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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

砂塵の乙女は終末世界に旅をする

〇東京・ビル街の戦場・昼

ビル街で機関銃と榴弾が炸裂する。

人類戦線の歩兵が吹き飛び死ぬ。

大型四つ足機人の放った機関銃をかいくぐり、七海が疾走する。背中に飛び乗った七海がレールガンを放ち、装甲に穴を開ける。

七海「えいや!」

七海の左手から黒い霧状のナノマシンが生まれ、開いた装甲に殺到する。

大型四つ足機人がショートし、震える。

味方陣地にジャンプして戻った七海は味方の歓声に包まれる。大型四つ足機人が爆発する。

七海「えへへ! どんなもんよ! 機人なんて怖くないんだから!」


〇同・廃墟の宿舎・夜

宿舎に戻った七海は通信機で和也と会話を交わす。


〇国際中枢コロニー・研究室・夜

和也、ガラスのそばに立ち、宇宙を見ながら七海へ通信している。

和也「少佐への昇進おめでとう。またA級を倒したんだってな。」


〇東京・廃墟の宿舎・夜

七海「あはは、おにいちゃんが作ってたナノ武装のおかげだよ。そっちのほうは?」

和也の声「いつも通り。敵だらけだ」

崩壊した未来世界の広大な砂漠。

七海N「機械化した人間達との戦争。それが何十年も続いてる」

カプセルに浮かぶ全裸の七海。

七海N「私達、人類戦線も肉体を改造して必死に戦ってるけど」

人類戦線と機人との戦い。動物や昆虫の意匠を取り入れた機人が群れをなしている。

死屍累々になりながらも人類戦線は銃を撃ち続ける。

七海N「正直、戦況は良くない。一体、いつまで戦いは続くんだろう?」

和也の声「ところでネットを見たか? 新人類がついに戦線投入されるんだってな」

七海「見た見た。遺伝子レベルで調整して、デバイスを埋め込んでるんだってね」

七海が手元のタブレットを操作する。人類戦線の報道『新人類、ついに戦場へ!』が表示される。

和也の声「噂によると相当凄いらしいけどな。数が揃えば、俺達がいらなくなるとか」

七海「それはいいねぇ。期待してる」

和也の声「俺達、お払い箱かもな」

七海「んふー、そうなったら廃墟から色々と掘る仕事するよ。絶対楽しい」

七海が写真立て(和也とのツーショット)を愛おしそうに見る。

七海「お兄ちゃんともまた一緒に暮らせるし」

和也の声「そうだな、確かに」

和也の声にノイズが入る。

和也の声「待て、これは――」

七海「どうかしたの?」

通信機の向こうから爆発音。通信が途切れる。

七海「お兄ちゃん⁉ 嘘でしょ……!」

七海の拠点にも大警報が鳴り響く。七海は通信機とタブレットを持って宿舎の外に出る。

夜空を大爆発する軌道コロニーが照らす。大量の残骸が流星となって地表に降り注ぐ。

七海N「コロニーの残骸は世界を焼いた。戦争は終わった」

東京の点景。猛吹雪が訪れ、全てが雪に埋まる。

七海N「文明は崩壊し、機人もそのほとんどが停止した。全てが荒廃し、勝者はいなかった」

雪が解け、今度は砂塵が吹き荒れる。ビル街も埋もれ、砂漠と化す。

七海N「それでも戦いは終わっていない。頑張って、生きなくちゃ」


〇旧東京・ランドクルーザーの甲板・昼

八十年後、世界の大部分が砂漠化。

灼熱の太陽が砂漠と残骸の輪と化した軌道コロニー群を照らす。

ランドクルーザーに乗っている七海。うつ伏せになって歌っている。

七海「とぅんとぅとぅーん、とぅとぅー。はぁ、この辺りにもお兄ちゃんの情報はなしかなぁ」

船体の警告音、七海が甲板の望遠鏡を覗き込む。

七海「いたいた。あいつらが賞金首と、ん?」

望遠鏡の先には荒くれ者達がいる。

その奥にはマクガレン。背後では大型掘削機が稼働して地面を掘っていた。

七海「てか、機人に襲われてるし。運がないね」


〇同・砂漠の廃墟・昼

ディアナ、マクガレンの前に倒れ伏している。マクガレンが杖を掲げる。

周囲には5人の荒くれ者が倒れている。その中で虫の息のひとりがマクガレンに手を伸ばす。

荒くれ者「掘削機が欲しいなら、あげますから! どうか、命だけは!」

マクガレン「フシュー。ビットを讃えよ!」

マクガレンが荒くれ者の胴体を杖で貫き、殺す。

荒くれ者「ぐはっ!」

マクガレン「勘違いするな、愚か者。鋼鉄、半導体、電力。それらは全て我ら機人のモノだ」

ディアナ「くっ……ミスった……」

マクガレン「盗人め。お前もビットの贄になるがいい」

マクガレンが杖でディアナをつつく。

マクガレン「さぁ、死ね!」

七海が砂丘から駆け寄りながら、超大型リボルバーを撃つ。マクガレンの頭部に弾丸が命中し、吹き飛ばす。マクガレンが立ち上がり、首を鳴らすような仕草をする。マクガレンの頭部に亀裂ができている。

マクガレン「この程度で死ぬと思ったか⁉」

叫ぶマクガレンに向かい、七海が距離を詰める。杖を高速で振り回すマクガレン。ディアナが腕からワイヤーを飛ばす。ワイヤーから電流が流れ、一瞬マクガレンの動きが止まる。

