジトラは少しほほえんで言った。
「そう、私は神に命をわけ与えていただいた、水の女神、アスリアバージウスです。」
その後、少し談笑して俺たちは部屋をでた。リーアはよくなったので今日泉に戻る。ただ、これからは泉にいけば姿を表してくれるといっていた。
過去になにがあったかわからないけど、人間を恐れていたらしい。
そして、ショウ王子とサガラには話していいと言ってくれた。
この時はまだ何もわからなかったんだ。
ただ、リーアに毎日会いに行こうと思ったんだ。