九日目 人生、生きていれば何とかなるッ!
振り返るとブロック上には何もいなかった。
しかし、左側の海面を見ると、沈んでいく緑の大きな足が見えた。
俺とワカバは言葉に詰まった。
「…これが正解じゃね?」
「…そう…かもな。」
「…お前、生存してたら後から恥ずかしくなる台詞ランキングにランクインしているくらいの台詞吐いてなかった?」
ワカバはハズキを担いだまま、無言で俺の前を通り過ぎて行った。
俺がクスクスと笑っていると、ワカバは睨みながら後ろを振り返る。
「あー後ろ振り返っちゃいーけないんだいけないんだ!先生に言ってやろ!」
「どこに先生がいるんだっ!答えてみろっ!そのふざけた顎を叩き切ってやる!」
ザバァァァーンッ!
すぐ後方、俺達は下を見た。海面からブロックに捕まるように二本の太い緑の腕が伸びていた。そして、すぐそこには、緑顔の大きなお顔が一つこちらを見つめていた。
「「せんせえぇいいいぃぃぃぃぃぃぃっ!!??」」
髪の毛なのか髭なのか分からないほど、周囲を毛で囲っている。例えると難しいが、見ていられないほどにとてつもなく恐ろしい顔をしていた。
俺とワカバは全速力で逃げた。
先程までワカバにお姫様抱っこで抱えられていたハズキも今じゃ右手のみで引っ張られている。そして、全速力で逃げている為、先程から海面にバシャーンッ!バシャーンッ!と打ち付けられている。それはまるでイルカのようであった。
「おいおいおいっ!ハズキ、鼻血出とるって!」
「今はそれどころじゃねぇだろ!大丈夫だ、毎回水で洗い流してる!」
「違う違う違うッ!傷口に塩ッ!海水だからッ!」
ワカバは、「じゃあこうか?」と持ち手を回転させた。すると、ハズキは背面で海面ジャンプを始めた。
「それ起きたら背中痛いやつぅッ!」
そんなこんなで、俺達はブロックの終着点へと差し掛かった。
「おいっ!あの島に降りるぞっ!」
ワカバの言葉に反応しようとするも、ブロックが宙を浮き始めている事に気が付いた。
「ちょ、ちょっと!浮いてるんだけど!てか緑の鬼しつけぇよっ!いつまで付いて来んだ!」
俺達は浮いたブロックを走り続け、緑の鬼よりも先に島へと上陸した。すると、ブロックはガタガタと揺れ始め、空中から落下し始めた。その流れで緑の鬼も落下していった。
俺達はゆっくりと息を整えながら、改めて宙に浮くこの島を見上げた。そして、砂浜より下をみると、とてもじゃないが降りれる高さではなかった。例えるなら、俺の事務所のビルほどの高さが近いだろうか。
「海が無い代わりに宙に浮いているって感じか?」
覗き込む俺の隣でワカバは遠くを見ながら言った。
「…あれ?ワカバ、ハズキは?」
ワカバは「あっ」と声を出し、周囲を見渡す。明らかに忘れていた様子であたふたし始める。そして、何かを思い出したかの様子で再び「あっ」と声を出す。
「…勢いよく此処に突っ込んだ時うっかり手を放してしまったんだが。逃げてる最中、あいつ海面でジャンプしてたろ?そしたらそのまま勢いよく森の中に飛んで行った気がする。」
「なんでだあぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」
新しい島に上陸するも、ハズキ行方不明。
次回もお楽しみに!