七海「そこだぁ!」

七海が左手から黒い霧状のナノマシンをマクガレンの頭部の亀裂へ放つ。ナノマシンがマクガレンの回路を焼く。

マクガレン「ぐがっ、が! ぐぅ……」

マクガレンが仰向けに倒れ、機能停止。

七海「よし、ミッション完了!」


〇同・砂漠の廃墟・昼

荒くれ者を埋葬し終わり、ディアナが砂上バイクにまたがっている。

ディアナ「噂通りの凄腕ね。感心しちゃった。で、本当に懸賞金は半々でいいの?」

七海「うん、問題なし。だってお尋ね者の賞金首を倒したのはあなたでしょ?」

ディアナが倒れたままのマクガレンを睨む。

ディアナ「まぁね。途中であの機人に襲われて、共倒れしちゃったけど」

七海「困った時は助け合い! 気にしないで!」

ディアナ「わかったわ、じゃ、お言葉に甘えるわね」

七海「えへへ。どういたしまして!」

ディアナがゴーグルをかけ、エンジンを始動させる。

ディアナ「私はもう退散するわ。機人に会いたくないから」

七海「あー、そだね。まだうろついてるのがいるかも」

ディアナ「先にスカイタワーシティに行って、換金してるわ」

七海「はーい、後で合流するよ」

ディアナがバイクで駆け出す。七海、掘削を続ける大型クレーンを見つめる。

七海「ところで君は何を掘ってるのかな?」

掘削機が電子音を鳴らし、鈍い金属音が響く。

七海「おっ、もしかして当たった?」

七海がランドクルーザーをそばによせ、一緒に埋まっていたモノを掘り出す。巨大金属箱が出てくる。

七海「んー、何だろコレ。サーバー? 見たことない」

周囲をぐるっと見て回るが、外部から開けられそうな仕組みはなかった。

七海「スイッチやパネルはなし。開け方わからん。ま、いっか。力づくで!」

七海が左手から黒い霧状のナノマシンを放出する。機器のわずかな隙間から霧が侵入し、強引に蓋を開ける。金属箱の中には制服姿のひながいた。

ひな「んっ、んんっ……」

七海「えっ……女の子⁉ 嘘でしょ……」

七海がうろたえ、ひなが目を開ける。ひなは七海を見て、一瞬で全てを理解する。

ひな「あなたが秋草七海少佐で合っていますか?」

七海「はぁっ、あっ、うん」

ひな「お初にお目にかかります。新人類、夏波ひな二等兵。ただいま覚醒しました」


〇同・ランドクルーザーの甲板・昼

甲板上のテラスで七海とひなが向き合う。ふたりはコールタールのようなコーヒーを飲んでいる。

七海「つまり、あなたが超すごい新人類ってこと?」

ひな「プロパガンダの内容はさておき、そうです」

ひながコーヒーを飲み、顔をしかめる。

ひな「しぶっ……」

七海「ご、ごめんね! この辺の豆は、その……」

ひな「わかっています。状況はだいぶ良くないようですね」

ひなが立ち上がり、甲板から砂漠と残骸化したコロニーを見つめる。

ひな「人類戦線の中枢コロニーは大破し、世界は砂漠化。しかも機人は生き残っている」

ひなが倒れたままのマクガレンを見る。

ひな「あの変な姿は何なのですか?」

七海「ほら、機人って人間の意識をそのままアップロードした存在でしょ」

七海も立ち上がり、マクガレンを見る。

七海「だから人間と変わらなくって、戦争を起こしたわけだけど……。つまり、本当に人間なんだよねぇ」

ひな「意味が分かりません」

七海「おかしくなるほど、人間ってコト」

ひな「人格回路の不具合ですか」

七海「そうそう。正気じゃないってやつ」

七海が目を細め、甲板上の道具箱に向かう。

七海「あー! やっぱダメだ。気になる!」

七海、道具箱からスコップを取り出す。

ひな「何を?」

七海が手すりを乗り越え、砂に着地する。七海、マクガレンのそばを掘り始める。

七海「ごめん! ちょっと待ってて!」

ひな「まさか弔うつもりですか」

七海「うん。変だとは思ってるんだけどさ。機人って一品モノだから」

砂を掘り続ける七海。ひなも甲板上のスコップを取り出す。ひな、手すりを華麗に飛び越えて砂に着地する。ひな、七海の穴掘りに参加する。

ひな「なら、私も手伝います」

七海「えっ?」

ひな「言語化は難しいですが、そう、理屈は分かる気がします」

七海「ありがとう。助かる」

ふたりでマクガレンを埋め、杖を墓標代わりにする。手を合わせて祈った後、ひなが七海を見上げる。

ひな「少佐、今はどうしてるのですか?」

七海「んー、お兄ちゃんを探してる。あとは賞金稼ぎ」

ひな「秋草和也大佐ですか。インストールされた情報に名前があります」

七海「あたしの肉親ってもうお兄ちゃんだけだし。他にやることもないから。政府はバラバラ、人類もめちゃくちゃだしなー」

