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アスからマジで生きる!  作者: ゆる


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12/24

十二日目 そろそろ家に帰りたいんだが?


 「あのーすいません!そろそろ家に帰してくれませんかね!お母さんがご飯作って待っているんです!」

 俺の声は無情にも地下牢内にのみ響き渡る。その言葉に反応してくれる者は誰一人としていなかった。

 「そんな理由で誰がここから出すんだよ。」

 手足を縛られた状態でもワカバは冷静に言葉を投げ返してきた。

「なあハズキ、お前何かしたの?何で初対面の俺達が牢屋にぶち込まれなきゃいけないわけ?」

「分かんないよそんな事…私だって目が覚めたら真っ黒な男たちに囲まれてたんだから…。」

「真っ黒な男達ってなんだ?」

「え?ボディビルダー?っていうの?身体がゴツゴツしていて、色は黒というか茶色というか。オイルとか塗ってるみたいにツルツルで、腕が四本あって、触覚もあったっけ…」

ハズキは何の違和感も感じず話を続けていた。

「…ちょっと待って。ツルツルまではまだ分かる、その後なんて言った、」

「え?腕が四本あって、触覚も…」

「そこおぉぉぉッ!なんで!?なんで普通に語り続けてるの!?腕が四本で触覚あるって普通じゃねえからッ!」

ハズキは「ハッ!」と声を出し、何かを思い出したのか、顔が青ざめていた。

「そういえばそうよね…よく考えたらあの人達腕と足で六本もあったわ…もしかして…」

「どう考えても人型ゴキブリだろうよ。駄目だって、人型のゴキブリはもう有名だから。こんな作品で登場させれないから!」

「あ、それは大丈夫。めっちゃ笑顔だったから。」

「微笑み関係ねぇわッ!」

すると、ワカバが「静かに。」と間に入った。

微かに足音がこちらへと近付いて来ているのがわかった。

牢屋の前に姿を現したのは、初めて見る顔容だった。

黒髪の色黒だがパッと見は人間のようだ。王冠やマントを身に付けているところを見ると、この国の王と考えるのが無難だろうか。

「其方達に頼みがある。」

王様はその場に膝を付き、俺達へ頭を下げた。

「頼みも何も俺達は訳も分からずここへぶち込まれてるんだが?」

「手荒な真似をしてすまないと思っている。しかし、こうでもしないと其方達は逃亡してしまうと思ったのじゃ。これまで来た人達も全員この村から逃げてしまったものでな。」

「一先ず訳を聞こう。」

ワカバの言葉で王様は頭を上げ、笑顔で「ありがとう」と呟いた。そして、王冠が吹っ飛び、一本の立派な角が飛び出した。

「なんでだあぁぁぁぁぁぁぁッ!」

角は茶色で、先端は二つに分かれている。

「どう見てもカブトムシよね…。」

王様は焦ったように角を隠し、「申し訳ない」と謝っていた。

しかし、俺はその仕草が気になってしまった。

「何故隠そうとするのです?」

王様は諦めたのか、角を隠してた手を離し、こちらへと向き直した。

しかし、何故だろう。真剣なのは分かる。

だが、真顔で角の先端に王冠をプラプラさせるだけはやめて欲しい。

今すぐにでも吹き出してしまいそうだ。

こんな時に笑ったら気まづすぎて死ぬ。

というか、その角で一本取られるのではないだろうか。

王冠を取るか、真顔やめるかしてほしい。

すると、王様は王冠を取り、寂しげな表情で一点を見つめていた。

「…もう気付いてはいると思うが、この村はドーナツ村と言って、昆虫族の住む村なのじゃ。」

「まあ、見りゃあね…(笑)」

俺はププッと息が溢れながらも返答した。

しかし、ワカバに思い切り叩かれてしまった。

「人間にとって、虫は嫌がられる生き物です。そんな虫が人並みの大きさになったら、訪れる人々は逃げてしまいます。我々はただ、助けを求めたいだけなのに。」

王様は涙を流していた。

その涙は憎しみでは無い。悲しみと悔しさの涙だ。


「なるほど。それで俺達が逃げないようにこんな真似をしたって訳か。」

「本当に申し訳ないと思っている…」

「まあいいや、ここから出れるならこの村助けてやろうぜ。」

ワカバとハズキは、微笑みながら頷いた。

「てことで王様。俺達はあんたらに手を貸してやる。さぁ、何をして欲しいんだ?」

「本当か!感謝する!では…」


俺達は今、村の屋上にいる。正確には村を囲っている塀の上と言うべきだろうか。

上空を見上げると、そこには一羽の小さな鳥がぐるぐると回っていた。

「…あれだよな?」

「…あれだな。」

「…あれよね。」

王様や村人は、上空に滞在している鳥を何とかして欲しいと言うのだ。

見た限りドーナツ村の昆虫族でも対処出来そうな大きさだが…

「油断は出来ない。何せこの距離だ、近付いてきたら異常な大きさっていう可能性もある。」

ワカバの言葉も一理あるが、どう見てもそこら辺の空を飛んでいる鳥にしか見えないのだ。

「一先ず呼んでみよう」と、俺はそこら中に木の実を投げ、手笛で鳥を呼んだ。

すると鳥は、こちらへ急降下してきた。

「来るぞッ!」

ワカバの言葉で、俺とハズキも戦闘態勢に入った。


ちゅんちゅんっ♪


目の前に現れたのは、カラスサイズのすずめであった。確かに、すずめにしては異常な大きさだ。

「…まだ油断しない方がいい?」

「…いや、むしろ油断しろ。」

「…ワカバさん、油断しろって言葉は聞いた事無いですよ。」

しかし、すずめは俺達に危害を加えるどころか、何度も腕や肩に寄り添っていた。

「かぁわいいいぃぃぃッ!」

ハズキがすずめを抱き抱えた。

すずめも満更でも無い様子だ。

この後、絶対にあの台詞言うよ。だって桃色の眼がキラキラしてるもん。


「私、この子飼う!」


ほらね、言った。

「まあ、駄目な理由はないが。」

「飼う理由もない。」

俺はワカバに続き、それとなく飼う意思は無いと伝えた。

「なんで?こおぉんなに可愛いんだよ?飼うしかないでしょお!はい!きーまり!」


決まっちゃったよ。

おじさんまだ良いよなんて言ってないよ。


「…確かに可愛いな。」

おい、緑のおじさん。てめぇまでそっち側言ったら、必然的に飼う事になるだろうが。

「おじさん、飼ってもいい?」

「誰がおじさんだッ!てめぇもおじさんだろうがッ!」


そんなこんなで結局すずめは飼う事となり、俺達はドーナツ村の王や住人に感謝された。しかし、すずめを飼育する事となった為、村への出入りを禁止された。


そして、村の外で野宿をして、二日が経った。

次回もお楽しみに!

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