二十三日目 いざっ!夢の吊り橋へ!
翌日、俺達は旅を再開した。
勘助との闘いの後、直ぐにでも立とうと思ったのだが…
中濃が気を失ったままで、とてもじゃないが担ぎながら歩くのは不可能だったのだ。
目が覚めると真っ先に起きていたのは中濃であった。
「皆さん起きるの遅めですね。」
俺とハズキは、中濃をボコボコにした。
イカリは笑っていた、顔だけは。
そんな訳で俺達は力を合わせて崖を越え、吊り橋を渡り切ったのだ。
最後の吊り橋渡ると、ポツンと小さな洞窟だけがあった。
俺達は油断せず、慎重に洞窟内へと入って行った。
洞窟内は壁掛け松明のお陰で思ったよりも明るかった。ゆっくりと奥深くへと足を進めた。
「何か…静かすぎない?」
「洞窟ですからね、うるさくしなければこんなものでは無いですかね?」
そもそも洞窟へ入る事自体滅多にある事ではない。その為、この静けさが通常なのか異常なのかすら分からないのだ。
「出口だ。」
その光の向こうに広がっていたのは、何とも美しい湖だった。
「何だよここ…湖ってこんな透き通った水色だっけか?」
俺だけではない、その場にいた全員が目を見開いていた。それほどの美しさだったのだ。
「綺麗すぎて…腰抜けそう…。」
ハズキは涙目で口と鼻を両手で覆った。
「あんまり聞かないけどな、綺麗すぎて腰抜けるって。」
「そうか?俺初めてタケルにあった時腰抜けそうだったけどな。」
「それな…それなってなんだよ。何で腰抜けそうになったって言うんだよ。」
「にしても綺麗だな。」
「聞けやっ!話振っといて雑すぎんだろ!」
この湖の広がる洞窟には、何が潜んでいるのか。今はまだ分からないが、一先ず俺達は目の前の一つの吊り橋を渡らなければいけないようだ。
「まったく…何回吊り橋渡ったら良いんだか。」
「いい加減、普通の道も歩きたいわね。」
唯一俺に賛同できるのはハズキだけだ。それもそのはず、ここまでの道のりを共に経験したのだから。
イカリ、俺、ハズキ、中濃の順で吊り橋を渡っているのだが、それなりに揺れが激しい。今回の吊り橋も中々にスリリングだ。
「皆さん、ここ夢が叶う吊り橋って言うらしいですよ。」
「夢か…。」
俺にとって夢とは何なのか。
事務所を開いた事?何でも屋をやる事?
あれ?何だっけ?
「なぁイカリ、お前の夢って何?」
「小説家になって、印税で食っていきたい。」
「私は、独断流拳法を世界に広げたい!」
「私は、ドーナツ島の皆さんと仲良く過ごせる日を夢見ています。」
俺とハズキは、中濃の夢に涙した。
「頑張れよ…強く…生きるんだぞ…。」
中濃は過去一で困惑していた。
「皆、ちゃんと夢あるんだな。」
何故か俺の言葉には誰も反応しなかった。
「あの、皆さん?この流れは、俺に夢を聞くって流れだろ?何華麗にスルーしてるの?」
二度目の無視を決め込まれた所で俺達は吊り橋を渡り切った。再び登りの洞窟を進み、次第に出口へと辿り着いた。
洞窟を抜けると、そこは老い枯れた草木が並んでおり、道の悪い山道が続いていた。
「うわ、長いな。しかも一雨降りそうだな。」
「道なりに行けば、この村を支配した親玉がいるんじゃないか?」
「親玉の前に少しよろしいでしょうか?」
俺とイカリの間に知らない声が入る。俺とイカリは背後からの声に驚いた。するとそこには、スーツ姿で丸メガネを掛けている短髪のおじさんが立っていた。
「申し遅れました。私の名はウエノ、王女様の執事件仲介人をしております。皆様にはお伝えしたい事はただ一つ、ここから簡単に進ませる訳にはいきません。」
ウエノと名乗るおじさんは、俺達に向けて右手を翳した。
「ワープスワップ。」
気が付いた時、俺は見知らぬ森の中に立っていた。
「…え、イカリ?ハズキ…中濃…?」
俺達はどうやら、離れ離れになった。
ウエノという執事によって進行を妨害されたらしい。
「…マジかよ。」
次回もお楽しみに!




