「鏡の向こうの小さな人魚姫」
小さな水槽
小さな私のアクアリウム
鏡の向こうは海の世界
クラゲがゆらゆら泳いで触手をのばしてあいさつ
小さな人魚姫に向かってあいさつ
小さな人魚姫もあいさつを返す
煌めく鱗に
輝く金色の髪
その毛先には真珠の粒が飾られている
泳いでいく 小さな人魚姫
海のみんなの小さな癒しのお姫様
海藻が纏わりついて
ちょっとした悪戯をしかけても
朗らかな小さな人魚姫は笑って許してしまう
クジラがある日
小さな人魚姫に話しかける
「鏡の向こうのキミはどんな女の子なの?」と
鏡の向こうでは
私は普通の女の子
カラスの濡れ羽色の髪の毛を一つに結び
眼鏡をかけた
滅多に笑いもしない
真面目な真面目な女の子
だから小さな水槽を鏡の横に置いて
夢想するの
この中では私は小さな人魚姫なの
みんなの人気者の笑顔の素敵な
小さな人魚姫なの
クジラは言った
「鏡の向こうの女の子のキミも、充分素敵な女子だけれど」と
女の子は寂し気に微笑んで
アクアリウムを後にする
現実に戻る為
クジラはひらりと身を翻し
「さよなら小さな人魚姫」
と呟いた……
お読み下さり本当にありがとうございました……。