ひな「私は……何をやるべきか分かりません。世界の変化もあまりに急です」

ひな、冷静な表情の中に困惑がある。

七海「何か命令とか、そういうのは?」

ひな「記憶の中にはありません。どうやら最低限の情報しか」

ひなが自分の額をつっつく。

ひな「インストールされていないようです」

七海「あの箱にいた経緯とかは?」

ひな「不明です。この辺りで私が誕生した可能性は低いように思います」

七海「うーん、なるほど。情報は全然なしか」

七海も真剣にひなについて悩んでいる。ひな、七海を頼るように見上げる。

ひな「少佐、しばらく一緒にいてもいいですか?」

七海がひなの手を取る。

七海「もちろんいいよ! 困った時はお互い様! 大歓迎!」

七海はそこではっとする。

七海「でもひとつだけお願い。少佐はやめて? 軍はもうないし」

ひな「分かりました。では、秋草様で」

七海「それもなんかなぁ……七海って呼んでよ。あたしもひなって呼ぶから!」

ひな、面食らった顔をするが頷く。

ひな「いいですよ。では、それで。よろしくお願いしますね、七海」

七海「こちらこそ! よろしくね、ひな!」


〇同・ランドクルーザーの甲板・昼

甲板上で七海が大型拳銃の手入れをしている。ひながテーブルに頭を乗せ、手入れを興味深そうに見ている。

七海「てんててー。ふっふふーん」

ひな「あの機人を撃ったのは、その銃ですか?」

七海「そう! 私の相棒!」

ひな「人類が扱えるサイズではありませんね」

七海「まぁね。普通の人が撃ったら、肩が壊れる」

七海が手入れを終え、銃を片付けよう とする。ひなが頭を上げる。

ひな「その銃、撃ってみてもいいですか?」

七海「およ? いいけど。銃を撃ったことは?」

ひな「ありません。知識で知ってるだけです。でも、やっておくべきかと」

七海「はぁん、そーだね。じゃあ、こっちの予備で」

七海、同型の大型拳銃を取り出す。七  海がレクチャーしながら、ひなが銃を両手で構える。テーブルの上には空き缶が並んでいる。

七海「そーそー。そんな感じ。いーねー」

ひな「本当にですか?」

七海「うん、形が大切だから。できてるよー」

ひな「弾を下さい」

七海「肩がヤバいことになるよ?」

ひな「カタログスペックでは、大丈夫です」

七海、躊躇する。ひなが強い意志で見上げる。

七海「はぁ、わかったよ。気を付けてね」

七海がテーブル上の弾薬箱から弾薬を いくつか取り、ひなに渡す。ひなはスムーズに装填する。

ひな、狙いを定めて撃つ。銃弾が空き  缶に命中する。

七海「おおっ! やるじゃん!」

ひな、次は片手で構え、並んだ空き缶  を連続で撃ち抜く。

七海「おっほー、すっごー! さすが新人類!」

ひな「足手まといにはなりませんね」

七海「そんなこと考えてたの? ひなって真面目だね」

ガタガタとランドクルーザーが揺れる。地平線から埋もれたスカイツリー。スクラップと廃墟で作られたスカイツリーシティが見えてくる。

ひな「あれが七海の言っていた……?」

七海「そう、スカイツリーシティだよ!」


〇スカイツリーシティ・大通り・昼

スカイツリーシティの活気ある街並み。ランドクルーザーを置いた七海とひなが大通りを歩いている。

七海「人口は約十万人。関東じゃ一番かな。ああ、久し振り~」

ひな「どれくらい振りなんですか?」

大通りでは様々な露店が雑多に並んでいる。道行く人には身体の一部が機械化した者も多い。

七海「えーと、十年振りかなぁ。お兄ちゃん探しを優先してたんだよね」

アイスクリームの機械を改造した屋台がふたりに声をかける。

露天商「リンゴ、一個一ドルだよ!」

七海「ひんやりしてる?」

露天商「もちろん! キンキンだよ!」

七海「じゃあ、ふたつ貰っちゃおうかな」

露天商「あいよ!」

ふたりの手に黄色、長方形、金属棒  が刺さったこんにゃく状のリンゴのブロック。ふたり、歩き出す。ひなが声をひそめる。

ひな「これがリンゴですか?」

七海「今の時代わね。栄養もリンゴ」

ひな「味は?」

七海「もう覚えてないなぁ」

七海が食べ始め、笑みを浮かべる。

七海「くぅー、おいしっ!」

ひな「はむ……。お、おおう」

ひな、顔を綻ばせる。

七海「どう? イけるっしょ!」

ひな「んくっ、おいしいです。でも」

七海「でも?」

ひな「これは、梨です」


〇同・保安官本部・昼

拠点内、大勢の人間がいる。七海、先着していたディアナから金を受け取る。

ディアナ「はい、あなたの取り分ね」

