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この作品には 〔ガールズラブ要素〕〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

二重絵画・裏表

横たえられた白いドレスの少女は、瞑目し熱い息を吐く


粗末な山中の小屋だ

救うには手立てが少ない、総てが狙い通りだ

私は為す術もなく、汗ばんだ彼女の手を握りしめた



「逃げないのですか?」


少女が私に問う

私は「いいえ」「こうなるのを待っていたの」と答えると顔を近付けて、彼女の玻璃の様な瞳を覗き込んだ



透き通る瞳の奥に、静水に墨が染みるように戸惑いが広がっていく


ようやく気付いたというのか、勘の悪い子


そして、食べちゃいたい位に愛しい子

私だけの少女……



彼女の肌を伝う汗の量が増えていく

それは、なにも当惑だけによるものでは無かった


誰もが知る物語だ

怪物に噛まれた者は、それ自身もまた新たな怪物になるのだ



「貴女は……」


「どうして………?」


少女が泣きそうな顔で、私に答えを求める


私はゆっくりと、「こうなるように仕向けたのは」「貴女を殺すためでは無いのよ」と彼女に言い聞かせると、指で彼女の舌を引き出して、味わうように優しく歯でなぞった


その時だ

彼女の白く柔らかな肌の、その総てから血の薔薇が咲き誇った

鮮血が目醒め始めたのだ


憐れな少女は己の血を喉に詰まらせながら、苦悶に身を曲げる

窒息した細い喉の立てる華奢な音が、私の背筋を悦びと共に駆け巡った


葉脈に水が伝うように、星空が果てしなく始まっていくように

彼女のドレスは鮮血の赤に染まっていった

身に付けているものが尽く大輪の赤色になる頃に、出血は止まり少女は眼を開いた


肌を濡らしていた流血は、彼女の背へと集まり身の丈程もある翼を、頭上へと集まり絢爛なる光輪を形作った



私は呼吸さえ忘れ、かかる美の開華していく様を視た

『少女だったもの』は私を視ると、聖なる晩餐を始める為に牙を剥き嗤う


我慢の出来なくなった私は、服をはだけて己の肩口を曝け出すと「私をお選び下さい!!」と懇願した



『少女だったもの』の虚ろな視線が私を視る

小さな口が、生命を啜る為に大きく開かれる


まだ触れられてすら居ないというのに、私は断末魔ですら上げない様な声で歓喜した

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