第65話:道化夢想
また、更新が遅くなりました。すみません。
「嫌・・・アデル・・・やめて・・!」
タウが右腕があった所を押えながら恐怖に染まりきった表情で後ずさる。俺はそれを冷めた目で見下しながら一歩ずつ近づいていく。今頭の中は、タウを殺すことだけしかなかった。麻耶が死んだのにこんなヤツが生きている理由がまったく分からなかった。それに俺の目の前にいることもだった。
「ねぇ、どうしてこんなことするの?やっぱり怒ってるの?そうなんでしょ?」
矢継ぎ早に聞いてくるタウ。しかし、今の俺にはタウの質問に答えるような口はない。ふと、気づくといつの間にかタウのすぐ近くまで来ていた。先ほどの質問の答えを待っている目。俺はそれを見つめながらタウの胸を蹴り上げて体を浮かせる。すかさず、タウの両肩を掴んで腹に膝蹴りをぶち込む。
「かはっ!!・・・・・あっ」
一瞬手を離してすかさず右手で握りつぶすかのようにタウの頭を掴む。そして、宙に軽くほおってそのまま右手のひらから濁流のように勢いのある魔力を放つ。
「終わりだ・・・・」
ビームとも呼ぶべき魔力にタウの姿が飲み込まれ、あとには塵一つ残らなかった。しばらくして、ゆっくりと右手を下ろした。その瞬間頬を何か熱いものが流れ落ちていった。頭の中では、麻耶の事でいっぱいだった。なぜ、麻耶が死ななければならなかったのか。なぜ、麻耶の気持ちに気づけなかったのか。後悔の気持ちばかりが溢れてくる。俺は一度息を吐き出して、香奈たちがいる方に歩き始めた。その瞬間、
「--------本当に終わったと思った?アデル」
「っ!?!?」
突然俺の周りに無数の亀裂がほとばしり、ガラスが砕けるような音と共に砕け散った。そして、俺の目の前に現れたのは、さっき俺が殺したはずのタウの姿があった。「なぜ?」、そんな言葉もでてこないほど唖然としてしまった。そんな俺の様子がおかしかったのだろう、タウがケラケラと笑う。
「そんなに驚いてどうしたの?」
「タウ・・おまえ・・なぜ・・?」
「どうして生きているかって?面白いことを言うね、アデル。そんなの決まってるじゃん。元々、死んでいないからだよ」
死んでいない?あの魔力に飲まれて?ありえない。じゃぁ、どうやって?頭で必死に考える中ふと気づいた。タウの体に俺がつけたはずの傷がまったっくなかった。考えれば考えるほど、判らなくなった。しばらくして、タウが答えを言い出した。
「あはは、アデルゥ。夢でも見たんじゃない?」
「ゆ・・め?・・・まさか」
「そう、アデルは私の道化夢想によって今自分が一番したいことを見ていたんだよ」
俺が一番したいこと、それはタウを殺したかった。だから、その夢を見たということなのか?だとして、いつそんな魔法をかけられた?この俺が気づかないなんて。俺はタウのことを正面から見る。タウは俺の言いたいことが判っているのか、ニヤニヤしながら
「さぁ、いつでしょう~?」
俺は密かに歯噛みした。くそっ、麻耶の敵を討てたと思っていたのにこのざまとは、麻耶に申し訳がたたない。-------こうなったら、今のこれも例え夢だろうといつか現実になるまでタウを殺し続けるしかない。そんな俺の思いを知ってか知らずか、タウがこういった。
「一応言っておくけど、今は夢じゃないよ?」
そうか、嘘かもしれないが本当なら好都合だ。俺が攻撃を仕掛けようと構えようとした途中にタウが眉を吊り上げ、怒った風にこう言う。
「・・・夢とはいえ私のことをあそこまでするなんて、例えアデルでもお仕置きが必要だよね?」