七海「おー、ありがと!」

ディアナがひなをしげしげと見つめる。

ディアナ「あれ? あなたは……?」

七海が慌てて前に出て嘘の説明をする。

七海「ちょっと遠くから来た、私の仲間! さっき合流したの!」

ひな「ひなです。どうぞよろしく」

ディアナ「保安官のディアナよ。七海の仲間なら、腕は確かそうね」

七海「もちろん! びっくりするくらいなんだから!」

ひなの近く、目の高さにペルシャ猫が いる。ひな、目を輝かせて手を伸ばす。

ひな「おお、これはもしや猫ちゃん……」

ディアナ「ん、その子は人に懐かないわよ」

猫、ひなに抱っこされにいく。

ひな「へ?」

ディアナ「猫に愛されてるのね」

ひな「みたいですね。ふわふわ」

そこに鉄二が現れる。

鉄二「七海。帰ってきていたのか」

七海「うん。北のほうは空振りだったから」

鉄二「そうか。残念だったな」

七海「また海外に行かないとダメかもね」

七海、やや暗い顔をする。ひな、ディ  アナに話しかける。

ひな「あの方は?」

ディアナ「ここのマスターよ。シティの英雄」

鉄二「なんにせよ、七海が帰ってきたのは心強い」

七海「なぁに? なんか厄介事でもある感じ?」

鉄二「聞いたが、マクガレンを倒してくれたそうだな」

七海「まぁまぁ高レベルの機人だったね」

鉄二「あいつには仲間がいる。さっき偵察隊が見つけた」

鉄二が腕のデバイスを操作すると動画 のホログラムが表示される。

動画の中で小さな機人達とマント姿のルーガが廃墟を改造している。

ひな「拠点を築いているんですか?」

鉄二「鋭いな。だから、腕利きの力を借りたい」

七海「オッケー。じゃあ、早速作戦会議ね!」


〇旧東京・ランドクルーザーの甲板・夜

賞金稼ぎ達のランドクルーザーが列をなして進む。

七海、自分のランドクルーザーの甲板上に毛布を引いて寝ている。ひな、手すりのそばに立つ。

七海「ふー、明日は頑張らないと」

ひな「頼りにされていますね」

七海「こんな世界だからさ」

ひな、七海のそばに座る。

ひな「お兄さんをずっと探しているんですね」

七海「言いたいことはわかるよ」

七海が寂しそうな目で残骸化したコロニー群を見上げる。

七海「生存確率は計算できる。無駄だと思う?」

ひな「そんなことはありません。七海の行為が無駄なら」

ひなが七海に並んで夜空を見上げる。

ひな「人工知能を排して、生身のまま超人になる。その理念で生まれた私も、遅すぎました」

七海「そんなことないよ」

ひな「私は私の価値を証明します」

七海「本当に真面目だねぇ」

ふたりの間に沈黙。ランドクルーザーの賭ける音だけが響く。

ひながもぞもぞと七海の毛布に入って くる。

七海「およ?」

ひな「なたの隣で星を見ながら、寝ます」

七海「ん、いいよ。歯ぎしりしたらごめんね」

ひな「私もいびきをかいたらごめんなさい」

ふたり、並んで寝る。ひなが眠って目  を開けると七海が抱きついていた。

七海「お兄ちゃん……」

七海が目に涙を浮かべている。ひな、困惑しながらも温かく七海を抱き寄せる。


〇旧東京・機人の拠点・昼

賞金稼ぎのランドクルーザーが集結。甲板からひなが望遠鏡で機人の拠点を観察している。七海と鉄二は無線機で会話。

鉄二の声「どうだ? 様子は」

七海「正面からはキツそうだね。まぁ、ちょっと待って」

七海、通信を終える。

七海「ひなちゃん、どこを攻める?」

ひな「敵機人の要塞作りは素人です。弱点数か所を集中砲火すれば、一気に攻略できます」

ひな、数か所を指差す。

ひな「あそことあそこ、それに多分向こうが弾薬庫です」

ひな、望遠鏡から離れて七海を不安そうに見上げる。

ひな「私の観察で砲撃地点を決めるんですか」

七海「んー、私の結論も同じだよ」

七海がひなの肩をぽんと叩く。

七海「大丈夫だって! 私に任せて!」

賞金稼ぎ達のランドクルーザーから砲撃が始める。ひなの指した各地点が大爆発を起こす。

ルーガが攻撃に狼狽する。

ルーガ「なんだ⁉ 襲撃か⁉」

数か所への砲撃で拠点が崩壊する。

ルーガ「うぉぉーっ!」

他の機人は押し潰され、破壊される。ルーガは無傷で廃墟をかき分け、立ち上がる。

ルーガ「人間どもめ、遠くからこそこそと!」

七海「もうそばにいるよ!」

ランドクルーザーの砲撃はひなに任せ、七海は突撃していた。七海がルーガの顔を至近距離から拳銃で撃つ。ルーガの額が傷つく。七海が左手から黒い霧状のナノマシンを展開する。ナノマシンがルーガを襲う。ルーガ、両腕をスパークさせる。

