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『「飾りの妻でいろ」と突き放された没落令嬢、最強の死神公爵に弟子入りする  作者: 烏丸ぽっぽ


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第17話:魔力付与の贈り物。今度は師匠が言い訳をする番ですか!?


市場での買い出し騒動から城へ戻った、その日の夜。

夕食を終えた私は、ヴァルター様の書斎へと呼び出されていた。


(……どうしよう。二人きりだわ……)


「師匠のことが好きだ」と自覚してしまってからというもの、彼と同じ空間にいるだけで息が詰まりそうになる。

以前なら「これは密室での心理戦の特訓よ!」と胸を張れたのに、今の私はただの「恋する乙女」に成り下がってしまっていた。


「ルナリア、こっちへ来い」


執務机に座っていたヴァルター様が、私を手招きする。

ビクビクと近づいていくと、彼は引き出しから小さなビロードの箱を取り出した。


「え……?」


「後ろを向け。髪を上げろ」


言われるがままに背中を向け、長い髪をかき上げる。

すると、背後からスッと彼の手が伸びてきて、私の首元に冷たいチェーンが這わされた。

カチャリ、と小さな留め具の音が鳴り、首のすぐ後ろに彼の手の温もりが触れる。


「よし、離していいぞ」


胸元を見下ろすと、そこにはヴァルター様の瞳と同じ、深く透き通るような青い宝石(サファイア)のペンダントが輝いていた。


「し、師匠!? これは……すごく高価な宝石に見えるのですが……っ!」


「馬鹿を言え。装飾品などではない、立派な『防具』だ」


ヴァルター様は大真面目な顔で、言い切った。


「市場でお前が木箱の下敷きになりかけた時、俺は痛感したのだ。常に俺が隣にいるとはいえ、万が一の奇襲に備える必要がある、とな」


「は、はぁ……」


「それは特注の魔力付与(エンチャント)装備だ。低級の攻撃魔法を弾き、さらに……お前の心拍数の異常な上昇を感知して、俺に位置を知らせる『危機警報』の機能がついている」


……ん?

今、なんと言った?


「し、心拍数の上昇……ですか?」


「そうだ。敵に襲われて恐怖を感じたり、命の危機に瀕して心臓が激しく脈打ったりすると、その石が赤く発光して俺に危険を知らせる仕組みになっている」


(なっ……なんという恐ろしい防具を!!)


私は顔面からサァァッと血の気が引いた。

命の危機? 敵の襲撃? 違う! 私の心臓は今、四六時中、目の前の『氷の死神』の顔の良さと不器用な優しさのせいで限界突破の警鐘を鳴らし続けているのだ!

そんな機能がついていたら、誤作動しまくりではないか!


「これで、お前がいつどこで危機に陥っても、俺がすぐに駆けつけることができる。絶対に肌身離さず身に着けておけ。いいな?」


「ま、待ってください! その防具は私には早すぎます! 却下で――」


『ピカーーーーーッ!!』


私が首からペンダントを外そうとした、その瞬間だった。

胸元のサファイアが、突如として眩いほどの赤い光を放ち始めたのだ。


「なっ!?」


「っ!? 光った!? ルナリア、どうした! どこか痛むのか! 毒か! 姿なき暗殺者か!!」


ガタッ!! と椅子を蹴り倒す勢いで立ち上がり、ヴァルター様が腰の剣に手をかけた。

彼の殺気が書斎中に膨れ上がり、窓ガラスがビリビリと震える。


「ち、違います!! 敵なんていません!!」


「だが警報が作動している! お前の心臓が、今まさに命の危機を訴えている証拠だ!! どこに隠れている、鼠め……っ!」


(違います! 私の心臓の危機(ドキドキ)の原因は、目の前で剣を抜こうとしているあなたですーーっ!!)


「誤作動です!! ほら、きっと私の魔力操作が下手なせいで、魔力が詰まって光っちゃったんですよ!」


「馬鹿な、俺が直々に魔力の波長を調べてやる、こっちへ来い!」


「来ないでくださいぃぃっ! 近づいたらもっと光っちゃいますから!!」


私は胸元の赤い光を両手で必死に隠しながら、書斎の机を挟んで、逃げるように後ずさった。

恋心を自覚した今の私にとって、こんな「好きバレ強制装置」を首から下げて二十四時間監視されるなど、拷問以外の何物でもない。


「逃げるな! お前の身体に異常が起きているのかもしれんのだぞ!」


「健康そのものです! 師匠の過保護が一番心臓に悪いんですってば!」


……書斎の扉の外で、お茶を運んできたメイド長のマーサが、「(公爵閣下……王都の宝石商に気を利かされて『永遠の愛を誓う蒼の宝玉』を売りつけられたことに全く気づいておられませんね)」「(しかも愛の昂ぶりに反応して光る恋人向けのロマンチックなギミックを本気で『命の危機を知らせる心拍報告』だと思い込んでいらっしゃる……過保護と天然にも程がございます)」と、もはや呆れを通り越して頭を抱えていたことなど。

発光するペンダントを握りしめ、必死に師匠から逃げ回っている私が気づけるはずもなかった。


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