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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

自動のしつけ

掲載日:2026/04/18

これは、とある人から聞いた物語。


その語り部と内容に関する、記録の一篇。


あなたも共にこの場へ居合わせて、耳を傾けているかのように読んでくださったら、幸いである。

 なぜ、これをしてはいけないのか?

 子供の時分、大人へこのように尋ねることは多いだろう。純粋な疑問かもしれないし、自分のやりたいことを禁じられることへの反発かもしれない。まあ、興味津々できく人はそう多くないだろうね。

 言葉でこんこんと諭してくれるのが、いい大人という感じはする。しかし、それだけで納得してくれるかどうかは、また別問題だ。古来より続く、ひっぱたくというのも有効なときはあるが、かえって逆効果を招く恐れもあるな。簡単に飛びついていい正解なんてものを、世界はなかなか用意してくれない。

 しつけ。難しい問題だけど、何もしないわけにもいかないからな。世界のためにも、その子自身のためにも。できればナチュラルに運びたいが、強引にやらねばいけないときがあるかもしれないな。

 しつけに関して、ちょっと前に、友達が妙な体験の話をしてくれたんだ。聞いてみないか?


 友達が子供だったころ。

 目が覚めるのが怖かった時期があったらしい。というのも、起きてみると足の裏に血がにじんでいることが、たびたびあったからだ。

 足を怪我するケースそのものは、これまでなくもなかったが、寝る前にはなんともなかったのに、起きるや皮がむけていたり、出血していることがたびたびあるとなれば気味が悪くもなるだろう。

 試しに足全体へバンテージを巻いて眠ってみたところ、痛みを感じつつ、バンテージそのものも赤く濡れていたのだそうだ。


 自分が覚えていない怪我。それもたびたび。

 怖くなった友達は家族に相談してみたのだそうだ。最初のうちは息子が自分でドジしたのを隠しているのだろう、と母親や祖父母は思ったみたい。けれども仕事から帰ってきた父親は「ふ~ん」とどこか訳知り顔だったらしい。


「お前、それはしつけに付き合わされていたんだよ」


 そう話をされる。

 しつけ、とはなんのこっちゃ? と思っていた友達。むしろ自分がまだまだしつけられる側で、する側にまわるとは考えたこともなかった。

 どういうことだろ? と思っていると、父親は「ここからは親父と息子の時間だ」と人払いをしたうえで、友達の部屋にあるおもちゃ箱へ向かったらしい。

 その箱をひっくり返して、調べてみろ。きっと発見があると促されて、友達は箱をひっくり返してみた。


 中身は多くがフィギュアだったそうだが、その底のほうとなると、久しく遊んでいなかったものになる。どうしても新しいもの、お気に入りのものは出勤の頻度は多くなり、浅いところに重なりがちだからね。

 そうして底に溜まった、古いフィギュアたちを引っ張り出して友達は目を丸くした。

 フィギュアたちそれぞれの、ほんのわずかな部分ずつだけども血痕がこびりついている。もちろん、友達が自らつけたつもりはない。誰かがこのおもちゃ箱を探るとも考えづらい。


「かまってもらえなくなったものは、やがて勝手な行動をとり始める。個体差はあるけどな。そうならないために、お前の身体が勝手に彼らを構うようなしつけをしてくれたってわけだ」


 寝ている間に自動でやってくれるとか、ものすごく珍しいことなんだぞ? と父親は話してくれたらしい。

 そうして、普段はワイシャツの下へ隠している右腕をさらしてくれた。

 そこには穴こそ塞がれているものの、大幅に肉のえぐれた痕が残っていたという。それは車のタイヤの下敷きになったようなわだちと、コインサイズの棒が長々とえぐった傷が重なったようだったとか。


「お父さんも昔、自動でやってくれる身体だったんだが……いささか、放置しすぎたらしい。あるときに、起きたらこいつのもとになる大けがをしていた。じいちゃんもばあちゃんも大騒ぎだったさ」


 しつけをやめたいなら、きっちり片づけて手放すのをすすめる、と父親に注意されたようで。友達はそれらのおもちゃたちへ別れを告げて、かたしたのだそうだ。

 以降、足を勝手にケガすることはなくなったとか。

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