ルーガ「ゼウスの末裔、ルーガを舐めるな!」

七海「電撃⁉ まっず……!」

ルーガ、ナノマシンをショートさせて防ぐ。ひな、昨日使った大型拳銃を甲板上で構える。

ひな「右からの風、プラス二度」

ひな、拳銃を連続で撃ってルーガの頭部に命中させる。

ルーガ「ぐっ! がっ!」

七海から預かった予備銃弾を装填し、さらにひなが射撃。ルーガの電撃が止まる。

七海「ナーイス!」

ナノマシンがルーガを捕らえ、回路を焼いて破壊する。

ルーガ「ぐぉ……ビットに栄光あれ……」

ルーガが倒れ、戦闘が終わる、賞金稼ぎ達が歓声を上げる。七海がひなへサムズアップする

鉄二達が銃を携え、突撃してくる。

鉄二「よし! 残った機人を掃討しろ!」

賞金稼ぎ達が鬨の声を上げる。

ひな、安堵の息を漏らす。


〇ナゴヤシティ・昼

人類の立て籠もったナゴヤシティが機人に攻められ炎上している。機人化した和也(黒のボディとマント)が機人を率いながら、その様子を眺める。

太平洋上に築かれた機人要塞に鎮座するビットが和也に通信を送る。

ビットの声「新人類が活動を開始したようです」

和也「我が主君よ、ついに?」

ビットの声「運命の子が目覚めました。二百年を超える戦争が動きます」

和也の目の前でナゴヤシティで爆発が起きる。

ビットの声「新人類を捕らえ、生きたまま連れてきなさい」

和也「ナゴヤシティの人間はいかがいたしますか?」

ビットの声「彼らは機人にふさわしくない肉塊です。全て処分しなさい」

和也「仰せのままに」

通信が終わり、和也が炎上するナゴヤ シティへ悠然と進む。


〇スカイツリーシティ・保安官本部・夕

勝利の宴が開催中。ディアナがテーブル上でジョッキを持ってダンス。

ディアナ「どんどん飲んでー、歌って踊ってまた飲んで!」

鉄二は手製のバイオリンを弾いている。

宴会の一角では七海がホログラムで過去の出来事を大仰に話していた。

ホログラム、爆発四散する軌道コロニーを映す。

ひな、離れた席で七海の話を悲しそうに聞く。

七海「そこでなんと! コロニーが謎の大爆発をしちゃったんだよねー!」

ホログラム、リング状になった残骸。次に雪に埋もれた世界を映す。

七海「んで! 残骸のせいで気温が下がって、雪に覆われて」

ホログラム、砂漠化した東京を映す。

七海「気候もめちゃくちゃになって、砂漠化しちゃったみたい!」

観衆、一様に頷く。ホログラム、和也の顔を映す。

七海「そして! もしこの人、秋草和也の情報が手に入ったら教えてね! 私のお兄ちゃんなので!」

七海、直角に頭を下げる。

七海「ご清聴、ありがとうございました!」

観衆、拍手。七海、照れながら壇上から降りる。ひなも軽く拍手する。七海、ひなの席に向かう。

ひな「興味深いスピーチでした」

七海「あはは、だいぶ省略してるけどね」

