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行列

作者: 葉沢敬一

https://tinyurl.com/2rcm9s2k

に収録。Kindle Unlimitedで発売

 「戦中」と言っても、若い人の中には日本が中国とロシアに勝ち、アメリカと戦争していた時代があったとは知らない人がいるらしいので、念のために書いて置くがまあそういう時代。戦勝の報告が大本営からあると、日本各地で喜びの提灯行列があったらしい。何が楽しいかというと、たぶん、一体感を得て歓喜していたと思う。

 人間、行列すると気分が高まるようで、オリンピックの行進とか、軍事パレードとか、大名行列とか結構昔からやられている。慢性アルコール中毒の幻覚で机の上に大名行列が見えると言うのも人間のメジャーな一体感を得る想像なのかもしれない。

 この前、一部の地方で行列を見ると死ぬとの言い伝えが残っていることを知った。どんな行列かは知らない。百鬼夜行のような物だったのか、狐の嫁入りみたいな物だったのか。何も書いてない。ただ行列、とだけ。

 私の見た行列は外国での話。観光客で町を歩いていた私はその行列に出会った。プラカードを掲げ、若者達がシュプレヒコールを上げる。デモか。政情不安の国。私は嫌な予感がしたので、手近なカフェに入ろうとしたが、出て行けと言われて店が閉まっていく。

 来た道を振り返ると、フルフェイスのヘルメットに防具の完全装備の警官隊が手に銃を構えて待っていた。

 待ってくれ。俺はどっちの立場でもない。ただの観光客だ。

 すぐに火炎瓶と催涙弾のやりとりが始まって、私は手近な地下鉄に降りて逃げ出した。背後で、地響きと共に爆発音が聞こえてくる。まさか戦車を投入しているのか?

 ホテルまで逃げ帰って、フロントに話を聞くと、革命が始まったと高揚した面持ちで叫んでいた。私はただ観光客で戦場カメラマンではない。大使館のHPを見ると危険度中。渡航に注意とあった。事前に確認してなかった自分も悪いが、大使館もちょっと把握しきれてなかったらしかった。

 翌日の便でその国を離れたが、後日、政府軍が毒ガスを使ってデモ隊を鎮圧したと聞きゾッとした。下手にあの場に止まっていたら私も死んでいたところだ。

 日本国内の物事の抗議活動をしている人が、外国で行われていることに沈黙を守っていて、自分は安全なところで声を上げている。誰もが自分の命は惜しいのだ。

 行列を見ると死ぬというのは嘘。行列に参加しているのは半分死んでる者たちなので、巻き込まれると死ぬかもしれないというのが本当。本来、それくらいの覚悟を持って参加すべきだという話だ。

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