八日目 まだ見ぬ世界へ。
目の前の海にはゆらゆらと揺れる、幾つものブロックが繋がっている。そのブロックは、遥か海の向こうまで永遠と続いていた。
その真上には、時の鐘の光線が同じ方向を指している。
「…そういえば、緑の鬼っていたか?」
俺達はこの浜辺に来る間、一通り周囲を見渡して来たが、鬼らしき存在はいなかったのだ。
「見ていないな。いないのならこのまま進むしかないだろ。」
ワカバの言葉に賛同し、俺はブロックに足を掛けた。
思ったよりも頑丈に出来ているブロック、揺れはするものの崩れる事は無いだろうと悟った。
俺に続き、ハズキを担いだままワカバも足を掛けた。
ゆっくりと前に歩み進め、俺達は光の方向へと急いだ。
歩み進めて三十分程経っただろうか。
俺たちは今、歩むのを止めた。
理由はワカバが止まれと言ったからだ。
「…ワカバ?」
「…タケル…お前と会ってまだ浅いが、楽しかったぜ。」
「…お前それフラグじゃね?死ぬ前の奴のありがちな台詞じゃね?」
「ハハッ、それを言っちまうあたりがお前らしいよ。どうも後ろから恐ろしい気配がしてな、恐らく緑の鬼だろう。暫く様子を見ていたんだが、歩みを進める度に近付いている。このまま振り向かずに行けば、どの道俺達は死ぬだろう。」
俺はワカバが何を言おうとしているのか既に察していた。この並び順でいる以上、被害にあってしまうのはワカバやハズキが最初だ。
「…何か手はないのか。」
「さぁな。立ち止まっていれば向こうも寄ってこないらしい。だが、緑の鬼は一歩が大きいようでな。もうあと十歩も進めば、奴の餌食だろう。」
「じゃ、じゃあさ、このまま三人でここに暮らそうか。海の眺めも良く、縦長のワンルームでございます。お客さん、今しかこの物件はないよぉ?デメリットとしては、緑の鬼が近くにいるので一点しか見つめる事はできません。家賃、光熱費はございません。そんな物件ですが如何でしょうか!」
大声で叫ぶと、無情にも夕暮れ空に響き渡る。しかし、周囲には俺達しかいない。上空を横切るカラスのように鳴き、それは傍から見れば気にもとめない状況だろう。
「…タケル…気持ちだけは受け取っておくよ。ハズキを頼む。」
ワカバはハズキをお姫様抱っこ状態にした。
「だぁめぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!!!!」
俺は正面を向いたまま足を後方に伸ばし、両足でワカバを捕まえた。俺の右膝がハズキの顔面にのめり込み、股間がワカバの顔面にのめり込んだ。
「な、何をするかぁッ!!!」
「や、やめろ!あんまり顔で股間を摩るな!摩ると何もかもが終わるぅ!」
俺達が暴れる度にハズキの顔面に右膝が高速で出し入れされていた。しかし、俺達はそんな事に目も向けなかった。
そして、海に浮くブロックも左右に大きく揺れ、波をうち始めた。
「おおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!!!」
俺達はこの瞬間、同時に後ろを振り返ってしまった。
次回もお楽しみに!まだまだつづくぜ!