ふたりの目の前には金属椀に入ったペースト状の食事が並ぶ。七海、食べ始めるがひなの手が進んでいないことに気付く。

七海「もしかして口に合わない?」

ひな「いえ、そうではなく」

ひなが苦しそうに顔を伏せる。

ひな「七海はとてもポジティブです」

七海「前向き元気が信条だからね」

ひな「私は、知っています」

七海「はむっ、何を?」

ひな「あなたの両親が機人との戦争で死んだこと。悲惨な戦争にあって、どれほどの英雄であったか」

七海が朗らかにひなを見る。

七海「あー、軍のCMが頭の中に入ってる? あはは」

七海、椅子をひなのほうに寄せる。

ひな「ごめんなさい」

七海「気にしないで」

七海、ひなの頭を撫でる。

七海「長く生きていれば、色々あるもんだからさ」

ひな「違います」

ひなが涙ぐみながら頭を振る。ひなは七海の隠された本質を超人的な観察力で見抜いていた。

ひな「本当のあなたは、臆病で、過去のことばかり考える人です」

七海「あー……」

ひな「私の観察力がそう言っているんです。私が新人類だからでしょうか」

七海「ひな、鋭いんだね。ありがとう」

ひな、はっとして顔を上げる。

七海「外、行こっか」


〇スカイツリーシティ・夕

夕陽に照らされる街。人のいない屋上で七海とひなが風に当たる。ふたりの手にはコーヒーが入ったコップ。

ひな「ごめんなさい」

七海「いいってー。昔からの癖なんだよね。強がるの」

七海が髪をかき上げる。

ひな「周りのためですか」

七海「私、年を取らなくてさ」

七海、ちびりとコーヒーを飲む。

七海「鉄二さんも白髪がすごく増えて。私が頑張らなくちゃーって思うんだよね」

ひな「辛くはありませんか?」

七海「そんなことはないけど。ひなと話して、気は楽になったかも」

屋上にペルシャ猫が昇ってきて、ひなに擦り寄る。

ひな「これから……」

七海「うん?」

ひな「何かあったら、私に言ってください。力になりますから」

七海「優しいんだね。うん、ありがと」

七海がひなのそばに立つ。七海は感傷的な顔。

七海「頼りにする」

ひな「はい。いつでも」

ひながコーヒーカップを両手に持ち、飲み始める。ひな、顔をしかめる。

ひな「渋い……」

七海「シロップ、入ってると思うけど」

ひな、バツが悪そうにする。

ひな「どうやら渋みや苦みには弱いようです」

七海「あはは、新人類にも弱点があるんだね」

七海がぐっとコーヒーを飲む。

七海「ひとつひとつ慣れて行けばいいよ」

ひな「そうします、七海」

屋上の扉から慌てた鉄二が現れる。七海、いつも通りの表情に戻る。

七海「お、また何か起きたかな?」

ひな「行きましょう」

七海「だね! よっし、何でも来い!」

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